ワイバーンエレメント第一期戦役リプレイ 第3話「暴風、その名はルドラ」(後編)
敵空中艦隊の根拠地を探れ! 大竜母戦略ロケット軍は、ファーグニル艦隊の根拠地を特定するため、偵察衛星の打上げを試みる。空軍として護衛任務にあたるラウパナカ隊であったが、打上げ当日は、かつてない強力な敵戦闘機の出現が予想されていた……。
この大竜母が本隊に戻れるのはいつの日か。
前話「暴風、その名はルドラ」(前編)はこちら。
●実戦フェイズ
〈ラムリス32〉は、その日も、大竜母近傍空域の哨戒任務に就いていた。
巨大なレドームを背負った大型の顎刺類(がくしるい)飛竜である。強力なレーダーで、接近する脅威を早期に探知するのだ。
コバルトブルーに輝く多重鞘翅の下からは、数十対もの透明な推進翼が展開されており、高速で振動して、巨艦のような竜体を支えている。
複数の奏竜士が乗りこみ、広大な空域の警戒、そして戦闘飛竜の指揮を行う早期警戒管制竜なのである。
心臓部ともいえる管制騎竜ポッドは、〈ラムリス32〉体内深くにあった。戦闘飛竜のポッドとは異なり、複数の奏竜士が乗りこんでいる。
「電探、感あり。小型戦闘機クラス、3。方位34、高度4000、速力マッハ2、このままだと防空識別圏を超えます」
ほの暗い管制騎竜ポッドの中で、エンリルの管制官が告げる。
昆虫の頭部のような生体ヘッドマウント・ディスプレイを装備しており、その表情はうかがえない。
「やはり、このタイミングを狙ってきたか。北部方面軍にスクランブル要請。航空艦隊司令部に連絡、支援スキマーの出動を要請」
「艦隊司令部より返電。動かせる艦艇がないそうですが」
「なんでもいい、とにかく上げるよう言ってくれ。たった三機で突っ込んでくるとは……目標はただの戦闘機隊じゃない」
GM:じゃあ、いよいよ実戦フェイズを始めましょう。[戦友]追加はもうないですよね。[感情]の変更をしたい人は、ここから可能です。
クラシーグ:特にないかな。
GM:では各騎、「武装セッティング」をはじめてください。今回は全て対空目標です。護衛属性の目標はいません。
ラウパナカ:空中給油してもらえるし、〈タイヨウホウセンカ〉と〈ザワメキダイズ〉で[武装]2枠は決まりかな。
あとは、〈クマカブト〉と〈ジガバチ〉を2基ずつ。
三上Ⅲ:ラウパナカ隊長の意見を参考に、〈ゴマバチ〉二連装でいこう。
クラシーグ:〈ジガバチ改3〉を2基積んでおこう。それに、〈クマカブト〉を二基。
ラウパナカ隊各飛竜 今回の選択武装
ラウパナカ騎:
タイヨウホウセンカ(回避用フレア・チャフ)
ザワメキダイズ(生体電子妨害ポッド)
クマカブト×2(生体長射程対空ミサイル)
ジガバチ×2(生体短射程対空ミサイル)
三上Ⅲ騎:
ゴマバチ(連装式小型生体短射程対空ミサイル)×2セット
クラシーグ騎:
ジガバチ改3(ジガバチ誘導性能向上型)×2
クマカブト×2
GM:大丈夫そうでしょうか。そしたら進攻判定に移ります。
作戦室に、ラウパナカ飛行隊が呼ばれる。イダム百騎長が告げる。
「哨戒騎より、未知の戦闘機らしい機影が接近中との報告があった。偵察衛星〈天翼1〉の打上げ時刻が迫っているこのタイミングを狙ってくるとは、明らかに妨害任務だ。直ちに出撃し、敵機を迎撃せよ!」
ラウパナカ:「了解しました!」敬礼します。
三上Ⅲ:「さて、いよいよだな」
クラシーグ:「了解!」
飛行隊基地の作戦司令室では、正面中央にあるスクリーンに、天空を突き刺すかのような巨大な白い塔と、背景の山々の画像が投影されている。
大竜母の最上甲板――背びれ付近の山肌に建造されたロケット射場の三次元映像だ。
全高80mはあるだろう。巨大な宇宙ロケットだ。
発射塔に据えつけられたロケットは、白い蒸気をかすかにまとい、打上げ時刻を待っている。
立体映像の一角にウィンドウが開き、打上げ管制室の画像が割りこんだ。打上げ管制そのものは、空軍ではなく戦略ロケット軍の管轄だが、管轄にこだわっている場合ではなかった。
偵察衛星〈天翼1〉打上げの成否は、この大竜母の命運を左右する。
開いたウィンドウの背景では、多数の鯨鬼やコロガリの技術者たちが、打上げに向けて最終調整に入っている。
戦略ロケット軍から派遣されたらしい技術参謀のイルカ鯨鬼が、得意げにラウパナカたちに説明をはじめた。陸上環境で活動するためのアシストスーツ越しの合成音声が甲高く、無線ごしでも耳障りだ。
「キキッ。〈頂天1A〉は、わが大竜母戦略ロケット軍が初めて独力で開発した宇宙ロケットです。ロケットモータは液体酸素、液体水素の組み合わせで液体燃料を使用、第一段エンジンは到星22型を4基、二段式としました。中高度の極軌道に、およそ4000㎏までのペイロードを投入可能です……計算では」
