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美しきバルール8 ヤクザより強いスーさん

造園会社かビルメンテナンス。凛の施設で暮らす仲間は大抵はそのどちらかで働くことになる。施設の関連会社で就労しながら社会復帰を目指すのだ。どちらも難しい人たちは”わかばサービス”へ行く。

前回までの話↓


スーさんは精神科の入退院を繰り返してここへ来た。元気な頃は某化粧品メーカーの売れっ子美容部員だったそうだ。面会に来るスーさんの妹は誰もが振り向く美人で、スーさんも顔立ちは妹そっくり。だが今のスーさんは化粧はもちろん、食べること以外への関心はない。わかばサービスに出勤して封筒張りという仕事(一枚5銭、二枚で1円!!)をしている。が、1日だけ頭数合わせで造園の助っ人に駆り出された。

「とりあえずいるだけでいいから」

説得されてスーさんはしぶしぶ現場へ来た。今日は大きな寺の境内の整備。広い庭の芝張りに樹木剪定、樹木を新しく植え替えだ。今日も平和に終わるだろう。

「この芝運んでくれるかな?」元ヤクザの加藤は優しくいう。「わからないんですう、、」スーさんはできるだけ動きたくない。(凛は短期間わかばサービスにいたからわかる。)素行不良の少年たちは反抗もするが動きは敏捷だ。

”女と子供には紳士たれ”が信条の加藤も苛立ってきた。「おいっ、そっちじゃないよ、枝はこっちに運べっていってんだろうっっ!このヤロ、、」昼近くついに加藤がキレかけ凛もそして周りも凍りついた。スーさんも林みたいにボコボコにされるのか!

皆が固唾を飲んで見守る中「もうお腹すいた〜」スーさんは呑気な声で地面に腰を下ろしてしまった。お昼まで限界らしい。

加藤は怒りを鎮めるためにそのまま何処かへ去った。女に手をあげるのは加藤のプラシドが許さない。男子を力で従わせるのは得意だが、無気力な女子を従わせるのは難しい。スーさんのご機嫌はお昼のジュースであっさり治った。

スーさんは明日から封筒張りに戻る。きっとご飯とおやつの時間以外は眠ったように動くのだろう。1ヶ月の収入も500円が精一杯だ。でも、背中に巨大な龍を背負ってる無敵の加藤が敵わないのだ。

(スーさんはヤクザより強いのか、、)加藤の渋い表情や少年たちの呆気にとられた表情を思い出すと吹き出しそうになるのを何度もこらえた。

凛の毎日は刺激的で飛ぶように過ぎていった。

続きの話はこちらをどうぞ↓


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