【旅と美術館】北海道卒業旅行の思い出
参加させて頂いているメンバーシップ「オトナの美術研究会」で先月から始まった「月イチお題note」。3月のお題は「旅と美術館」なんですが…
生来出不精で、猫を飼いだしてからは、近場の日帰りがほとんど。
そんな私の数少ない遠出の旅、北海道卒業旅行での神田日勝記念美術館の思い出を書きたいと思います。
そうだ、卒業旅行に行こう
2019年6月、私は初めて北海道の地に降り立った。場所はとかち帯広空港。前年秋に通信制芸大同期卒業した横浜の学友さんと卒業旅行に出掛けた。
きっかけは同期卒業した有志12人で作った卒業研究集だったが、これに参加された帯広の学友さんのお宅に、当時在校生だった札幌の学友さんと3人で2日間泊めて頂いた。
北海道組の方達とは初対面なのに、在学中の学内SNSのおかげで、あっという間に昔からの友達のようになれた。
あちこち連れて行ってもらい、美味しいものをたくさん食べた3日間だった。
朝ドラ「なつぞら」で盛り上がる神田日勝記念美術館へ
で、元芸大生としては美術館は外せない。2日目に神田日勝記念美術館を訪問した。
何しろ2019年の十勝・帯広地方は、NHKの朝ドラ『なつぞら』で盛り上がっていた。私以外のお三人は毎日しっかり視聴されていたが、私はほぼ見ていなかったので、完全に蚊帳の外で聞き役に回っていた。ドラマには神田日勝氏をモデルにした「天陽君」も出てきて、注目されていたらしいが、当時の私は「北海道の農民画家」くらいの知識しか持っていない、しょうもないヤツだった。
館内展示室は天井が高く広々しており、1階部分に油絵の作品、2階部分は小品の風景画やスケッチ、鉛筆書きで練習を繰り返したノートが展示されていた。
平日なのにそこそこ来館者がいて、やはり朝ドラの影響は大きいなぁと感じた。
撮影不可だったので、主な作品はこちから。
油絵作品はベニヤ板に描かれているためか、大きな作品が多い。
年代順に見て行くと、初期はサビた色のゴミ箱やトタンの壁が印象的な所謂プロレタリアアートのような作品や、16歳で継いだ営農で農耕用の牛や馬の作品が多い。
全般には武骨なタッチである。
1960年代に入ると、アンフォルメル旋風の影響を受けたポップな色彩の抽象的な作品が多くなり、北海道在住であっても中央画壇を意識した作品作りをしていたと感じた。
そして絶筆となった代表作『馬』はことの方印象深い。
ベニヤ板に馬の頭・前足と半身が、何層も分厚く絵の具を塗り重ね描かれている。お尻から後ろ足の部分は、輪郭を鉛筆であたっているだけだ。ベニヤ板には下塗りもされていない。
何故このような塗り方をしたのか、ここからこの馬をどのように描こうとしたのか、背景はどうしたかったのか、などなど次々疑問湧いてくる。それにこの馬の視線が気になる。目が合うと「何見てんだよ」と言われいるようだ。
農耕をしながらの作品制作は大変だったのだろうか。37歳での急逝は本当に惜しい。
作品鑑賞後ロビーに出ると、高齢の女性が座っていた。「あの方、日勝さんの奥様よ」と札幌の学友さんが言ったのを聞いてびっくりした。(彼女は奥様が書かれた本を読んでいて、お顔を覚えていた)
失礼を承知で4人でお声がけをしたところ、少しだけお話し伺えた。今回牛の絵が展示されたので、その牛の角を持って来られたとか。
それがこれ↓
一緒に写真も撮らせて頂いた。
そんなこんなで、神田日勝作品を堪能した。何より作品を鑑賞しながら、感想を話し合えたのは楽しかった。
旅を終えてしばらくしたら、思いがけずコロナ禍となってしまい、楽しみにしていた東京ステーションギャラリーの展覧会にも行けなかった。またいつの日か北海道の地で、この馬と再会したい。