デザインファイルが守るべき機密事項とは
2011年頃、あるプロジェクトでアタックを受けているとのことで、エンジニアさんが対応していました。その時、私は彼に「デザインデータでも何か対策した方がいいか」と聞きました。
「デザインデータはとくに機密事項としてはインパクトないので大丈夫です(意訳)」というような事を聞いた覚えがあります。
2021年現在のデザインリソースにも未だ機密事項がないのであろうか
あれから10年が経ち、あらためてデザインデータに機密事項がないのかを考えはじめました。UXDがどのプロジェクトでも実践されるようになり、特に目新しい考えでもなくなった今、デザインデータに変化があり機密事項と言えるものが含まれるようになったのではないでしょうか。公開前の新機能におけるUIフローなどは機密事項と言えるものかもしれません。
機密事項とは
そもそも何を機密事項とするのかですが、組織ごとの定義によるもので一概には言えません。前提となる原理は「情報を開示することで会社にマイナスの影響が出るもの」となります。
上記にて参照されている秘密情報の保護ハンドブック ~企業価値向上にむけて~(PDF) によると管理コスト、訴訟コスト、被る可能性のある損失、保護することで得られる利益の4つの観点に情報を照らし合わせ、決定するようです。
資料には保護するべき情報のイメージとして下記の項目が挙げられています。
0. 顧客情報
1. 営業情報
2. 技術情報
そして営業情報には「公表前のデザイン」が含まれています
ですので「公表前のデザイン」を会社に許可をとらず公に公開するのは漏洩にあたる訳ですね。
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ここからは完全に蛇足です。オチもありませんので読まなくても大丈夫です。
大手にUIをパクられてしまった事を思い出す
なぜこのような話を書いているかというと、過去に担当したプロジェクトを振り返ってみると、「参加しているプロダクトUIがまるっ大手に参照されてしまった」事がいくつかあったからです。された側の企業にとってはツラいものです。
しかし実は特に珍しいことでもなく、目を向けてみればMacのAlfredがSpotlightとして実装されたケースやMinecraftでHoppperが実装されたケースなどたくさんある。Twitterでもそんな事があったような気もします。
MinecraftのHopper、ModであるBuildcraftで実装されているものと同じ機能を持ったものが正式に導入された。
やっと油揚げになったところをトンビが持っていってしまう問題。
開発者ごと買収し、中の人としてやっていくケースは両者の合意があれば問題とは思いません。しかし、そうではない場合、法的に何かしらはできないものの、多くの問題が参照元にふりかかることになります。
UXリサーチから機能への落し込み、UIからコードへの実装までにはたくさんの紆余曲折があるからです。
機能やインターフェイスに落とし込む前にはそれとは比較にならないほどの経緯があります。
と、すると、その右往左往を経て研磨に研磨を重ねたプロダクトのUIをまるっと大手が踏襲し、圧倒的なリソースでUIを洗練されていったらどうでしょう。
先発であるスタートアップ企業はこれに打ち勝たねばなりません。大手が乗り出す前に早々に距離をあけ、逃げきれるのであればいいのですが。
UIは集合知(協調領域)であり資源(競争領域)でもある
UIデザインは協調、競争どちらの領域にも跨がっています。どのプロダクトでもポータブルに使うことができるUIは協調領域として企業間が情報交換し、どんどん広めていくのが望ましいと考えています。
一方、特定市場における独自のインターフェイスに於いては競争領域になります。防ぐ方法はあるのでしょうか? また、私たちは常日頃さまざまなインターフェイスを参照し、それをもとに開発しています。それはEvilな事なのでしょうか?
うーん、コレは…。どうしたらいいんでしょうね。
現時点で私がコレに回答できるとしたら、
「UIの強さを競争力にする事はリスクがある」
「開発力と(サービスの方向性を収束させる)ノウハウが競争力になる」
くらいしか言えません。またどちらも流動するものですのでいつまでも手元にあるものでもありません。要はお手上げなのです。
できる事といえば早くて質の高い開発に貢献すること
そう考えると、私たちデザイナーがそういったインシデントに対し行えることはほぼなく、とても無力です。とほほ。
唯一そこに貢献できるとしたら、早い収束と開発のためにデザイン領域ででき得ることをどんどん実行していくことなのでしょうね。
オチがなくてすいません。