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「失格」
今回は写真とはあまり関係ない、ある歌のお話。約30年前のこと。帰り道の車でラジオをつけていると、こんなフレーズが流れてきました。
「『あなたは失格!』そうはっきり言われたい」
激しい歌詞と曲調。言い知れぬ衝撃を受けた私は、その足でCDを買いに行きました。ラジオから流れる曲を聴いてその場で買いに行ったという経験は、後にも先にもこの曲だけです。
橘いずみ『失格』(1993/YouTube ・Sony Music Direct)
当時私は教員になって2校目。悶々とした日々を過ごしていました。何をやっても生徒に跳ね返される。仕事はロクにできない。そのくせプライドだけは無駄に高い。そんな自分が嫌で嫌で仕方がない。そこにグサッと刺さったのがこの歌でした。
自分がいかに嫌でダメな人間か、これでもかこれでもかと自分に突きつけながらも、最後にはそんな自分を愛したい。もっとまじめになって、もっとたくさん学びたい。
自虐も矛盾も、全部ひっくるめての「自分」。だとしたら、少しでも前を向いた方がいいんじゃないか。勝手な解釈かも知れませんが、そんなメッセージをこの歌から感じました。ただ自虐的になっているという、単純な内容ではないんですよね。
ところで、今でも私は自分の本質は何も変わっていないと思っています。才能も、努力も、他人への心遣いも、一般常識も、経済観念も、何もかもが足りない。自分なんかいないほうがいいんじゃないかと思ったりもします。
が、そんな自分でも年齢を重ねて少しずつ、本当に少しずつですが、わかってきたことがあります。
こんな自分でも、慕ってくれる生徒がいる。「先生の授業は面白いです」と言ってくれる生徒がいる。「写真部、すごく楽しかったです!!」と卒業の日に言ってくれる生徒がいる。同窓会に集まってくれる写真部OB・OGがいる。だとしたら、ひょっとして私、ここにいてもいいのかな、と。
そんなわけで、これからも多くの皆様にご迷惑をおかけしながらヨロヨロと生きて行くことになると思いますが、どうか今後ともお見捨てなく。