話し言葉に気を配るだけで文章は上達する/作家の僕がやっている文章術038
文章表現に精通するためには、ふだんの話し言葉(日常会話)にも、気を配って発言したいものです。
書き言葉は、ふだんの話し言葉を源泉として筆致されます。
話し言葉が、雑で荒っぽい人は、文章を書く際にも、おおざっぱで雑な表現しかできません。
「うわー、この豆腐。まじ、やべー。食ってみりゃわかるって」
と発言している人には、
「この豆腐は大豆の香りがまず鼻に抜け、それからみずみずしい甘さとほんのりとした苦みが舌から、喉へと抜けていく。新鮮で、なお手作りならではの醍醐味である」
という文章表現は、まず書けないだろうと思います。
文語(書き言葉)を意識して話す必要まではありません。
口語(話し言葉)で構わないのです。
指示代名詞を会話から除く
まずは、指示代名詞をなるべく使わない会話を心がけるところから始めます。
「アソコへ行って、ほら、いつものアレ買ってきて。ソレ、お金だから」
日常会話は、それで伝わるでしょうが、アレという物品は具体的には何でしょうか。
アソコとは、どこのことでしょうか。ソレとはどこに置いてあるのでしょうか。
親しい間柄でなら伝わります。そこには共通の概念があるからです。
文章は個人あての手紙を除き、見ず知らずの人に概念を伝える手段です。
見ず知らずの人と共用できるものが言葉であるわけです。
言葉には意味と概念が含まれます。
普段の会話から、言葉を丁寧に使うように心がけると、いざ文章を書くときに意味として適切で、概念を読者と共有できるようになります。
書かずにして書き言葉を上達させる
具体例を挙げましょう。
「この方法をとって、目標を遂げよう」
「この手段を使って、目的を果たそう」
どちらも似たような概念を伝えています。
方法と手段は、日常会話ではどちらも同じだという観念で使ってしまいます。
目的と目標も、同様でしょう。
方法 → 道に従うを意味する。
手段 → ある事を実現させるためにとる方法
目的 → 到達しようとして目指す事柄。めあて。
目標 → そこに行き着くように、またそこから外れないように目印とするもの。
辞典をひもとくと、わずかながら意味と概念には異なる点があるのです。
他にも、
「この手立てを用いて、願いを叶えよう」
「この手法を駆使して、めざすところを実現しよう」
と会話したとしたら、それもまたニュアンスは微妙に異なってくるでしょう。
会話をするときに、自分の伝えたい概念により近い、より的確(適切)な言葉はどれか。
注意を払って発言するだけで、書き言葉は、書かずして上達します。
まとめ
日常会話を大切にする
言葉は見ず知らずの人に伝えるもの
まずは指示代名詞を使わないようにする
会話で使う言葉は、書き言葉に反映される
何通りもの言い方のなかから的確なものを選ぶ