三上Ⅲ:よくわからんが、こいつを守れ、ってことだな。
GM/鯨鬼参謀:「エンジンこそ原始的な構成ですが、人工知能を打上げ補助用に搭載し、管制・追跡システムは、我々の祖先が使っていた航宙艦の技術を応用してあります。とはいえ、我々が打ち上げるのは初めてで、……信じるしかありません」
クラシーグ:「信じます。守りきりましょう」
GM/鯨鬼参謀:「管制は我々に任せてください。敵機の迎撃は頼みます」と、ヒレで敬礼する。
GM/イダム:「ラウパナカ飛行隊、出撃!」
コロガリの養竜士たちが栄養液の中を泳いでいき、飛竜のエアインテイクの覆いや、ミサイルの安全ピンを次々に外していく。
ラウパナカたちが乗りこんだ騎竜ポッドが、竜の背部に挿入される。
出撃だ。
GM:竜母漿窟の蠕動運動で、きみたちの飛竜が投下薬室に移送され、目の前が明るくなる。
下方隔壁が開いた。
衝撃緩衝ゼリーが虚空に飛散すると同時に、君たちの飛竜は、眼下の雲海へと踊り出した。
騎首を上げ、エンジンに点火し、推力をミリタリーパワーに上昇させると、飛竜たちは力強く上空へと駆け上がっていく。
三騎の飛竜は、[進攻判定]をみごとに突破した。
戦場が近い。高度をとって、敵部隊との[エンゲージ]に移行する。
GM:レーダーに未確認機の反応がある。IFF、応答なし。戦闘機が3機。敵本隊だ。今までの敵機とは段違いの速度で、急速接近してくる。
三上Ⅲ:3機か……こっちと同じ数だな。
GM/鯨鬼参謀:「敵機が近づいてるそうですね。打上げまで30カウント、〈頂天1A〉補助エンジン、全基始動します」
今回は防衛ミッションという特殊な形式なので、敵部隊がステルス値、三上Ⅲが索敵値を使ってイニシアティブ判定を行った。
ラウパナカ騎の大型レドームによる索敵支援もあり、イニシアティブはラウパナカ隊がとった。
ラウパナカ:「うまく隠れているつもりのようですが、エルには丸見えですよ。先手を打ちましょう」
GM:クリティカルで敵影を補足。三騎のポッド内モニターに光点が映る。飛竜はデータリンクしているので、一騎では補足できない微弱なレーダー反射波でも、三騎分のデータを統合し、三角測量で精確な測距が可能なのだ。
クラシーグ:「確認した! 先に捕捉できれば……!」
GM:飛竜の戦術脳が応える。「データにない機影:新型機」
三上Ⅲ:「新型……だと……!?」
GM/管制官:「こちら早期警戒騎、ラムリス32。最新のデータを送るぞ、ラウパナカ隊長。そいつは敵の新鋭重戦闘機、NFH79〈ルドラ〉だ」
三上Ⅲ:〈ルドラ〉キターーーーー!!
GM/イダム:「敵は本気だな。それほどまでに偵察衛星を阻止したいのか。たのむぞ!」
クラシーグ:「新鋭機?」
三上Ⅲ:「くそっ! まさか、ルドラとは!」
GM/イダム:「ルドラは、各種ミサイルに、プラズマ砲、大口径4連装機関砲を装備しているとの情報がある。決して1対多数の格闘戦にまきこまれるな」
クラシーグ:やばいなあ。
ラウパナカ:「……いつも通りやりましょう。一機に火力を集中、敵の手数を減らします」
敵機のマーカー3つのうち、1つの色を変えて指示します。
GM/ミルランツェ:「クラシーグさん、わたしがいますよ! がんばって!」
ミルランツェの声。
下方に、重輸送スキマー(空中艦艇)が航行しているのが見える。
大型の飛行輸送艦で、多数の羽をもつ巨大昆虫のような船舶だ。「支援ポイント」というリソースを6点もっていて、これはいつでもPCが[竜キズナ]と同じように消費できるよ。
なお、スキマーも、攻撃を受ければ撃沈される可能性はあります。
▼重輸送スキマー(NPCミルランツェが乗艦)
保有支援ポイント6
耐久20
回避値10+1D
クラシーグ:「了解です! そうだ、相手が新鋭機でも、いつも通りにやるしかない」
GM:では、それぞれの最大高度にコマを配置ねがいます。(ルドラのコマを空戦マップに配置しつつ)
三上Ⅲ:ルドラ、高度たかいな。(編者注:つまり戦闘に利用できる位置エネルギーが多い)
GM:脅威度3なので。自分につかえるポイントが各機3あり、3回ずつ味方の支援が可能です。今回は防衛作戦なので、ちょっとその値が追加されています。
あと、今回から敵パイロット反応表を使ってみよう(笑)。(注:完成版の表とは異なる)
ラウパナカ:エースコンバットのように、敵機の無線がPLにだけ聞こえるんですね。
GM:それな。
三上Ⅲ:それは熱い!
