美しきバルール23 絵に夢中になる
凛が油絵を習い始めた高校3年生。姉の早紀が、何を思ったか突然「海外に留学する!!」と貴志に宣言する。
前回までの話↓
母の真奈美は病気で寝たきりだ。そんな中で長女が海外留学だなんて!と大反対された早紀は資金を貯めるため、また実現に向けて家出をした。決意は相当固かったらしい。
消息を絶って数ヶ月後、早紀の居場所がわかる。
家から2駅先、理解ある大家さんの2階に間借りをしていた。
貴志もついに諦めて、早紀は留学を敢行することになる。
その間借りてる部屋を、凛に使わせてくれることになった。
真奈美の介護の為に、家は一日中いろんな人が出入りする。
その中で娘である凛が素知らぬ振りをして呑気に絵を描いている という図は、
さすがにマズい。束の間の休日、真奈美の介護から離れて姉の借りた部屋でボンヤリしたり絵を描く時間はすごくありがたかった。
一階に住む大家さんは3時になると「一休みしないかい?」おやつとお茶を持ってやってくる(一般住宅の2階を借りる下宿スタイル)
「アタシも描いてよ」大家さん本人や茶飲み友達、、デッサンを描かせてもらった。絵をプレゼントしようとしたら
「タダじゃバチが当たるよ、ほれ!」強引に渡された封筒には万札が一枚。
年金暮らしの大家さんの気持ちがありがたくて、一番いい額縁に入れて絵をプレゼントした。
ちょうど定時制高校の文化祭の時期。出してごらんと勧められたコンクールに
油絵を出品してみた。それが、なんと金賞をいただいたのである!
ただ、自分の為だけに描いた絵が外から評価されるなんて、全く期待してなかったので、これは嬉しいサプライズだった。
クラスメイトに「おめでとう!」「スゴいじゃん!」と言ってもらえて、
今まで隅っこにいた自分にライトが当たり、気恥ずかしくもやっぱり嬉しい。
「言葉」がうまく出なくて伝えきれあいもどかしさを、コミニュケーション能力の不足を(絵を描けば)作品が補ってくれる気がして、それから一気に絵にのめり込んでいった。
特に取り柄がない、と思っていた分だけ、人に「スゴい!」と言ってもらえる喜びは大きい。絵がうまくなれば人と同じ場所立てるんだ!と無我夢中になった。絵は、人との共通言語を獲得するための手段のようなものだ。
気になる美術展があれば、不安感を乗り越え、電車を乗りついで都心まで行く。
混雑してる電車は、美術展のリーフレットをみつめ、手帳に詩をかくことでなんとかやりすごせた。
目標があれば多少の苦手はなんとかなったし、 良い展覧会を見た後の感動は、
なんとも言いがたく、そのときは、気持ちが穏やかになって、
ひろがる幸福感をジッと噛み締めるのだった。
そうして凛はどんどん絵に夢中になっていった。
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絵は、アートはやっぱり魅力的です。
世界の終わりが来ても、やっぱりそう思うと思う。もうジンセーを捧げたと言い切ってもいい。この世を去る時は、絵筆を握っている瞬間でありたいです。