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年末所感〜ある写真部顧問の複雑な感情

よく「年頭所感」というのがありますが、ここは「年末」で。

さて。私が高校写真部の顧問になってもう30年近くになります。当初目標にしていたのは、写真部を運動部と同等かそれ以上の存在と周囲に認めさせること。具体的には、コンクールで入賞するなど「実績」を残すこと。思い返すと自分でも恥ずかしいほど「熱血」に、とにかくシャカリキになっていました。写真部で目指すべきは「勝利=入賞」だと心得て、それが高校生の写真の可能性を自ら狭める愚行だとは、思いもしませんでした。

今はようやくその呪縛から解き放たれて、校外展やその他の展示・撮影会・写真集の製作など幅も広がり、部員たちとのんびり写真を楽しめるようになりました。基本的には、です。というのも、今でもちょっと油断すると、ときどき運動部でいうところの「勝利至上主義」が頭をもたげてくるからです。

(誤解のないように。勝利を目指して努力することがくだらない、という話ではありません。「勝利至上主義」とは、あくまで勝利のために手段を選ばない、あるいは部活動の目標を勝つことにしか置かないという意味です)

他校の顧問や生徒の作品への妬み・嫉みという負の感情。まさに「隣の芝は青く見える」。時にはそれが言葉や行動として表れてしまい、相手を不快な気持ちにさせてしまったことも何回かあります。まったく恥ずかしい話です。

いったい自分は、高校写真部で何をしたいんだろう?
何を教えたいんだろう?
「写真を」教えたい?
「写真で」教えたい?
何を目指してるんだ?
部員たちに、写真をどんな存在だって思ってほしいんだ?

そんな自問自答は今も続いています。そしていつも、この答えに戻ってくるのです。

「写真で人生を豊かにしてほしい」

写真部顧問がすべきことは、部員たちがそれを自分で見つけられるヒントを提供すること。「どうすればコンクールに入賞するか」というコツのようなものは確かにありますし、それをまったく教えないというわけでもないのですが、それがすなわち写真部だ、というのも違うと思うのです。

ところで。2学期末に学校であった球技大会の待ち時間。ある写真部員が自分の競技の順番を待っていて、他の先生と話をしていました。声をかけるなり、その先生はこうおっしゃいました。

「先生、この○○さん、さっきまでずーっと写真の話してたんですよ」

実は今、ウチの写真部ではなぜか時ならぬ「水の写真」ブームが起きていまして、その楽しさを延々語っていた、と。

そう。それでいいんです。十分なんです。「写真って楽しい!」って感じてもらう以上に大切なことなんてないのですから。これからも、それを忘れないようにしたいものです。



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