美しきバルール14 金色のカエル
凛の姉、早紀はずっと優等生で通っていた。姉妹の祖父母は4名とも教職についており、親戚もほぼ教員である。
前回までの話↓
姉妹に「(教科書にあるように)正しく生きるべし」の概念は染み付いて、母親の真奈美にも従順だった。だが思春期あたりから様子がおかしくなる。凛は学校に行かず自室に閉じこもり、早紀は不良グループとつるんで家に帰ってこない。
姉妹の反抗に悩んだ真奈美は、知人から紹介された占い師へ行くことにした。
とあるアパートの一室。薄暗い待合室の中は、なぜか竹やぶの壁紙だらけだ。
日本じゃないような不思議な雰囲気の部屋で、無言で待つ親子。
待つこと15分、、悠然と登場した占い師は、真っ赤なチャイナドレスを身にまとい
ゆっくり挨拶をする。純粋な日本人のようだが、アパートの一室に中華的異次元。非日常に圧倒されて、普段揉めてばかりの3人も静かだ。
中華的異次元のなかで、早紀の進路や凛の不登校のこと、真奈美の相談が始まる。
一通り相談し終えた後、厳かに結論を述べた占い師の女性。
「大丈夫。あなたの悩みは必ず解決します」
そして、とても大事そうに小さな袋を真奈美に手渡した。
「いいですか?この袋の中には”幸運のお守りカエル”が入っています。
皆さんに袋を渡しますが中のカエルの色はそれぞれ違います。銅製、銀製、、、それと金製の3つ。」
一言おき、声を強めて占い師は続けます。
「そして、 滅多にないのですが、もし金色だったらあなたは本当に幸運です。
そして、中のカエルの色が何色だろうと決して他人に話してはいけません。」
占い師のただならぬ迫力に押されて真奈美はうやうやしく袋を受け取った。
大事に持って帰った小さな袋。 真奈美は家に着いた途端中を見る。
息をのむ3人の視線の先。
コロッと出てきたのは、黄金に輝くまさしく、金色のカエル!!!!
私たちに幸運の金のカエルが出た!
3人はしばらく小さなカエルを見つめていた。
そして後日談、、興奮冷めやらぬ真奈美が友人に電話をする。
占い師の 紹介のお礼だけで終わればよかったのだが、うっかり例の袋の話になる。
「、、、、ねえ、あの小さな袋の中見た?」我慢できず、真奈美は聞く。
「、、、見たわよ。」「で、あの、、、あなたは何色だった?」
一言おいて友人の答え。
「うちはね。なんと、金色だったのよ!」
得意げな友人の言葉に沈黙する真奈美。占い師が滅多にないと断言した金色カエルは、友人の袋にも入っていた。
滅多に出ない幸運のカエルは、実はよく出るカエルらしい。
その夜は、小さな金色のカエルを見ては家族で大笑いとなった。
激しい口論も忘れて、ひたすら笑いあった金のカエル事件だった。
その後も、凛の家庭はアクシデントが続いてギリギリで繋がっていたが、幸いにも崩壊をまぬがれ、10年後には穏やかな日常を取り戻した。
有形無形の様々な助けがあったからだが、こうしてみると、金のカエルは確かに幸運のカエルだったのかもしれない。
続きの話はこちらをどうぞ↓