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ねこのきせつのなやみごと
今年もこの季節がやってきた。
猫たちが移動する、猫たちの季節だ。
春先、暖かくなる3月頃からだったものが、近年は暖冬だったり、暖かくなるのが早かったりで、春と呼ぶにはまだ早い頃から始まっているようだ。
温暖化はこんなところにも影響している。
我が家の庭にもどこからもなく、新参猫がやってくる。
居場所を取られたコが、新しい居場所を探してやってくる。やってきたコには新しい場所かもしれないが、そこにはそこの先住猫がいるわけで、そこのコは、それまで安全地帯だった自分の居場所が脅かされる。
弱いコは追い払われて、新しい居場所を探しに行くことになる。 そこでも誰かの居場所が、誰かの新しい居場所に変わっていく。
移動と書いてみるものの、そんなに平和な話じゃなくて、縄張り争い、食うか食われるか、居場所を無くせば食べる物も無くす。雨風だって、寒いこの季節の雨は命取りだ。
人間の方は、なんとかうまく平和的解決を願って、分け隔てなくごはんに寝場所を用意してみるが、猫にはうまく伝わらない。
人間関係ならぬ猫関係は、猫の世界も人間の世界も変わらない。
今年も早々に猫の季節がやってきたようだ。
窓越しに見知らぬ猫と目があった。
見たことない茶トラだ。
猫が私をじっと見ている。
私も猫をじっと見た。
お互いに、しばらくじっと見た。
茶トラが何を思っていたのかわからないが、私は空に昇ったコを思い出していた。
私を見つめる眼差しが、空に昇ったコによく似ている。毛の色も柄も全く違うのに。
ネットで読んだ話によると、空に昇ったコは、あまりに飼い主が心配だと毛皮を着替えて還ってくるらしい。慌てて、毛皮を間違えることもあるとやら。
彼が空に昇って2年と1ヶ月。
いまだに毎日泣き続けているわけではないが、空に向かって会いたいよと心の中では呟いていた。
だからなのか。
毛皮は明らかに間違えていたが、顔つきも眼差しもよく似ていた。
そんなことを思いながら窓を開け「どこから来たの?」と声をかけながら、カリカリごはんを置いた。
ここには、すでに先住猫がいる。
ずっといるわけではないが、毎日やってくるコ、定期的にやってくるコ。
いずれもサクラ耳の地域猫のコたちだ。
ちから関係が変わると、いままでのコたちが来られなくなるかもしれない。
新参猫の耳はカットされていない。
誰か探している人間はいないのか。
見た目で得する人間がいるように、猫も見た目で得する猫がいる。
新しいコが可哀想だからと思っていると、先住のコたちが可哀想なことになる。心が痛い。
猫類皆兄弟ではないけれど、なんとか平和に仲良くして暮らせないものか。
この季節の悩みである。
空に昇ったコを思わせるだけに、なおさらだ。
たわいもない話にお付き合いいただき、
ありがとうございました。