GM:ではプロセス1、ラウパナカ隊から攻撃か行動をどうぞ。
ラウパナカ:さて、初手は三上Ⅲから支援してもらって、残り2騎でミサイル発射ですかね。
クラシーグ:そうだね、ルドラ同士の支援もあるとなると、とりあえず手数を消費させないと。
三上Ⅲ:了解。
クラシーグ:[トラウマ]RPをしておくかな。[トラウマ]1の方を使うよ。
三上Ⅲ:俺は、[高度]を3使って、クラシーグを支援する。[トラウマ]RPするなら、同時に《鼓舞の才》を使うぜ。
GM:三上Ⅲの飛竜は急降下して、敵機のレーダーに敢えて目立つように機動し、クラシーグの攻撃を助けた……!
三上Ⅲ:「クラシーグ、俺が囮になる。お前は当てろ! お前がエースだ。大事なものを、今度こそ守ってみせろ!」と、《鼓舞の才》のRPだ。
GM:相手の[トラウマ]内容をも踏まえた特技のRP、良いですねえ。なお攻撃への修正ボーナスは、最初の1発にしか加算されないのでご注意を。
さらに、クラシーグ騎は[高度]を4消費して、急降下。命中判定ボーナスを稼ぐ。
GM:攻撃判定どうぞ。
クラシーグ:「新鋭機……」レーダーに捕捉した光点を見て、過去を回想する。(ルドラは初めて聞いた名称だ、だが……)
「あの武装……もしかしたら、あの時のアイツがそうなのか?」
GM:おお、[トラウマ]からPCの過去を創っていて、いいですねえ。
クラシーグ:なすすべなく落とされる部隊の輸送騎、戦友の犠牲で助かった自身……その時、三上からの通信を聞いた。
三上Ⅲ:おお!
クラシーグ:「そうか……!」低空に居るスキマーを見やる。
「今は飛行隊の仲間もいる。今度こそ……守りぬいてみせる!」
GM/ミルランツェ:「もう、わたしは、わたしたちは、あの時とは違う! クラシーグさん!」
[トラウマ]RPはオッケーです!
クラシーグ:クマカブトを相手の3番機へロック。2発撃つよ。……達成値73!
三上Ⅲ:すごすぎる。ちょっと意味がわからない数字だな(笑)。
GM/敵パイロット:「くそ、全機、散開!」
敵機は急降下して回避しようとするが、さすがに回避しきれない。クラシーグは、2発同時発射の効果をダメージ増加に適用した。
GM:直撃! 命中の赤外線反応が、赤外線センサに映る。そこそこの損傷を与えたようだが、目標はまだ飛行している。
クラシーグ:まあ、敵リソースの消費はさせた。よしよし。
ラウパナカ:「追撃します」高度を2下げて、クマカブト2基を、3番機に斉射。
GM:長射程の甲虫型ミサイルが、青空の彼方へと吸い込まれていく。
ラウパナカ:斉射の効果はダメージに乗せます。
ラウパナカ騎のミサイルは、回避されてしまった!
GM:合計40で回避!
三上Ⅲ:え?
GM:では敵側のプロセスですね。
ラウパナカ:「……ミサイル、回避されました」
三上Ⅲ:まじかー。
ラウパナカ:でも敵側リソースは消費させましたし。
クラシーグ:「なんて運動性だ!」
敵パイロット/GM:「あの部隊、また上がってきたのね」
ラウパナカ:うーん、これは、戦闘終了まで耐える方針に絞った方がいいかな。
三上Ⅲに向け、ルドラから長射程ミサイルが2発、発射される。1斉射めの攻撃判定値は42と、かなり高い。回避しきれるか、三上Ⅲ。
三上Ⅲ:うーーーん(悩)。しゃあねえ、《超空戦機動》を使って回避するぜ。
GM:くっ! 良い使い方ですね(笑)。
三上Ⅲ:あと一発!
