バレーボール用語の(統一ではなく)標準化について #バレーを語るアドベントカレンダー
バレーを語るアドベントカレンダー1日目の記事です!
https://adventar.org/calendars/5330
今年も主催させていただきました。
昨年の記事も上のリンクから読めますので、ぜひ!
まずは感謝を伝えさせてください
今年もバレーボールのアドベントカレンダーを開催できることが、本当に嬉しく思います。
投稿してくださる皆さま、ご覧いただいている皆さま、ありがとうございます!
昨年のアドベントカレンダーに寄せてくださった感想、読ませていただいております。
皆さん紹介させていただきたいところんなんですが、一部取り上げさせてください。
バレーボールを語る場を作りたいと言い続けてもう10年になります。
高校生の男子バレー部員、プレイヤーとしてバレーボールを始めました。
その後、プレイヤーとして、いちファンとして、コーチとして、アナリストとして、解説者として、色々なポジションでバレーボールと関わっていく中で、たくさんの皆さんと出会うことができました。
バレーボールとの関わり方、好きの形、それぞれがどれも本当に素敵で。
属性に関わらず、バレーボールを好きな皆さんが集える場を作れたら良いなというのが、このアドベントカレンダーの目指すところです。
なので、皆さんの投稿、そして感想が心から嬉しかったです。
明日以降も、多様で、そして思いのこもった投稿が待っています。
投稿してくださる皆さまも、ご覧いただいている皆さまも、思いっきり楽しんでいただけたら幸いです。
概要
さて、私の記事ですが、いつも通りバレーボール用語について書いていこうと思います。
概要としては、バレーボール用語をこうやって使いたい!という目標(意思)と、こうすれば実現できる!という状態について触れます。
- バレーボール用語によって、バレーボールを記述する
- バレーボール用語の(統一ではなく)標準化を行う
過去記事
バレーボール用語について、過去に書いた記事です。
これらを読んでいただけると、今回の記事についての前提が共有できますので、もしよろしければ。
こちらは、バレーボール用語とはそもそも何なのか、どんなことに役立つのか、について書きました。
用語によって、概念を認識すること、コミュニケーションが取れること、用語の向こうにある前提を共有できること、という用語の機能について分かると思います。
こちらは、バレーボール用語を検討するときに何を基準に考えているのか?について書きました。
「レセプション」「ディグ」という、一括にされがちだけど、実は呼び分けが重要な語を例にしているので、具体的に分かりやすいと思います。
バレーボール用語によって、バレーボールを記述する
上の過去記事にも書きましたが、バレーボールを理解・実践・表現するためには、それをバレーボール用語を使って記述する必要があります。
人の頭の中を覗くことはできないので、それを表現してコミュニケーションを取らないとお互いに共有することができません。
(言語化されていない)暗黙知は共同化、つまり経験の共有によって伝わるため、伝えることが難しいものです。
対して(言語化されている)形式知は、表出化を経ているため、言葉によって伝えることができます。
つまり、バレーボール用語を使ってバレーボールを記述することで、その内容を表現しコミュニケーションが取れるようになる、というわけです。
ただし、ここには条件があります。
ここまで、単に「言葉」ではなく「バレーボール用語」という語を使っているのはそのためです。
次のセクションでは、この条件、そしてそれが適用された状態について書きます。
バレーボール用語の(統一ではなく)標準化を行う
先述の、「バレーボール用語を使って、バレーボールを記述することで、その内容を表現しコミュニケーションが取れるようになる」ための条件は、
タイトルにもなっている、「バレーボール用語の(統一ではなく)標準化」です。
「標準化」とは、例えば、JIS制定の審議を行うJISCが以下のように説明しています。
標準化(Standardization)とは、「自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化すること」です。 また、標準(=規格:Standards)は、標準化によって制定される「取決め」と定義されます。
https://www.jisc.go.jp/jis-act/index.htmlより
また、JISでは以下のように定義されています。
