美しきバルール6 淡い失恋
「佐藤くんとトキちゃん、退所になったのよ」
1週間の過酷な研修を終えて寮に戻ってきた日。同室のミヨがクネクネしながら凛に告げた。前回の話↓
「え!?」佐藤に会える夕飯の時間を待っていた凛にはショックな一言だった。「ほら、研修があってこの寮に残っている人少なかったでしょ。その時に、佐藤くんとトキちゃんが部屋でいちゃついているところを寮長に見つかっちゃったんだって」
ミヨは夜何処かの部屋で仕入れる情報はだいたい正しい。凛の母親よりかなり年上だが妙な色気がある。ミヨの紅い口紅がギラギラする口元を見ながら茫然とした。
その夜、佐藤とトキの退所を寮長が告げた。あれほど佐藤と付き合うことを凛に勧めた上川もその場にいたが何も言わない。
トキは寮で一番人気の女の子だ。凛は1週間前の佐藤の真剣な目を思い出して混乱した。
「あの二人、タイミング悪すぎよね。よりによって寮長に見つかるなんて」部屋に戻ったミヨがおかしそうに呟く。「あの二人、、、前から付き合っていたの?」凛が小さな声でやっと絞り出すように聞くと「どうなんだろうねぇ」笑いながら部屋を出て行った。食堂でもある大広間に寮生が一斉に集まる時間だ。ミヨの楽しみは男子寮生とおしゃべりすることだ。ミヨの粘りっこい鼻歌に無性に腹が立つこともあったが、今日は気がつかない鈍感さがありがたかった。
佐藤とトキは皆に挨拶することなく、強制的にそれぞれの自宅に戻された。
寮を出る形は3パターン。卒業と、脱走と、強制退所がある。
佐藤の家は関西にあると聞いたことがある。このままもう会うことはないのだろう。佐藤の真剣な眼差しを思い出して凛は胸が痛くなった。
今なら笑って佐藤に聞いてみたいことがいっぱいある。
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