二発目のミサイルは、攻撃判定値30! 三上Ⅲは、つぎ込めるだけ、リソースを投入することにした。
三上Ⅲ:[トラウマ]「過同調で発狂しかけた」と、[願望]「レダと結婚したい」の2つを使用する。燃料を消費して、バーストブレスも噴射するぜ。ロールプレイは、そうだな……。
2発目がくる、そう感じた瞬間、脳裏にレダの笑顔が浮かんだ。
あの笑顔を、もう一度見たい。いつも怒っているように見えて、自分の飛竜の話になるととても寂しそうな顔をしていた、そんな表情が、たまらなく愛おしい。そんな彼女の顔を……。
「もう一度、見るんだよ!! ここで 死 ん で た ま る か ー ! 〈光芒〉! お前に預ける! 避けるぞ!!」
GM:良いですね、+2D、さらにバーストブレスで+1Dしてください。[竜キズナ]を1点、獲得していいですよ。今入手した分は、次から使用できます。
飛竜が排気ガスを再燃焼させ、長大な炎の尾を噴射。騎体が一気に加速する。バーストブレスだ。円状の衝撃蒸気雲が〈光芒〉の騎体から周囲に拡がる。
渾身のRPの結果、三上Ⅲは、敵ミサイルをみごとに回避した!
GM:2番機の攻撃です。クラシーグがロックオンされた。警報がポッド内に響く。
クラシーグ:「! 加速だ、〈シーラク〉!」
GM:達成値50で長射程ミサイルが飛んでくるよ。2発めは、達成値26。
三上Ⅲ:50!?(泡をふいてる)
クラシーグは、[竜キズナ]2点とバーストブレスを使用し、3Dを追加して回避を試みるが、達成値は34。このままではクリティカルで被弾してしまう!
クラシーグ:ぬう。
ラウパナカ:支援しますよー。「ダメ、あれじゃ振り切れない! エル、ECM作動!」
クラシーグ:ありがたい。今回はヤバいな。
ラウパナカの回避支援機動によって、クラシーグの回避達成値+23。1発めの敵ミサイルは、回避成功。
ラウパナカ騎のジャミングによって目標を見失ったミサイルは、あらぬ方角へと飛んでいく。
GM:すばらしい支援ですね。さすが早期警戒機。
クラシーグ:「逸れた……まだ2発目が!」
急降下し、クラシーグ騎は回避を試みるが、達成値は足りず。
が、被弾しかかったところを、三上Ⅲの回避支援により、なんとか回避に成功するのだった。
GM:回避した! クラシーグ騎のすぐそばを、ミサイルが超音速で駆け抜けていった。騎体が衝撃波に揺れる。
クラシーグ:「ぐうっ! こいつらは手強いぞ、持ってくれよ、〈シーラク〉」
GM:3番機の攻撃。「さっきはよくもやってくれたね!」
三上Ⅲの飛竜がロックオンされた! ミサイルが2発、急速接近!
三上Ⅲ:えーっと。ちょっとまってくれよ。これはもう、使いたくなかったが……あの[トラウマ]RPを使って、回避するしかないな。で、2発めは、バーストブレスを使って避ける。
ラウパナカ:回避支援しますよ。
三上Ⅲ:「俺は……、仲間を……友を喰ってまで、生きてきたんだ! ここで死ねるかっ!」という[トラウマ]RPをする。
昔、不時着して食料が無くなったとき、戦友の遺体を食らった……そのときの記憶が、思わず口をついて出る、そんな感じで。
GM:必死感がして、いいですねえ。
三上Ⅲ:みんなに俺の過去を知られちまうから、この[トラウマ]は使いたくなかったがな。背に腹はかえられない。
絶望的な戦況で、仲間に隠していた[トラウマ]をも吐き出し、回避機動の糧とする。良いRPである。
ラウパナカからの[竜キズナ]支援もあり、ぎりぎりで回避に成功する三上Ⅲ騎であった。
GM/管制官:「〈頂天1A〉発射まで、残り20カウント。耐えてくれ、ラウパナカ隊!」
ラウパナカ:「えっと……三上さん? いま言ってたことって……いえ、今は聞かないでおきます。生き残りましょう」
GM:比喩的表現にも聞こえますしね。
クラシーグ:「そうだね。あとで聞かせてもらうよ。そのためにも、生き残るぞ」
GM:命中したと見えたミサイルが、ラウパナカの電子妨害により、三上Ⅲをそれていった!
三上Ⅲ:「ラウパナカ隊長……助かった……」
GM/敵パイロット:「あれを回避するか! そろそろ本気を出すとしようか」
三上Ⅲ:バーストブレスを噴射して、2発めを避ける。(判定して)避けた!
