美しいバルール16 人生初の仕事は、、
凛は造園業に配属される前、数ヶ月作業所に通っていた。
前回までの話↓
施設には、造園業とビルメンテナンスの仕事のほか、そのどちらの仕事も難しい人が通う内職をする作業所がある。
子供も大人も何もしないでプラプラするというのは施設では最も許されないことだ。凛は当時13歳だったが、正式な配属が決まるまでという条件で作業所に通うことになった。
人生初の仕事は封筒貼り。報酬はなんと一枚5銭!(2枚でやっと一円になる)だ。躁鬱が激しくて欠勤してる2名を除き3名。
ずっとタバコを手放さないタロウ。食べることで頭がいっぱいのスーさん。
ほぼ目を瞑ってすごし終業30分前に覚醒する田村。長老の逸見だけが唯一まともだが残念なことに耳が遠い。皆、自分の世界に没頭したまま8時間を過ごす。
お昼とおやつのときだけスーさんを筆頭に敏捷な動きになる。
こんなに1日が長いのかと凛は驚いた。そして、妙な焦りを覚えるようになった。
学校や家でも、ただ反抗か拒絶の2種類の行動しか取らなかったが、子供心に「 このままではマズい!!」と感じるものがある。封筒貼りの作業は辛くないが、
ずっとここにいると、生気のない同じ目で同じ毎日を過ごすのではないかと
猛烈に焦りがわく。
ある日、リーダー逸見が準備したおやつのジュースが一本不足していた。
運悪くトイレに行っていたスーさんがもらいそこねる。
普段は無気力な彼女が「私のジュースがナイ!ジュースがナイ!!」と鬼の形相になり(そこは食事が厳しく制限されていた。スーさんの反応も無理はない)凛の焦りは最高潮になった。
ジュース一本で死闘が起きそうな封筒作りの日々。1ヶ月がたったころ、
「新しい仕事決まったよ。よかったな!」寮長から呼び止められた。
「凛ちゃんは〇〇園芸に行ってもらうことになったよ」「?!」
内向的な人はビルメンテナンスの会社に行くのがお決まりだ。
そして元ヤクザの加藤率いる〇〇園芸は、外向的な人が行くという暗黙の了解があった。
「ビルメンテは人が足りているらしいんだよ〜」凛のビックリ顔をみて寮長がボソリ。
凛は泣き笑いしながら部屋に戻った。自分とは一切無縁と思っていた〇〇園芸。
加藤の指先はないらしい。急にキレるおっかない林もいる。
そして、〇〇園芸での日々が始まった。
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