AIがコンテンツを書く日が来た?
今日また新しくユニコーン企業が誕生した。その名はGrammerlyだ。GrammarlyはWEB、メール、ワード、SNSなどで書き込んだ文章の文法、スペリング、ワードチョイス、スタイルなどの間違いを検知してくれるAIソフトウェアで、ブラウザーのエクステンションやアクセサリー的に利用出来る、なかなか良く出来たツールだ。
今日のニュースによるとGrammerlyは9,000万ドルをVCから調達した事により、彼らの起業価値は10億ドルを超えたとの事だ。私もこのGrammerlyにはいつも世話になっており、英語文を書く時は、ほぼケアレス(心配なく?)書くことが出来る非常に助かっているツールの1つである。彼らのビジネスモデルは良くあるフリミアム・モデルで、殆どの機能を無料で利用出来、多機能版に対して有料になるシステムだ。機能の詳細はブロガーのTachiさんが説明してくれているので、そちらを見て貰えれば、理解出来るかと思う。Grammarlyは本当に価値があるのか?
さてこのGrammerly、ユニコーン企業としての価値があるのかを検証してみたい。まずは彼らの歴史を見てみると、Grammerlyはサンフランシスコにあり、2009年7月に最初のリリースをした。それから時間はさかのぼり2017年にVC(General Catalyst and IVP, as well as Spark Capital)から1億1千万ドルを調達し、今回は2回目にあたるシリーズBの9千万ドルをVC(General Catalyst and IVP)から調達に成功した。
Grammerlyの発表を見ると、現在2千万人のDAU(デーリーアクティブユーザー)、そして2千人のビジネスユーザーがGrammerlyを利用しているとの事だ。実際の売上はGrammerlyはまだプライベート企業なので、公表はしていないが、2千の有料ビジネスユーザーからの収入がメインになると思われるので、1ユーザーの費用が平均$15/月だとすると、2,000 x $15 = $30,000 x 12ヶ月 = 36万ドルですね。そして今回受ける9千万ドルの使いみちは?との質問にCEOのBrad Hoover氏は新商品・サービスの開発に使用すると答えており、しかし彼らのLinkedInのプロファイルを見る限りでは現在200~500人の従業員と書かれているので、予想だが例えば350人前後はいると想定し、サンフランシスコで350人の従業員だと、年間の経費は少なく見積もっても5000万ドルは行くかと思われる。彼らの年間売上が現在40万ドル弱だとして、経費が5000万ドルとすると、年間最低でも49.6万ドルのバーンレート(経費)を費やしている事になり、今回の受けた9,000万ドルもほぼ今後の維持費に使われるものと思われる。
では通常この手のソフトウェア会社(マイクロソフトのようなOSやオフィス・ソフトではないソフトウェア開発会社)で、2千万人のDAUがおり、今後のプロジェクションをして、どれだけのユーザーが有料アカウントになるか、そして無料ユーザーに対して、広告モデルを展開するのか、ユーザー・データを他社へ再販するのか?等を考慮し、その企業の価値を算出をします。もし今回の投資により彼らがユニコーン企業になったと言う事であれば、現在持っている2千万人のユーザーに対して10億ドルの価値があるとするのなら、1ユーザーに対して50ドルの価値があると見ている事になる。この価格はある意味妥当な価格で、あのインスタグラムがFacebookに売却をした時に1,600万人のユーザーがおり、1ユーザーに対して$60の値段を付け、10億ドルで売却したと言われているので、それを正しく例を取ったかのような企業価値の算出の仕方なのかも知れない。
現実的に現在のビジネスモデルや収益でIPOを目標にしているわけではないと思いますので、VCが今回投資目的はIPOではなく、会社の売却をする準備に入ったと思っている。VCは企業投資をする際に常にエグジットを考慮し投資をします。もしその企業がIPOを目標にしていないとなると、あと考えられるのは企業のバイアウトです。VCが今回9000万ドルで投資した事により、10億ドルの価値を付けたかと思いますが、以前も述べたように、これは実際IPOをする前にアンダーライターが算出した計算方法でもありませんし、正直これはVCとGrammerlyが出した価値計算です。もし大企業がGrammerlyをバイアウトするとなると、もっとシビアな計算になり、もし実際にバイアウトをするとなると、もっと現実味のある計算方法となり、実際の企業価値はもしかするとこの10分の1も計算されない可能性は大なのかと思います。しかし将来の事は誰にも予想は出来ませんし、もしこのGrammerlyの価値を見出し、Grammerlyをほしい企業があれば、10億ドルを出してバイアウトする事もありえると思われます。これはその時の景気や、企業状況とその買収する企業にとり、どれだけ価値のある企業かによるんだと思われます。
そこでもしこのGrammerlyを買収するとしたら、どんな企業が買収するのかも少し考えて見ました。一番の最適企業はGoogleなのではと思われます。Grammerlyは既にChromeのエクステンションとしても多く使っているユーザーが多いでしょうし、Google Docsにも多く使われていると予想されます。なので、GoogleがGrammerlyを買収するのは非常に自然な流れだと思われます。その次に考えられるのはMicrosoftだと思われます。Microsoftはビジネスユーザーが多くいますし、Office関連でのGrammerlyの相性は非常にいいと思われます。MicrosoftがGrammerlyを買収する事で、多くのユーザーを確保するのも自然な流れだと思われます。そして番外的な企業で可能性があるとしたら、FacebookなどもこのGrammerlyの買収に興味があるかも知れません。Facebookは今どんどユーザー離れが起こっており、なんとかその離脱を防ぐ為に、今後ビジネスユーザーの確保が期待されています。なのでFacebookがGrammerlyを買収する事も十分あり得るのではないかと。
最後にGrammerlyを見て思うことは、今後この手のAIベースのソフトが増えてくる可能性を感じさせます。Grammerlyは主にスペルチェックや文法チェックに非常に長けていますが、今後もっと機能が発展して行けば、例えば、自分が何を書きたいのか(ジャンルや目的)、どのような書き方(論文系、記事系、ビジネス系)で書きたいのかを決めれば、どんどんサンプル文を提示し、筆者はただ、それを承認するだけ。もっと発達すれば、全文をAIが書いてくれる世界にまで行くのではないかと想像してしまいます。今でのEメールを書いていると、どんどんとAIが次の文章を予想して、表示してくれるので、そんなに遠い世界ではないのかなと思ったりします。
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