サンキュー、細谷圭
いつかこの日が来るとは、分かっていた。
千葉ロッテマリーンズに籍を置いたまま、独立リーグ・富山GRNサンダーバーズに野手総合コーチとして派遣されていたので。
熱く、篤実、オープンな漢。
野球の事、リーグの事、チームの事、選手の事、プレーの事を訊ねると、いつも真面目で真っ直ぐな答えが返ってきて、決してふざけたおちゃらけた言葉は言わない。
野球を離れるとギター好きで、釣り好きで、テキーラ好きで、真っ黒に日焼けした顔で笑みを見せる。
選手達に彼のことを訊ねると異口同音に
「細谷さんには感謝しています。」
「決して自分の考えを押し付けません。」
「個人的な事も相談に乗って頂き、人間的に尊敬させて頂いています。」
と声を揃える。
グランドでは練習前に吉岡雄二監督と共にホースを持って散水をし、選手一人一人に声を掛けながらノックバットを持ち、三塁コーチャーボックスでは選手達に準備の大切さを声とジェスチャーで伝える。
それまでサードの守備で華麗な美しいプレーを見せてくれていた瀧本駿選手が、公式戦にも関わらず、ある日突然ファーストにコンバートされた。
疑問に思った筆者はその事を細谷コーチに訊ねると
「選手の可能性を広げるのも、自分の仕事なので。」
と何も奇異な事では無いとサラリと言う。
吉岡雄二監督の東京ヤクルトスワローズバッティングコーチ就任に続き、富山GRNサンダーバーズにとってはかなりの痛手で自分の中では複雑な、悲しさと寂しさが交錯するが、きっと千葉ロッテマリーンズでも決して目立たない黒子の様な、それでいて大きな存在になる事と推知する。
細谷さん、いつもインタビューの最後に
「ボクの話より、選手が主役ですから、そちらもお願いします。」
と仰っていましたね。
だからいつかまた、富山GRNサンダーバーズの監督してお会いしましょう。あの選手を鼓舞する声が聞きたいので。
(写真は全て筆者撮影)