GM:長大な噴射炎が〈光芒〉の推力偏向ノズルから吐き出され、騎体が加速する。ミサイルを回避した。
三上Ⅲ:でももう、俺には使えるリソースが残ってないぜ(汗)。
GM:これで敵飛行隊は撃ち終わり。6発の長射程ミサイルが全てよけられるとは!
ラウパナカ:この後が問題なんですよ……。
GM:敵味方、双方が接近。プロセス2に移行します。ラウパナカ隊の行動からどうぞ。
ラウパナカ:上昇ですね。[高度]5になりました。
三上Ⅲ:上昇する。[高度]5だ。
クラシーグ:上昇で。[高度]7に上がった。
GM:この、部隊が息継ぎをする感。
『ワイバーンエレメント』では、攻撃だけではなく、適切なタイミングで[高度]を回復するのも重要である。
慣れた飛行隊であれば、[高度]回復タイミングと各騎の攻撃プロセスを考慮に入れて、飛行隊全体の武装セッティングを考えることすらある。
飛行隊全体を、いわば一個の戦力パッケージして設計するのが、武装セッティングの目的ともいえる。
そのようにして、作戦目的を達成するために複数種の飛竜で構成された飛行隊を、ストライク・パッケージと呼ぶ。
GM:では、敵飛行隊の行動ですね。
ラウパナカ:悪夢のプロセス3が……。
三上Ⅲ:……幕を開ける。
GM:スキマーにも支援ポイントが6点まるまる残っているので、頑張って!(笑)
ラウパナカ:正直、敵を倒すんじゃなく、耐えきるのを目指した方がいい気がします。
クラシーグ:だね。
三上Ⅲ:同感だ。
クラシーグ:うむ、物語の中盤らしくなってきた。いいな。
GM:プロセス3は、視認距離だ。おたがい、目に見える距離に入った。
超音速で交錯する、6つの超音速飛翔体たち。
一瞬の騎体のきらめきと衝撃波の中に、ラウパナカたちは敵の姿を見た。全騎が急速旋回し、互いに敵機の後ろを取りあうドッグファイトに入る。
ラウパナカ:三上さんのゴマバチと、私のジガバチを、敵3番機に撃ちましょう。
GM:敵の隊長騎は、真紅に塗られた重武装の前進翼戦闘機、つづく2騎も、真っ黒の同型騎だ。
三上Ⅲ:俺は《超音速巡航》でミサイルダメージの増加を狙う。奴らに当たればだが……!
GM:このゲーム、全般にリソースは出し惜しみしないほうがいい気が。
クラシーグ:長期戦は不利だしね。
GM/敵パイロット:「へえ、緑の竜翼エンリル。面白いペイントね」と、昆虫の頭に似たHMD(ヘッドマウント・ディスプレイ)と酸素マスクの下で、女パイロットの口元に不敵な笑みが浮かぶ。
ラウパナカ:「短射程ミサイルは熱源探知式、ここからはECMは使えません、気を付けて!」データ的には変わらないわけですが。
GM:かっこいいRPですね!
クラシーグ:「間違いない。あの機体形状は……あの時のアイツか!」
前進翼の敵影を見て。
GM:いいですね! ではそういうことにしましょう(笑)。
ミルランツェが無線で言うよ。
「あの真っ赤な隊長機……わたしとクラシーグさんの部隊を全滅させた、あの飛行隊!」
ラウパナカ隊は、敵3番機を集中攻撃することにした。他の機体に回避支援をさせて、敵部隊のリソースを減らす作戦だ。
三上Ⅲ:3番機狙いでゴマバチを撃つ。2回判定するんだよな、今回は命中精度アップの効果を使おう。
ゴマバチは小型の連装生体ミサイルだ。連続発射が可能であり、1基装備するだけで「同一武装の複数搭載」効果を発動させられる。
三上Ⅲの発射した小型ミサイルはしかし、あと一息というところで、敵機に回避されてしまった。
GM/敵パイロット:「危なかった。あの飛竜、なかなかやる」
クラシーグ:おお。
ラウパナカ:ううん。
GM:見たかんじ、3番機は主翼が3分の1ぐらい破損していて、かなりの損傷のようだ。
三上Ⅲ:高度消費させられなかった……。「くそっ! なんてやつらだ!」
ラウパナカ騎は、[高度]1を消費して3番機にジガバチを撃ちこんだ。ほかのリソースは全て回避に使用するため、攻撃には他のリソースは投入しない。
複数武装の効果は「命中精度の向上」を狙ったものの、良い方の出目を採用しても、ミサイルはすべて回避されてしまった。
三上Ⅲ:ルドラの絶望感、すごいな。
クラシーグ:手強いね。
ラウパナカ:「残念だけど、この機体の撃墜は困難です、回避優先!」
