グラスをかけて見たい世界?
グラスと文字を使ったコミュニケーションの可能性を探究したいと始めた今回の実験。
実際にLenovo Glasses T1を体験し、アイデアを考えてみたものの、グラスをかける意味がパキッとしない。グラスをかけて見たい世界って何なんだろう。
そんなことをゆらゆらと思いながら、最初の妄想を深化させようと考えを巡らせていた。
Museum Bathing(博物館浴)という研究
アートに何ができるのか。
テクノロジーが芸術のためにできることは何かというテーマを掲げながら、逆方向の問いとも向き合っていた時に、Museum Bathing(博物館浴)という研究があることを発見した。Museum Bathingとは、博物館等で作品を鑑賞することでリラックス効果が得られるというもの。研究では、鑑賞前後の心理学的測定と生理学的測定による数値の比較で効果を検証している。
参照:経済産業省「アートと経済社会について考える研究会」(2022年6月)P64「アート鑑賞によるリラックス効果の研究」
なんだか面白そう。ある世界への没入、世界観の創出とグラスがよい関係にあるような気もするし、グラスが美術館になったら楽しいかも。書道がアートなのか?という問いにもつながりそう。
漢字で景色を作りたい
どんなことを組み合わせると書道とうまくつなげられるだろうか。一般的な書作品をグラスで見てもよいのだけれど、グラスで見る意味がどうしても疑問となって付きまとう。
そうだ、私は漢字で景色を作りたかったのだった。
グラスで視覚化、グラスで視覚化……と呪文のように唱えていたら、しばらく忘れていた気持ちを急に思い出した。今までうまい方法が思いつかずに実現できていなかったのだけれど、今回の実験にぴったりかもしれない。
漢字動物園を作ろう
社交性に富んだプロジェクトリードのアシストを多分に受け、濵一蝶さんと何か一緒にやってみることになった。好奇心の渦巻く中、それぞれの関心を持ち寄って、漢字をAR空間で動かせないかというような話をしていて。どんな景色を作りたいかなと考えて、漢字で動物園を作ってみようかなと思った。それをARで見たらどうなるんだろう。
実験計画のアップデート
そのような流れで、実験計画をアップデートした。
漢字の造形、デザインのポテンシャルをデジタルでどのように表現できるか。
作品を観てくれた人にどう伝わるのか。
漢字動物園をARで制作し、グラスで鑑賞する。鑑賞前後の脈拍と血圧を測定してみて、変化があるのかを実験する。
Museum Bathingの研究では、鑑賞後に脈拍や血圧が下がったことなどから(他にも複数の測定あり)、鑑賞による精神的な効果があることを説いている。私のは個人的な実験なので、測定するのは血圧と脈拍とする。数値を測定したところで何か言及できることがあるかはわからない。
書作品が絵画などの美術作品と同様のリラックス効果を生むのかも謎めいている。ARにすることで、リラックスよりも興奮に振れるような気もするし、一般に、書作品を目にする機会は絵画より少ないと思われる。そこに何か感情の動きが生まれるのだろうか。
今回の実験にあたり、「自分の力で試せること」も重視している。しかし、そもそも自分でAR作品が作れるのかもわからない。
いろいろのわからないを抱え、実験をしてみます。