勝手にオマージュ Vol.1!会田誠さんに届け!あぜ道 NO5
夏休み前の教室はひどく蒸し、扇風機はただ室内の暑い空気をこねくり回すのみの役立たず。
むしろみなこがスカートの下からあぶない刑事の下敷きを使ってぺこぺこと仰ぐ風のほうがずっと風らしく、つまりそれはみなこの風。
そんな中すでに勉強を諦めたツッパリ気分の男子生徒が、酸いも甘いも噛みわけたる顔つきで教室を歩き回り、
その目に映るは瀬戸内の海を通り越し、盗んだバイクで爆走する憧れの湘南の海岸線。
ところで湘南ってどこだっけという軽い疑問を投げ捨て彼の口を衝いて出てきた言葉は「柿くへば、鐘が鳴るなり、法隆寺」
いつのまにやら授業は英語から国語に変わり、町の名物、俳句会。
徘徊をはじめたみなこの祖母が、西瓜に塩をたっぷり振りかけうまそうに食べているうちに、夏は終わり、夏休みは終わり、
それは夏の終わりの至福の時のはじまりで、
コンパスを握り締め円を描くこともなしに、
髪を耳の上で二つ結びにした香の髪の分け目を舐めるように見つめているのはみなこであり、
夏空のもと外を元気に走り回っていたわけでもないのに、
こんがりと色づいた香の分け目の皮膚は、はしゃぎ、
そろそろむき頃を迎えていて、
髪ゴムについた赤いいちごが「はよう食べて~」と舌足らずな甘え声を出している。
それでもみなこは唾をごくりと飲み込み、誘惑を断ちもう一日だけ皮膚を乾かしたほうがよいと判断した。
写真:海岸線 やっぱりヘソに気を付けて!
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