123天文台通りの下町翁 雑記帳 ~大墻敦・監督 ドキュメンタリー映画「スズさん~昭和の家事と家族の物語」
大田区南久が原にある「昭和のくらし博物館」(http://www.showakurashi.com)は今や登録有形文化財になっていて公開されているが、ここの館長・小泉和子さんが家族で暮らした家であった。彼女のお母様、スズさん(1910年〈明治43年〉~2001年〈平成12年〉享年91歳)が一家を支えた家である。映画の軸になるのはスズさんと一家が太平洋戦争時の米軍による1945年5月29日の横浜大空襲で翻弄されながら生きていく姿と、東京市長後の東京都庁で建築技師だったスズさんの夫が設計して建てた住まいでの彼女のあらゆる生活面での仕事ぶりである。
洗濯、半纏・浴衣・布団・着物を縫ったり、ほどいたりの裁縫、おせち・おはぎ・おこわ・漬物などの料理、あらゆる手仕事、家事を朝早くから夜遅くまで家事の"万能職人"と感嘆するしかない働きぶりが映し出されている。故・時枝俊江監督の映画『家事の記録』が事細かにスズさんの仕事を記録してあり、その映像も取り入れながら、戦災時の差し迫った臨場感を出す苦心などもして本作を大墻監督は完成させた。
私が生まれ育った下町の戦後の木造町家、商家でも共通した家事と家庭を支えた実母(昭和4年、1929年生まれ)のような専業主婦たちはざらだったったが、スズさんのようにあらゆることを手仕事でこなした時代よりは少し後で、すべてが映像としてDVD化されている記録映画『昭和の家事』は貴重で改めて永久保存版として見てみたい衝動に駆られる。スズさんと一家の人としての魅力も際立つ大墻作品で必見だ!
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