デザイントレーナーが最初に教えるのは「文章の読み方」
タイトルにあるとおり、まず最初に行うことは文章の読み方です。
ソフトウェア開発を長く経験している方からは信じられない事かもしれませんが、多くの人は「ドキュメントを読む」という事ができません。
わたし自身ある程度のキャリアをつんでからも「ドキュメント読まずとも本やブログを読んだりすれば良い」と考えていました。
今ではドキュメントを読むのが一番早いと理解していますが、当時は「難しい日本語」「頻出する専門用語」「厳格さを感じる背景色」などに忌避感があったのを良く覚えています。
私の行うデザイントレーニングでは、最初に検索の仕方とヘルプの読み方、情報のキャッチアップの仕方と質問の仕方を組み込んでいます。
トレーニング完了後にひとりで問題解決していかねばらない事を見据えているのもありますが、「読めば解決できる」という体験をしてもらう事で、「分からない」で処理オーバーしてしまう脳の容量圧迫を軽減しています。
文章を読めない理由は「分からない」で脳が埋めつくされるから
私たちは「分からないこと」に対して耐性がついています。
分からないことに直面した場合、何が分からないのかを挙げ、ひとつひとつに対して、分かるためのアクションを連ねることができます。
しかし、「分からない」に耐性がない場合はそうではありません。
「分からない」という事が脳の大半を占め、文字通り硬直してしまいます。かろうじて、残った脳の容量で人と話すことができるくらいです。
我々トレーナーはまずその状況を解決してあげる必要があります。
分からないことを書き出してもらうことで何が分からないかを見つけるクセをつける
悩みや分からない事は、「脳に置いておくのは容量がデカすぎる」ようです。なので私たちが物事を整理し、考えるためにはそれを外に預ける必要があります。
トレーニング時はただでさえ慣れない環境ですので、さらに脳の容量が少なくなります。ですので、下記のように促し、決まった行動を行えば問題が次のステップへ以降する方法を習慣づけてもらうのです。
ネットを活用し、「とりあえず検索」の基本ムーブを習慣づけてもらう
分からないことをゆっくりでいいから書き出してみる
検索してみる
検索結果をクリックして読んでみる
この一連の流れを、まずはトレーナーが行い、ヘルプページやドキュメントを参照し、書いてあることを読み上げてみます。
トレーニーから質問があがったときも、一度検索をしてもらうという促しを行います。
「Photoshopのマスクを消したいのですが、どうすれば良いですか?」という質問を貰った場合も、それを検索クエリに変換し、検索結果からヘルプページへ遷移してもらい、該当する場所を探してもらうのです。
調べるのが苦手な方にとってはヘルプページはブログと異なり、慣れない見た目をしています。
トレーナーがついていれば、時間がかかりそうなところや、自分が間違えたときにはフォローしてもらえるので、不安を軽減しながらヘルプページに慣れていけるようになります。
ドキュメントについても同様です。日本語であればまだいいですが、英語の場合は翻訳する手段をいくつか用意し、それのインストールを手伝うことも必要です。
ネットという知の高速道路の先で陥いるキャズム
デザイントレーニングのはずなのに、ここまででやっている事はインターネットの使い方でしかありません。
ネットさえ活用できれば私のような仕事は誰にでも出来ることだとも、常々思います。しかし実際にそこにはひとつの壁があり、そこがキャズムになっているとも思うのです。
ネットで得た知識を実践し、バッドプラクティスを蓄積してからが本番
ネットで調べれば分かることを実践し、血肉にし、ときには判断を間違えて「次はこうしよう」とまで進められる人は実はとても少ないです。
デザインやソフトウェア開発は今やたくさんの事実がドキュメントとしてまとめられ、目を通せば自身の制作物のクオリティを挙げられるような資料がたくさんあります。
しかし、それらを見つけられる人自体も少なく、また読んでいる人もとても少ないのが現実です。
わたしのデザイントレーニングでは暗黙知とされているさまざま前提を目安にできる数値や手続きに落し込んで伝えるようにし、また良い情報はどこにどのように落ちているのかを伝えるようにしています。
それらが出来るようになると、自主学習自体の質があがり効率的に学べるようになります。そもそも、それらをうまくサイクル化し、イテレーションできるようになればデザインから覚えなくても良いのです。
デザイナーが最初に学ぶのは「デザイン」じゃなくても良くね?
デザイナーを志す最初の一歩は「手に職をつけたい」、また「自宅で仕事など、自主性を重んじて仕事できる環境を目指したい」という動機の方がいらっしゃいます。
そういった方に自主学習のプロセスを伝えると、問題解決のプロセスや構造が見えたことにより、実現できるアレコレに視野が広がり、デザインじゃなくても良かった。まず覚えるべきは別のことにあった。と気付かれるケースもあります。
ソフトウェアをうまく使って表現する方法も重要ですが、実はこちらの方を求めているけれど、どこで学べがいいのか分からずスクールに行きついている方も多くいるのが私の所感です。
なので、もし何かを学びたい、変わりたいと思ったら、それらを書き出してみると良いでしょう。ひとつひとつ検索し、また詳しい友人がいれば聞いてしまうのも「知の高速道路」です。