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美しきバルール22 ”チュンチュンさん”

昨夜見た夢に”チュンチュンさん”が出てきた。
”チュンチュンさん”、、、、それは、凛の祖母である。

前回までの話↓


華奢で小柄。小さな口の食事の量は小鳥がえさをついばむ量くらい。小鳥みたいだネ、と誰かがそうあだ名をつけた。
凛の母親は長く療養中だったので、主に家事、母親が果たすべき役割を誰かが常に補って、毎日がなんとか回っている。
チュンチュンさんもかなりの高齢だが、一生懸命に母の代役を頑張ってくれた。

凛が施設に入っていた頃、父は単身赴任、母は入院中、だたっ広い家は高校生の早紀(凛の姉)の一人暮らしだった。そんなある夜、家の周りをアヤシい人影?がうろついていたらしい。
怯えた早紀が離れに住むチュンチュンさんに「どうしよう〜」と電話する。
その時、すでに70代後半だったと思うのだが、
「ちょっと待ってて!今すぐ行くから!!」と 物静かなチュンチュンさんは
強い口調で言い、しばらくしてそろそろと現れた。
(どんなに急いでも、ちょっと時間はかかっちゃうのね)

背中の曲がったチュンチュンさんのしわだらけの手に握られていたのは、
古〜〜いすりこぎ!!早紀が目を丸くしてそれを見ると
「ワタシこれで戦うわ!」小さい声ながらきっぱりと言い切った。

老婆の家の中にある「一番武器になるもの」がすりこぎだったらしい。

別の日、凛は庭の茂みでバタバタする大きな生物を発見した。
近づいてみると、巨大な虫、でなくてジャージにサンダルのチュンチュンさんが、
ひっくり返って無言でジタバタしていた。

どうやら、下屋に惣菜のおすそわけに来た後、庭の坂でバランスを崩してひっくり返ったらしい。

いつもグレーかベージュの地味な服装が、庭の茂みと同化してすぐには人だとわからなかった。

はにかみやで前に出しゃばる事を嫌うチュンチュンさん。

金子みすずの詩が大好きで、家にたずねていくと小さな口でコーヒーをすすりながら詩集を読んでいた。
「庭の花が咲いた」「鳥がベランダに餌を食べにきた」そんな小さな事でいつも喜んでいた。

凛の家族は、ちょい高めの目標を設定して邁進せずにはいられない、欲張り体質だ。その中で、欲張らず、身の丈の幸せでいつも喜んでいたチュンチュンさんを
みると凛だけなく、凛の家族もホッとしていたはずだ。

天国に旅立つその日まで、庭に咲くミヤコワスレのように可憐で愛らしかった。

どんな夢か忘れてしまったが、思い出す度心がほんわかとなるチュンチュンさん。

とても小さくて、そして大きい存在だった。

続きの話はこちらでどうぞ↓


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