三上Ⅲ:「悔しいが、そうしたほうがよさそうだな!」
クラシーグ:「そう……だね」
三上Ⅲ:この作戦の目的は、敵機の撃墜じゃない。ロケット発射を守りきることだ。
ラウパナカ:時間稼ぎしても勝ちなら、編隊長としては、僚機が墜とされるリスクを回避することを優先します。
戦闘に熱くなりすぎず、冷静に作戦目標にかんがみて戦術を決めることは『ワイバーンエレメント』では重要である。
セッション冒頭でGMから示される作戦目標は、ことあるごとに読み直した方がよい。
GM:では、ルドラ編隊の行動です。
クラシーグ:スキマーは早々に離脱して貰いたいところだが。
ラウパナカ:ここからは回避支援にスキマーの支援ポイントを使いましょうか。
同時刻。大竜母最上甲板層のロケット打上げ射場では……。
GM/管制官1:「機体データ取得、異常なし。〈頂天1A〉機体AIからの回答は……、ゴー! 打上げ承認!」
打ち上げ管制室の大スクリーンの中で、各セクションからの承認シンボルが次々に灯っていく。
GM/管制官2:「打上げプロセス、最終シークエンスに移行! アンビリカル・ケーブル切り離し、メインエンジン点火! 残り10カウント! 9、8、7、……」
GM/鯨鬼参謀:「たのむ、頼みますよ……!」
もうもうたる真っ白な蒸気が、ロケットと発射台の周囲に爆発的に吹きあがる。
第一段ロケットのメインエンジンが、轟音とともに噴射炎を吐きだす。今にも空に駆け上がりそうだ。
「もう少し、あと少しだけ、敵を抑えてくれ、ラウパナカ隊……!」
鯨鬼属やコロガリ属の管制官が、モニター内のロケットを見つめながら、祈るように。あるいは、呻くように。つぶやく。
* * *
NFH79〈ルドラ〉は、ファーグニル重工ナーガローカ3支社技術部門の自信作であった。
どこの星系でも使えるような、汎用性の高い量産型の機体ではない。
ナーガローカ3の手ごわい飛竜を撃墜するために特別に開発され、エンジン、コンピュータ・システム、機体設計、武装……。
全ての要素が、この惑星の環境に最適化された機体である。
ファーグニル空軍機とはいえ、最新型ともなると、有機的で流麗な機体外形だ。
推力偏向ノズルが、独自の意思をもった生物のように個別に動き、ジェット排気を旧式機ではありえない方向に指向させる。
同時に、機体各部のCCVベーンやカナード翼も自律制御で蠢き、近距離格闘戦でも、飛竜に負けず劣らずの運動性を発揮する。
ルドラが、みごとな機動で、三上Ⅲ騎の背後をとる。
絶好の射撃位置だ。
三上Ⅲ騎の騎竜ポッド内モニターに、ロックオン警告表示が明滅する。同時に、聴覚神経に、飛竜の鋭い鳴き声が直接響く。
いますぐ回避しろ、飛竜がそう告げている。
GM:三上Ⅲ騎がロックされた! 真紅の隊長騎が、君の真後ろに食らいついて、離れない!
三上Ⅲ:「愛されてるねえ!!」(やけくそ)
GM/敵パイロット:「見え見えの回避機動ね」判定値33で短射程ミサイル発射、24で同じくミサイル発射。
三上Ⅲ:ふう……。少し考えますのでお待ちを(編者注:PLは、敵機の攻撃値の高さにショックを受けたらしい)。
GM:あ、まだ隊長騎の攻撃は続くよ。連装プラズマ砲を射撃。32で1発目のプラズマ光弾が、2発目が24で飛来する!
ラウパナカ:全部撃ってくるのか……。
GM:これでもまだ終わってません。
ラウパナカ:ヒエッ。
GM:続けて、30ミリ機関砲を射撃。達成値24で4回、連射してくる。「墜ちなさい」
ラウパナカ:どんだけ撃ってくるんですか……。
クラシーグ:武装数があると強い。
ラウパナカ:PC側はこんなに撃てないんだよな……。
三上Ⅲ:えーと。つまり俺は、6回、回避しなきゃなんねえってことか?
ラウパナカ:8回です。それぞれ敵機の達成値は、33、24、32、24、24、24、24、24。
ルールブック掲載の戦闘機では最強といわれるルドラには、制作当時、迂闊十臓さんから頂いたイラストと機体の設定があまりにかっこよかったので、バランス調整という概念を排除し、設定をそのままデータ化したという逸話がある(ゑッ!?)。
ラウパナカ:とりあえずがんばって回避して、スキマーにも支援をがんばってもらいましょう!
