見出し画像

昨今のIPO事情

先日WeWorkがIPOを諦めた事に関して思う事。これは今回のWeWorkで始まった訳ではないと思うが、最近のUber, Slack, そしてPelotonにしろ、全てのIPOとは言わないが、最近IPOをした多くの企業が立て続けにIPO株の下落が止まらない。

まず企業はどうしてIPOをするかを考えたい。企業がIPOをする理由として答えは1つだけでなく、IPO裏舞台は非常に複雑だ。しかし明らかな理由をあげるとすると次の2つがあると思われる。1)資金調達と優秀な人材の確保が目的。2)莫大な利益を得るというロマン

1)資金調達と優秀な人材の確保が目的
これはIPOの正当な理由で、多くの企業はこれが大きな理由で、IPOを目指すと言っても過言ではない。
2)莫大な利益を得るというロマン
これも第1の理由と同じくらい大きな理由でIPOをする起業家が多いと思われる。投資家が未公開株企業に投資を行う時に起業家に対して、エグジット・プランは何か?と言う質問がされるが、通常その答えは大きく分けて2つあり、1つは大きな企業へ売却する。もう1つはIPOをして株の含み益で利益を得ると言う方法だ。

上記の理由はこの資本社会におき、当たり前の権利でもあり、1つのビジネス・トランザクションであると言えるが、しかし最近のIPOは上記で言う2)の莫大な利益を得る事があまりにも優先されすぎて1)の資金調達と優秀な人材の確保をする目的が後回しになっている為、最近のIPOが失敗している大きな理由になっているのではないかと思われる。もちろん投資家は投資をする以上、その見返りを求めるのは当たり前で、それが無ければ、投資をする意味もない事は明らかなのだが。しかしIPOをする段階で、その投資に対しての見返り計算方法が間違ってしまうと、今までの失敗に終わったIPOを見る限り、その要素が大きく関連しているのではないかと思わざるえない。

これはもちろん投資家だけの問題ではなく、起業家ももちろんその計算方法に大きく関わっており、例えば未公開株時にVCから受ける投資に対して、その企業価値(バリュエーション)を定めるのだが、起業家は自分の会社の価値を高くし、投資に対して可能な限り、自社の株をギブアップしなように、高く算出しようとする。しかしその計算方法が行き過ぎてしまうと、IPOをする時に、投資家は自分たちが投資をした額に対して、それなりの見返りを求める為に、IPO価格を高く設定しないと、あまり意味がないIPOになってしまう。しかしIPOをする時は当然、主幹事証券会社がその企業価値を査定する際に正当な市場価格を算出するのだが、当時投資家が算出した企業価値と主幹事証券会社が算出した企業価値が同等レベル(従来であればIPO時に利益を得るために市場価格よりも安く価格を付けIPO時に一般投資家がIPO価格よりも高い値を付けるのだが)であればいいのだが、最近のIPO企業は、投資家の算出した企業価値があまりにも市場価値よりも上だった場合、そのような状態でIPOを行った場合、IPO成敗に大きく影響してしまう。そこでゴリ押しでそのまま投資家が希望する間違ったIPO株価でIPOをしてしまうと、市場原理が働き、その価格は高すぎると判断されると、当然のごとく株価は下落してしまう。

本来であれば、未公開株時に市場価値に沿った計算で投資されていればいいのだが、人気のある企業や、俗に言うユニコーン・スタートアップ(1ビリオンクラブ)になると、回りの投資家からチヤホヤされ、市場価値計算がぶっとんでされる事になり、今回のWeWorkがいい例では、ないかと思われる。それでも市場の景気がいい時期やバブル時であれば、そんなIPOでも今までは成功する事もあったかも知れないが、最近の世界景気状況がだんだんと良くなくなって来ており、来年には米国経済がリセッション(不況)になると言われている状況で、一般投資家がシビアになっている状態でのIPOはほぼ成功すると思われない。

一般投資家はそれに気づき始め、株価に対して非常に厳しい判断をするようになって来ている。現状でIPOで成功を収めるには、その会社がどれだけ利益を出しているかが重要になって来ており、将来性よりも現実主義にシフトして行っている事は確かだと言える。多分この状態は来年一杯までは最低でも続くのではないかと思っており、来年の11月に行われる米国大統領戦が落ち着けば、今の経済トレンドも変わるのではないかと私は思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?