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ヌカヅケ小説            ヌカヅケのヒッ! NO.14

物心ついた時からわたしはヌカヅケを使っていたので、それ以外のもので買い物することを、うまく想像することができなかったが、ヌカヅケに至るまでの経緯は、祖父から何度も聞かされていた。


お金というものを崇めていた時代、世界中に謎の病気が大流行して大勢の人が死んだ。後にお金が病原菌を媒介させていたとわかると、人々はお金を放棄し、替わりに仮想空間を漂う見えない『幽霊』を使い出した。

けれどこれはすぐに廃れた。

見えないものだとダメなのだ。

人々はギンコウ員が札束を扇のように広げる情景や小銭の重み、チャリーンという涼しい音色を懐かしんだ。

やがて『幽霊』は五感を刺激するものへと替わり、それは国ごとに異なった。

発酵文化のこの国では、どうせ菌が付くのなら最初から良い菌を付けて流通させようという案が通り、ヌカヅケに決まった。

ついでに国民がタンス預金をしないよう発酵の進み具合によって消費期限を設けたのだった。


写真 : お金の扇

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