ジュネーブ時代の話①
こんにちわ。フルート奏者の井坂実樹です。
さて、前回の続きの話をしていきたいと思います。
なんのこっちゃ?という方は、宜しければ↓からどうぞ🌟
というわけで、ズーンさんの来日コンサートで出会ってから約4カ月。
若さ故の向こう見ず&訳の分からないエネルギー(今では全く理解不能)によって、私はジュネーブ高等音楽院の入学試験を受けに旅立ちました。
1人で海外に行くのはこれが初めてでした。
高校三年生の時に、芸高企画でパリ・ユネスコ音楽祭のソリストの一人として選出して頂き、大勢で行ったことがあるのですが(この話はまた後日)。
流石に緊張しましたね……でもそれ以上にわくわくが凄かったの覚えています。
ジュネーブ空港からトラムに乗って、分かりやすい駅前のホテルにチェックイン。
フロントのお姉さんに、用意してたフランス語の紙を持って「私は音楽院に受験に来ました」「部屋でフルートを練習してもいいですか?」「ちゃんと時間を守ります」って震えながら話しかけ、またも通じず(笑)
何度も話しているうちに紙も見せて(どうやら文法のせいで伝わらなかったみたい)、いいわよ~でも夜中とかは駄目だからねって許可してくれました。
街に降り立った時に思ったのは、先ず匂いが違う!ってことです。
長らく"青色の匂い"って思っていたんですが、その正体はハッカとかスペアミントみたいです。最近になって香水に詳しい友人に教えて貰いました。
見るもの全てが新しくて、綺麗で、洗練されていて。
ああ私今スイスにいるんだ!国旗あるもん!(当たり前です)とテンション爆上がりしながら、カメラを回していたのがデータに良く残っています。
てくてく歩いていくと、学校があるヌーブ広場へ到着します。
着いたはいいものの、学校……入口どこ?となっていた私が漸く見つけた扉がこちら。
窓かとおもった (阿呆)
この時はとにかく地理を把握しようと思ったので中は入らなかったけれど、ジュネーブ音楽院って中も素敵なんです。今データ漁って探しているので、折を見て紹介します。
さて、試験の話をしましょう。
私の時の受験曲課題は「4つの違う時代の曲を演奏する」で、うち1曲は暗譜で、そしてうち1曲は所謂現代曲を演奏する事が求められました。
私は確かJ.S.BACH のE-Durソナタ、Ibertのコンチェルト、I-Sang-Yunのエチュード5番(暗譜)……あと1曲なんだったかな……モーツァルトかな……?を用意していきました。
※公式サイト見たら大分受験内容変わっているようなので、これからジュネーブ音楽院を受験される方は最新の情報を入手するようにしてくださいね。
当日全部演奏するわけではなく、審査委員からその時に指示された曲を抜粋で演奏します。
ピアノ伴奏つきの曲が多いですが、本番前ピアノ合わせはありませんでした。ぶっつけ本番です。
口から心臓吐く、って言葉聞いたことありましたが、この時それをまじまじ感じました。本当に出る!って思いました(笑)
会場は少し広めの部屋で(60-70人くらいは入るかな)、とても異国情緒あふれる(異国なので当たり前です)様相で、使い込まれた木の柱、ぎしぎしと音がする床までが私にとって新しくて、両手両足一緒に出そうになりながら壇上に上がりました。
にこにこの伴奏ピアニストが迎えて挨拶してくれました。
審査委員は4人。後で知るのですが、学長、副学長、ズーンさんと、もう一人のフルートのクラスの先生のベラヴォンスさんがいらっしゃいました。
学長か副学長か忘れましたがどちらかの方が私に話しかけます。
「 Do you speak English, French, or Japanese ? 」
私の脳内はかつてないほど高速回転をし、答えをはじき出しました。
「じゃ、……… JAPANESE ONLY !!!」
会 場 大 爆 笑 。
いやお前英語喋っとるやないかい、と言わんばかりの英語が返ってきましてひとしきり笑いの波が起き(伴奏者腹を抱えてた)、私は多分頭からつま先まで火が出る程真っ赤になってたと思いますが、お陰で緊張がほぐれました。
