Designship2023 『佐藤卓さん』Keynote
年に1度の大規模なデザインカンファレンスであるDesignship.
今年のテーマは、広がりすぎたデザインの接続。
初日のKeynoteは佐藤卓さんでした!
「デザインの自由不自由」というテーマで色々お話しいただきました。
おいしい牛乳
まずは、明治「おいしい牛乳」の制作秘話から。
中身を外側で表現することがパッケージデザインで、この商品の場合、「そのまま」がキーワードだったと。
キャッチコピーも当初「おいしい牛乳」って自分では言わないでしょう、と思ったらしいのですが、「美味しい牛乳を届けたい」という加飾なしの想いを大切にし、そのままの言葉を使うことにしたそうです。
酸素を2度抜くことで、風味がよくなるナチュラルテイスト製法や、雑菌を減らすためのスクリューキャップの小話も。
(やたら製法に詳しくなりました笑)
パッケージに関しては、自宅では冷蔵庫の中でそんなに目立たなくてよく、日常使いしてもらいたい一方、店頭では目立たないと売れない。
その矛盾を解決する目立つ手段として、このときは②を選んだとのことでした。
目立つ手段は2つ
①周りより圧倒的に目立つ、ex ピカピカ光るなど
②静かにする
=周りが騒いでいるとき静かにすると目立つ。
目立つのは絶対的ではなく相対的。
店頭のような、皆私を見て、買って!という環境では、質素にすることが目立つとの仮説から。だったそうです。
そして、20年以上パッケージ同じですね・・!
良いデザインは普遍的ということですか。
キシリトール
次にキシリトールの事例。
この商品が出るまでは、ガム=甘味料=歯に悪い、という認識が一般的だった中、歯にいい甘味料(シラカバなど)を使っているということで、パッケージデザインを歯磨き粉のようなものに。
普通の商品に奇抜なパッケージデザインをするとすぐばれるので良くないらしいのですが、こういった180度概念が変わるような画期的なものには、積極的に新しいパッケージデザインにすることが有効だそうです。
デザインとは
ご本人的には、デザインとは、新しいものを作っている/生み出しているというよりも、間を適切に繋いでいる認識だそうです。
どの間を、どう繋ぐか、というところにセンスが問われるわけですね。
すでにあるものを活かす
ロゴを依頼されたときに、すでに良い素材が落ちていることもあるらしく。2つご紹介いただきました。
①金沢21世紀美術館ロゴ
設計図を上から見た瞬間からこれだ、と!
②国立科学博物館シンボルマーク
こちらは、ぱっと見何を意味しているかわからない。
見る人にとっていろんな想像をしてもらえばいい。
ので、あまり説明をしなかったそう。
ただ、これもヒントはすでに博物館の中にあって、恐竜の上顎の歯をイメージしたものだとおっしゃっていました。
デザインの概念
デザインの概念にも触れられていました。
いままでのデザインの概念は、アートの一部として語られてきたが、
これからの時代、デザインされていないものはないのだから、一つの領域の事象として語られるのではなく、すべてにデザインは必要。
その認識から、デザインが領域を横断する横串になっていました。
日本はデザインの定義が狭く認識されがちなので、もっと企画/設計/より良くしていく、みたいな広義のデザイン認識がより社会に浸透すれば良いな、と思いました。
デザインの自由不自由
最後、今回のテーマに関する締めのお言葉。
デザインに自由はない(制約はたくさんある&自分の好き嫌いではなく、クライアントの意向に沿ったアウトプットを出すべき、と解釈)
デザイナーが自分の好きな方向に行きすぎて、表現にスタイルができるのはあまり良いと思わない。
プロフェッショナルはあらゆることに対応できることであって、あらゆる技術身につける必要あり。(得意なことを伸ばす教育にも疑問を持たれているよう)
とおっしゃっていました。
逆に私は、1人の人間にできることは限りがあるのだから、自分のスタイル確立して、得意なモノを伸ばし、苦手なモノ、得意じゃないものは分業でいいのでは?と思いました。
とはいえ、自分の能力や方向性を自分で決めず、なんでもやってこなせるようになりなさい、という意味も入っている?のかもです。
その結果、不自由なデザインが、自由に変化/昇華していくのかしら。
いろいろと貴重なお話が聞けて良かったです✨