関係する人々の間で利益又は利便が公正に得られるように、統一し、単純化を図る目的で、もの(生産活動の産出物)及びもの以外(組織、責任権限、システム、方法など)について定めた取決め。
JIS Z 8002:2006 より
https://www.jisc.go.jp/app/jis/general/GnrJISSearch.html
用語のメリットは、共通認識を持てることです。
なので、定義がバラバラであると困るため、標準化が必要なわけですね。
ではなぜ、わざわざ「統一ではなく」と言っているのか。
これは、日本語に例えると分かりやすいかもしれません。
まず、標準が取り得るスコープ(範囲)について書きます。
実は、標準の取り得るスコープは様々に存在します。
例えば、こういう軸を取れます
- 2人:人間2人集まれば社会が生まれます
- チーム:バレーボールの基本単位はこれと言えそうです
- 自治体:市区町村や都道府県。地理とそれに伴った社会も単位にできそうです
- 国:同上
これを踏まえると、日本語の標準語と方言のような関係が見えてきます。
コミュニティの中にいる人とは方言でコミュニケーションが成立しますし、外にいる人とは標準語でコミュニケーションが成立します。
しかし、だからといって、標準語に統一しよう!とはならないわけですね。
それは、あるスコープの中での標準はありつつ、更に広いスコープでの標準も存在するから、とも言えます。
「用語のメリットは、共通認識を持てること」であるという前提に立つと、そのスコープ内で標準化されていることが必要であって、統一ではないはずです。
また、「統一ではなく標準化」という視点はバレーボールの発展についても関わってきます。
例えば、先日9年ぶりに改訂された『新明解国語辞典 第八版』が発売になりました。
これはどういうことか?
日本語は長い歴史を持っていますが、その中においても、新語が登場したり、既存の語について新たな用例や語釈が登場したりするということです。
また、既存の語について、これまでの用例や語釈を見直すことがある、ということでもあります。
例えば、2000年代のバレーボールにおいて注目されることが多い、「テンポ」というバレーボール用語は、その定義の見直しが行われた例でもあります。
2002年にFIVBのTECHNICAL BOOKLETで「テンポ」という語は再定義が行われました。
※出典が現在非公開になっているので、リンクを貼れず申し訳ありません…
これは、これまでの定義では、現在のバレーボールを記述・説明できないため、改めてその定義をし直す必要があったためと捉えることができます。
このように、バレーボールの発展に即して、用語の定義についてアップデートが行われていくべきと考えています。
これを、標準化ではなく統一の文脈で語ってしまうと、新しい定義を反映することができず、アップデートしていくことができないため、「(統一化ではなく)標準化」と表現しています。
まとめ
というわけで、バレーボールに携わる上で、バレーボール用語が(統一ではなく)標準化されることによって、バレーボールを記述し共有することができるようになる、ということについて書いてきました。
今後、バレーボール用語の標準化が行われることでその記述とコミュニケーションがより促され、一方で発展に即して新たな用語や用例・語釈が生まれてくるよう期待しています。
また、そのために、力を尽くしていけたらと思っています。
その中で、バレーボール版GitHubのような構想も行っております。
※ https://note.com/minchiminchi/n/n38e3f5599e93より
こちらの記事にも書きましたが、バレーボール用語は、天から降ってくるものではありません。
バレーボールをプレーするのも、支えるのも、応援するのも、私たち一人ひとりです。
ならば、バレーボールを理解・実践・表現するための用語もまた、私たち一人ひとりの手によって、紡いでいきたいとそう願っています。
このアドベントカレンダーのように、そして皆さんが日頃バレーボールを楽しんでいるように、多様なポジションから多様な意見が集まることによって、力を合わせて、バレーボールを更に盛り上げていけたらと思います。
最後に
12/25(金)まで、アドベントカレンダーは続きます。
投稿してくださる皆さんの記事を、ご覧いただいている皆さんと共に楽しんでいただけたら、嬉しいです。
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