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【ネタバレ有】『アイアム・ア・コメディアン』が泣けるドキュメンタリーだったとは

ウーマンラッシュアワーの村本 大輔さんというと、どのようなイメージをお持ちだろうか。
「THE MANZAI 2013」で優勝した一方、メディアではっきりと意見を主張される、村本さん。

村本さんが出演されているドキュメンタリー『アイアム・ア・コメディアン』を観てきたので、概要と感想を書こうと思う。

アイアム・ア・コメディアンはどのような映画なのか

まずは『アイアム・ア・コメディアン』の概要を紹介しようと思う。

内容

『アイアム・ア・コメディアン』はお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本 大輔さんの3年間を追ったドキュメンタリー。

ウーマンラッシュアワーとして出場したフジテレビ系「THE MANZAI 2013」で優勝した村本さんは、そこからテレビ番組への出演本数は右肩上がり。2016年には年間250本ものテレビ番組に出演。ところが、とあるインターネットテレビでニュースに触れ、政治や社会問題に興味を持ち「THE MANZAI 2017」で原発や社会問題を取り上げた漫才をしだしてから、テレビ出演本数は激減。ついには、2020年に出演したテレビ番組が「THE MANZAI 2020」1本になった。

本ドキュメンタリー『アイアム・ア・コメディアン』では、村本さんが劇場・ライブを主な活動場所とし、さらには本場アメリカへ渡ってスタンダップコメディをしながらお笑いを追求する姿が映されている。
間にはコロナ禍で劇場公演が中止になっていくことへの葛藤、家族との関係、韓国での学び、英語を学びながらニューヨークのスタンダップコメディで笑いをとる姿が描かれている。

監督は長編版『東京クルド』(2021年)を制作した日向 史有(ひゅうが ふみあり)さん。
映画を深掘りする番組SAMANSAの公式YouTubeチャンネルのなかで「(村本さんの)パワフルさに引き込まれた」と語る。

上映館

8月24日以降の放映スケジュールは以下のとおり。
※変更される可能性もあるため、詳細は公式HPにて。
【関東】
・茨城 9/14(土)~9/20(金) あまや座
・栃木 9/13(金)~ 宇都宮ヒカリ座
・東京 8/23(金)~ シモキタ-エキマエ-シネマ『K2』
・東京 9/16(月)〜9/30(月) シネマ・チュプキ・タバタ
・神奈川 8/17(土)~ 横浜シネマリン
【中部】
・新潟 8/16(金)~8/30(金) 高田世界館
・長野 9/27(金)~10/10(木) アイシティシネマ
・福井 8/17(土)~8/30(金) 福井メトロ劇場
【近畿】
・大阪 8/24(土)~9/6(金) シアターセブン
【中国・四国】
・香川 9/13(金)~9/19(木) ソレイユ
・高知 10/25(金)~10/29(火) とさぴくシアター
【九州・沖縄】
・佐賀 8/23(金)~8/29(木) THEATER ENYA
・沖縄 8/16(金)~ ミュージックタウン音市場
・沖縄 8/23(金)~9/5(木) よしもと南の島パニパニシネマ
・沖縄 8/27(火) 1日限定 ゆいシネマ

映画『アイアム・ア・コメディアン』公式サイトより

いち鑑賞者の感想

まず……意外だったのは、とにかく泣けること。
事前に映画の紹介動画を観ており、村本さんがお笑いを追求する姿勢やメディアのあり方みたいな内容に焦点が当たっているドキュメンタリーかなと、なんとなく思っていた。

実際は、さらにもうふたつくらいテーマが加わっている感じ。観る人によって感想は異なるとは思うが、私には家族とのつながりや人との向き合い方みたいなテーマが見えた。
福井に帰省し、家族との別れ際にずっと手を振っているシーンがあり、共感を覚えた。

特に印象的だったのは、村本さんが「悲劇のなかに喜劇がある」と言っていたこと。うろ覚えではあるが「星は暗いなかでしか見えない」みたいなふうに例えていた気がする。
村本さんはご自身が一番好きなお笑いとして、黒人の方による「なぜ黒い絆創膏(ばんそうこう)はないんだ」というネタを挙げている。黒人のコメディアンは、たったその一言でお客さんを笑わせるのだそうだ。

映画のなかには、スタンダップコメディでここには書けないような話をして笑いをとる黒人の女性が映っていた。境遇から生み出された自虐ネタだ。おどろいたのは、観客としてその話を聞いていた黒人男女が皆、笑うこと。
このような場所があるんだ、こうしたネタで笑い合っていいんだ、というおどろきとともに「悲劇のなかに喜劇がある」という言葉の意味が伝わってくるシーンだった。日本のテレビでは、このようなネタは放送できないだろうなとも思った。

他にも、村本さんが現地の方に、沖縄の基地についてどう思うか聞いたことがあるのだという。質問を受けた現地の方曰く「基地に関する仕事をしている人もいる(←たしかこのようなニュアンス)」ということだ。加えて「でも話題にしてくれてうれしかった」と。もちろんひとりの意見だ。
このエピソードか、朝鮮学校の方と話した時か、エピソードは忘れてしまったが「目が合わないことがさみしい」と感じる当事者がいると語られていた。