三上Ⅲ:三上のチキチキ回避大作戦、イクゾーー!!
GM:(笑)。
クラシーグ:正念場だね(笑)。
三上Ⅲ自身での回避判定の結果、ミサイル2基、プラズマ弾1発を回避した。機関砲弾は、2連射のみ回避できた。このままだと、プラズマ弾1発、機関砲弾3発を被弾することになるが……。
GM:けっこう回避してない?
三上Ⅲ:くそ! 機銃を3発くらった。
GM:いや、すごい頑張ってますよ。
クラシーグ:そうだね、支援を入れれば回避できる可能性はまだある。
GM:斉射されたミサイル、高熱プラズマ弾、30ミリ機関砲の連射! 戦車1個中隊を消滅させられる火力を、三上Ⅲは回避せんとする!
ラウパナカ隊長が自身の[竜キズナ]を使い、プラズマ弾の回避支援を行う。
三上Ⅲ:圧倒的感謝!
GM:ラウパナカ騎の支援機動で、三上Ⅲは、プラズマ弾をぎりぎりで回避。雲海に着弾した高電圧プラズマの塊が、大爆発を起こす。
三上Ⅲ:のこりの機関砲弾は、ダメージはさほどでもないだろう。1発くらい、ミルランツェの支援ポイントを使って回避しておこう。
残り2発は、あえて装甲で受け止める。
GM/ミルランツェ:「よけてください! クラシーグさんのためにも!」と、ミルランツェの乗った飛行艦が、派手に花火のような多重フレアを、三上Ⅲのまわりに打ちあげる。
フレアに突っ込んでいったミサイルが自爆した!
機関砲弾2発のダメージを計算したところ、合計9点もの最終ダメージを受けた。飛竜は大量に出血、甲殻の破片が虚空に飛び散る。半壊状態である。
GM:ズブオオオーム、という巨獣の咆吼のような音とともに、大量の機関砲弾が三上Ⅲを襲う(連射速度が速すぎて1発ずつの発射音が聞き分けられない効果音)。
三上Ⅲ:痛ぇ!
GM/敵パイロット:「へえ、これで墜ちない敵は、初めてよ。緑のエンリルの紋章騎、おもしろいわねえ」
三上Ⅲ:「くそぅ! まだだ、まだ墜ちてたまるか!」
GM:さて、隊長騎がはりついているから、さすがに次の攻撃は、ほかの騎体に行くかな。
三上Ⅲ:「〈光芒〉! まだ俺たちはやれる! やってやるぞ!」
クラシーグ騎に、ルドラの弾幕が集中する! ミサイル、プラズマ弾、30ミリ機関砲弾が炎の奔流となって、甲冑魚のような飛竜の胴体に殺到していく。
クラシーグ:きついぞ(笑)。
GM/ミルランツェ:「クラシーグさん! クラシーグさああああああああああん!!」
ラウパナカ:「わめかないで! 支援します、落ち着いて回避を!」
クラシーグ:「くそっ! 避けきってみせる!」
GM/ミルランツェ:「はっ……。そうですね、わたしは、わたしの騎体で出来ることをやります。ありがとう、ラウパナカ隊長」
クラシーグ:では、ミルランツェのスキマーから、支援ポイントを1点、貰おうかな。
GM/ミルランツェ:「この発熱弾が、わたしの愛です!!」艦から、フレアを射出してミサイルの誘導を狂わせるぞ。
GM:DiceBot : (1D10) → 1
GM:思ったより、愛が少ない(笑)。
ラウパナカ:ダメだこりゃ(笑)。
三上Ⅲ:ミルランツェぇぇ!!!
ラウパナカ:ではラウパナカから[竜キズナ]2点を消費して、回避支援します。
ラウパナカ:(2D10) → 11[2,9] → 11
三上Ⅲ:ラウパナカの愛、強いな!!(笑)
クラシーグ:おおう(笑)。
GM:支援機動やフレアで愛情を互いに示すとは……。新しい。
ラウパナカ隊長の回避支援に加えて、クラシーグは、燃料再噴射を飛竜に指示した。バーストブレスだ。
莫大な燃料を消費し、エンジン推力が一気に上昇する!
GM:ここが戦場であることを忘れさせるほど、光り輝く無数の発熱弾が四方に撃ちだされる様は、美しい。
クラシーグの天到戦鰭が加速し、極超音速に達した。真っ白い衝撃波の雲を、飛竜がまとう。
さらにラウパナカとミルランツェの支援を受けて、クラシーグ騎は、膨大な弾幕を回避しきった! だが……。
クラシーグ:ありがとう……!
ラウパナカ:キズナ1点と高度2を消費して回避支援。これで[竜キズナ]が0になったので、暴走判定します。
クラシーグ:おおう。
三上Ⅲ:なんと!
