『動かないボーナス』〜毎週ショートショート
「絶対に受け取らない」
小さなダイニングテーブルの上に置かれた封筒を見つめながら、私は心に決めていた。
「それ、DVでしょ」
親友のまどかにそう言われ、私はハッとした。
いつもあの人は優しかった。お酒を飲んだとき以外は。
でも、次の日には花束やケーキを買って帰ってくる。
「昨日はごめん。やりすぎた」
わかっているのにお酒を止められない。
「ボーナスが出たんだ。全部渡すから好きなものを買いなよ」
喉から手が出るほど欲しい。これからの生活のために。
でも、私にも意地がある。借りは作りたくない。
テーブルの上のボーナスはそのままで、私は家を出た。
さようなら。
「シナリオ、こんな感じでどうかな」
まどかに問いかける。
「いいんじゃない?聡さん、お酒を飲むとすぐ寝ちゃうものね。記憶なさそうだし。別れる理由は出来たし、これから一緒に暮らせるね」
恋人のまどかはそう言って笑うと、私の腿を思い切り数発蹴った。
DVの証拠を作るために。
399字
ずっと気になっていた『毎週ショートショート』に挑戦してみました。
細かいところを考えると粗だらけですが、ショートショートでは書ききれないのでそこが難しいなと思いました。
でも面白かったので、また挑戦してみたいです。
たらはかにさん、ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?