話は脱線するが、『R-1グランプリ2018』で優勝した濱田 祐太郎さんという芸人がいる。濱田さんは視覚障害を持っている。その彼が、かつて『水曜日のダウンタウン』に出演された時のこと。濱田さんがVTRのなかでスタジオに向かい「まっちゃん見てる~?!」と言った。その言葉に対して、ダウンタウンの松本さんは「お前は、まっちゃんのこと見たことないやろ!」とつっこんだのだ。
のちに濱田さんは、その出来事がすごくうれしかったと語っていたのが印象に残っている。おそらく松本さんから返しがきたうれしさと同時に「目が合う感覚」によるところもあるのかなと思った。

ドキュメンタリーの終盤で、お父様が亡くなった次の日、村本さんが独演会でお父様のことを話題にする姿が印象に残っている。終了後、村本さんは酒瓶を片手に会場から出てビルの階段を駆け下り、薄暗いなかでひとり地べたに座ってお酒を飲んでいた。カメラに向かってお父様へのメッセージも。

いろいろと書きたいのだが、書き切れないので、ぜひ実際に観てほしい。
私は数年ぶりに映画館へ行き、20年ぶりに映画のパンフレットを買った。なんならもう1回観たい。

映画を観るのが苦手な自分がアイアム・ア・コメディアンを観た経緯

まず、この映画を知ったのは、SNSか何かで村本さんの映画が公開されるというお知らせを見たのがきっかけ。
「え!」と思い、映画館で映画を観るのが苦手な自分だったが「絶対観に行く!」と楽しみにしていた。

というのも、私はかつて村本さんの独演会へ行くほどファンだったからだ。
当時、社会人になってそこそこだった私は、ひとり暮らしをしていたその部屋でお酒を飲みながらお笑い番組をよく見ていた。当時は仕事で1日に多くのお客さんと接しており、座椅子に座ってふぅと疲れた体にお酒をしみこませながら、テレビ番組やDVDでお笑いを見るのがマイブームだった。1日に何十人と接していれば優しい方にも、そうだとはいえない方にも出会う。いろいろな思いを、お笑いを見ることで中和させていた。

その頃にちょうど目立っていたのが、村本さんだ。まくしたてるように言いたいことを言い「嫌われ芸人」なんて紹介されているその姿が、なんだか新鮮だった。村本さんに言及するような場面になると芸人たちがこぞって、やいのやいの言っていたため、目立っていたのを覚えている。

当時がっつり縦社会の組織に属しており、何かおかしいなと思いつつも先輩の言うことにYESと返していた自分にとって、人の目をあまり気にせず発言する姿は、なんだか憧れの対象になっていた。
村本さんが言いたいことを言うたび、私のなかでスカッとする感覚があったのだ。

気がつくと「THE MANZAI 2013」の優勝賞品となっていたフジテレビのレギュラー番組を毎回録画し、楽しみにしていた。
渋谷のヨシモト∞ホールへ行き、先述のように独演会にも足を運んだ。独演会で後ろのはしっこのほうの席に座っていたら、後ろから登場した中川パラダイスさんから、「村本へどんなことを聞いてみたいですか」と聞かれた。心の準備ができておらず、まったくおもしろくない返答をしたことを、今でもたまに思い出しては悔いている。ただ、村本さんが私のリクエストにも応え、話をしてくれた。

転職や引越しなど忙しくするうちにあまりテレビ自体を見なくなってしまったことにともない、ウーマンラッシュアワーも見なくなった。だから当時は出演が減ったといっても、他にどの芸人が出演本数が多いのかさえもわからなかった。

「THE MANZAI」で優勝した頃はバイトリーダーという早口のネタが鉄板。2020年、久しぶりに「THE MANZAI 」でウーマンラッシュアワーを見ると、同じ早口ネタでも時事ネタを披露していた。「方向転換したのかな」という気持ちもありつつ「でも、らしいかも」とも思っていた。

「最近テレビで見ないなぁ」くらいに思っていたところに、ドキュメンタリー放映のお知らせが目に入ったのだ。「え! 村本さんのドキュメンタリー?」と思い、観に行かない理由はなかった。

映画を見終わって今後が楽しみになった

映画を見終わって、村本さんの今後の活動を見てみた。
公演に行っていなかった期間もあったけれど、久しぶりに独演会に行きたいと思ったからだ。共有されているGoogleカレンダーには今後の予定がびっしりと書かれていた。
せやろがいおじさんとも、スタンダップコメディをしているらしい。

映画のなかで語られていた「悲劇のなかに喜劇がある」という言葉は今後も自分のなかに残り続けるだろう。

これからまた村本さんの独演会に足を運ぶことを思ったら、なんだか楽しく思えてきた。程度は違えど、一緒に走るような気持ちで自分も頑張れそうだと思った。

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