しかし死ぬほど恥ずかしかったです。
留学希望の皆様はこんな阿呆は見習わないようにしてください。(しません)
そこからじゃあ英語で良いねと言われて、Bachから~と言った形で指示されます。
ここでびっくり。伴奏者が……自由すぎる……!悪い意味じゃ全くないです。こちらの音楽を引き出すようにゆったりと寄り添うように、けれど誘うように、時には一緒にはしゃぐ様に弾いて下さるのが、もうびっくりで。
私は楽しい!楽しい!という気持ちに任せてノリノリで吹き切ったのを覚えています。
色んな予想外はありましたが、良い演奏が出来ました。
それから数時間で結果は出ました。先ほどの入り口の扉の横に、無造作にA4サイズの紙が貼られ、私の名前の横に✓がされていました。けれど何に✓されているのか分からずにうろうろとしていた私。翻訳ソフトを使って調べよう……とワタワタしていると、ズーンさんが通りかかったので思い切って
「せんせい!わたし、うかりましたか?」
※多分こんな感じに聴こえた筈。
ズーンさんニコニコで私の頭をぽんぽんと叩き
「受かったよ。おめでとう。クラスで会おうね!」
と言ってくれました。
合格した安堵感と喜びでぴょんぴょん跳ねてる私を、本当に面白そうに笑っていた先生の姿を良く思い出せます。
ちなみにズーンさんは2メートルくらいある方で、私は153cmないです。
私の頭は正直先生の肘くらいの位置です。
大人と子供……アジア人はただでさえ若く見られるので、相当Bebe(赤子)に映ったでしょうね。
その後伴奏の二コラさんからも声をかけられ「お嬢さん!とっても素敵な演奏だったよ!」と言って下さいました。
いやいやあなたのお陰ですと今なら言いたいけれど、当時の私は「アリガトウ!アリガトゴジャイマス!」みたいな言葉を返すので精一杯でした。
とまぁざっくりこんな流れで合格した私ですが、居ないと思いますが絶対にマネしないでください。(笑)
留学を志す方は、基本前もって習いたい先生にコンタクトを取り、レッスンを受けたり、約1年ほどかけて語学学校に通って語学資格を習得し受験しにいくのが普通です。
この時先んじて現地に住んで語学学校に登録し、ビザを取得して準備する方も多いです。
ジュネーブ音楽院は幸い語学資格が必要なく(今は分かりません)、その代わり卒業時に口頭試問と卒業論文を書かなければいけない形です。
このあたりの話もそのうちしたいなと思っています。
いやぁ……振り返っても本当に衝動というか、なんというか。
この時代だからこそできたことだとしみじみ思います。
けれどそれによって、私の人生は明らかに変化しました。
それは音楽家としての成功かと問われれば、それははっきり言い切れませんし、超大きい国際コンクールで1位!みたいに分かりやすい結果ではないので、そこは私の力不足で申し訳ないといったところです。
そもそも下手に留学するよりは地道に日本で勉強と仕事をつづけた方が、音楽家として成功する上で近道だったり確実だったりするところはあると思います。
けれど完全に私というイチ人間は、本当に海外に行って良かったと言えます。
知らない事が多すぎた、私はあまりに無知だったし視野が狭かった。
今でもまだまだ勉強だと思いますが、私の場合外に行かなければ自分が無知であると言うことすら気づけなかったと思います。
それが音楽に現れているか~~~は、ちょっと分かりませんが(笑)
ここ最近ようやく、重たい腰を上げて今一度頑張ろうとしている私です。
宜しければどこかでお目にかかれる事を願っています。
……演奏動画もね、ちゃんと……出します。
次回は気楽な気持ちで、合格後に歩き回ったジュネーブ散策の様子をお届けしようかな!
それではまたお会いしましょう!ここまで読んで下さりありがとうございました🌟
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