遺言書保管制度のメリットって何?
前回のnoteで「実際に自分で書いた遺言書を法務局に預けてきました【遺言書保管制度スタート】(詳しくはこちら)」について書きました。
預ける方法についての記事だったので、本日は新制度が「今までと何が違うの?」「簡単に言うとメリットとデメリットって何?」という疑問に答える記事です。公正証書遺言(もうひとつの遺言書の方法)の方がより簡単で今のところおススメですが、それでも自分で全文書きたい人向けです。
1.メリットその1 検認(けんにん)不要
法務局に自筆証書遺言(全文を自分で自書した遺言書)を預けられるようになったことで、今まで最大のデメリットであった
・相続手続きの際に家庭裁判所で検認手続きをしないと先に進めない
という点が解消されました。
今までは故人の自分で書いた遺言書が見つかったとしても、それをそのまま手続きに利用することはできず、家庭裁判所で検認の申し立てをするという結構面倒な手続きが待っていました。(公正証書遺言では不要)
検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。(遺言書の検認、裁判所HPより)
上記のように検認は、遺言書あるよ!ということを相続人どうしで確かめるだけのための手続きであり、検認したからといって有効であるわけでなく、その先に進むための制度です。
2.メリットその2 指定通知人へ通知される
2つめの大きなメリットが、希望すれば死亡届が戸籍課にだされるのと連動して、指定通知人に遺言書が保管されていることが通知されるしくみです。
通知対象者は1名とされており、令和3年から運用が開始されます。今までは遺言書があったかどうかわからない、あったとしても同居の親族にもみ消されていた可能性のある遺言書が、明るみになる制度です。
遺言書を書いたけど、今は知らせたくない。遺言書の存在を知らせたい遺贈先があり、親族にもみ消されたくない人には今までなかったとても良い制度と言えます。
3.メリットその3 偽造、紛失の心配不要、形式チェックもされる
家で保管している遺言書の場合、一緒に住んでいる人が勝手に書いたんじゃないかとか、紛失してみつからない心配がありました。相続人からすると、「うちのお父さん、遺言書書いたかどうかすらわからない」という問題もありました。(公正証書遺言の場合は全国どこでも調べられます)
それが今回の保管制度によって、法務局に預けてあるかどうかを全国どこの法務局からでも調べられるようになりました。親族に知らせていない遺言でも、法務局か公証役場に問い合わせをすれば出てくるかもしれません。
また、遺言書の形式チェックもしてくれます。(形式が整っていないとそもそも遺言書として効力がない)
4.とても大事な注意ポイント
以上のように、遺言書保管制度ができたことによって、形式の不備で使えないことや、見つからないといったデメリットはなくなりました。
しかしながら、ここで十分注意していただきたいことがあります。法務局でチェックしてくれるのは、あくまで形式だけということです。
法務局では、遺言書の中身について、確認をしてくれません。
大事なことなので、もう一度言います。一番大事な内容は、確認してくれません。
形式が整っていることと、遺言書の内容がきちんとしていることは全く違います。
遺言書保管制度ができたことで、自筆証書遺言が検認不要になり、死亡通知と連動するということにより、今までもみ消されていたり、見つからなかったり、検認の手続きが面倒なのでという理由で使われなかった遺言書がたくさん世の中にでてくる可能性があります。それらがすべて、内容がきちんと検討されている遺言書とは限りません。
その結果、財産が漏れてしまい、話し合いが結局必要になる。相続税が余分にかかる。遺留分(いりゅうぶん、最低限の権利)という制度を考慮しないでもめごとになる、ということもありえます。
それでも、相続手続きの観点から、遺言書はないよりはあったほうが良いということも、事実です。
だから、遺言書はぜひ作ってください。
一生に一度の大事な財産承継です。人生の集大成とも言えます。
でも、残念ながら世の中には「残念な遺言書」が結構あり、私もたくさん見てきました。
ぜひ専門家にも相談するか、書いた内容を見てもらうことを、強くお勧めします。せっかく、せっかく想いを込めて書いたのに、意図していない結果になったり、相続争いになってほしくないからです。
想いと財産を託す大事な作業を、そしてその中であふれる感情を大切にしてください。頑張ってきた財産、守ってきた財産を、自分のため、残された家族のために最大限考えてください。
その時間は必ず、自分や未来の誰かのためになります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?