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[エッセイ] 誰かの言葉
人は出会いと別れを繰り返す。否応なしに。
それでも、
人は絶えず "誰かの言葉" を胸に生きていくのかもー
最近、あらためてそんなことを強く思います。
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学生時代、派遣で掛け持ちをして、
死にたい記憶しかない暗黒期に
上司から言われた
「お前はいっつも明るくて、
悩みなんて何ひとつ無さそうだな」。
独身の頃、当時慕っていた人に告げられた
「僕には性欲があるから。
あなたと会う時間はもう作れない」。
結婚後、
悩んでばかりの私に昔からの知り合いが言った
「本来の君は、もっと面白いはずなのに」。
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「自分が思う自分」と「他人が見てる自分」の
あまりのギャップへの衝撃、そして学び。
ああ、私って性欲処理の候補だったんだな、
という悲しみを伴う妙な納得。
結婚して「つまらない人間」になった、
という "急所" を突かれる痛み。
放たれた言葉のベクトルがプラスであれ、
マイナスであれ、
自分にとって深く刺さる、衝撃レベルが大きいものほど
人の言葉は胸に残るみたいです。
言われたときの "一瞬、世界が止まる感覚" が
色褪せず、まざまざと蘇るような言葉たち。
そんな言葉は、きっと人生を面白くしてくれる
そんなことも、あわせて思う近頃です。
誰かの言葉が、知らぬ間に私を大人にしてくれたのかもしれません。
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私のつたない言葉たちも、
良くも悪くも、どこかの誰かに届けばいいなと、
大したことも書いてないくせに思う、
真冬の夜なのでした。