GM:暴走判定、きたか。そこまでして部下を守ろうという、素敵なRPですね。
三上Ⅲ:「ラウパナカ隊長……! 身を挺してクラシーグを守ったのか……!」
GM/敵パイロット:「あのロケットみたいな竜……、なんて加速だ! それにあの、濃密な防御弾幕と、僚騎の支援マニューバ!」
GM:あれほどの攻撃を回避するとは、信じられない光景ですよこれは(笑)。
ラウパナカ:「ぐ、ぅ……これ、あのときと似て……!」
過剰同調の時に感じた異常な感覚が脳に流れこんできて、呻きます。
GM/敵パイロット:「第65……戦闘飛行隊か。尾翼に、緑の少年エンリルのマーク……」
三上Ⅲ:ルドラ3機に襲われてなんとか生き残っているわけだからな。大したもんだと思うぜ、俺たち。
GM:ルドラ03は行動済みなので、ラウパナカの暴走判定だけ処理したら、次のプロセスに移ります。
三上Ⅲ:「ラウパナカ隊長! 編隊長!! 返事をしてくれ! 大丈夫か?!」
ラウパナカ:「あ、ああ、あ、だめ、だめ……帰らなくちゃ、ここでまた飲まれるのは……」と、虚ろな目で呻く。
という[トラウマ]RPによる修正を加えて、暴走判定をします。
[竜キズナ]を0になるまで使ってしまったら、飛竜と奏竜士の神経同調バランスが崩れ、飛竜が暴走する可能性があるのだ。
目標値20とかなり高めの判定だが、ぎりぎりで、ラウパナカは判定を成功させた。[トラウマ]RPによる修正がなければ、失敗していただろう。
ラウパナカ:「あ、あぁ……ふぅー……」
三上Ⅲ:助けようと思ったが、切りぬけたみたいだな。
クラシーグ:「隊長! 大丈夫ですか!」
ラウパナカ:「……大丈夫、です。なんとか戻ってこられました」
GM/ミルランツェ:「クラシーグさん……! やっぱりあなたは一番だわ……」
スキマーが昆虫めいた翼を幾重にも翻し、戦闘空域を離脱していく。これで、敵機の攻撃対象から外れる。では、プロセス4を始めよう。
一方、ロケット射場では。
大竜母の背を覆いつくさんばかりに広がった白煙が、積乱雲のように空に立ち上がり、それを内側から裂くように。
巨大なまばゆい炎の尾を吐きながら、白銀の塔が、ゆっくりと巨体をもちあげんとしていた。機体にこびりついていた氷が、吹雪となって舞い散っていく。
万の雷鳴を束にしたような強烈な噴射音が、大竜母の下層甲板にある町々までも揺るがした。
衝撃波が、大竜母最上甲板層の草原を走りぬけていく。
中層甲板区の住人たちだけでなく、下層甲板区の貧民や野生生物までもが、甲板区の天井を……その向こうにある天空を、見上げていた。
ロケット〈頂天1A〉のエンジンが放つ轟音は、これまで、この大竜母のどの住人も聞いたことのない音だった。
星々の世界への扉を切り開く、力強い英知の咆哮だ。
GM/管制官:「リフトオフ! 〈頂天1A〉、いま離床した! メインエンジン、全系統異常なし!」
GM/鯨鬼参謀:「聞こえるか、ラウパナカ隊! 我々のロケットが、離床した!」
ラウパナカ:「こちらも大丈夫です、はい」疲れた様子ですが。
クラシーグ:これはアレだね、無理に落とさないで、もうプロセス5は省略してもいいかも。
三上Ⅲ:そうするか。
ラウパナカ:ロケットが大気圏外に行けば、相手も何もできませんしね。
GM/ロケット整備兵のコロガリたち:「飛んでいったぞ」
「みろよ、あの爆発……ラウパナカ隊が、あそこで、守ってくれてるんだ」
クラシーグ:うむ。今回は強敵が出てヤバくなったので満足。
GM:すさまじい轟音とともに、白い噴射煙が、青空に駆け上がっていく。
三上Ⅲ:「なんとか守りきったか……」
クラシーグ:「打ちあがったか!」打ちあがってゆくロケットを羨望の目で見る。
GM/管制官:「高度6000、9000、10000……第一段切り離し、第二段エンジン点火、燃焼正常!」
激しい編隊空戦のはるか後方、巨大な積乱雲よりもなお高く、真っ白な噴射炎が、蒼穹の彼方へ伸びていく。
GM/敵パイロットたち:「しまった、間に合わなかったッ!!」
「こいつら、ここまでわたしたちを……!」
GM:じゃあ、プロセス4、スキマーもいないので、ルドラ編隊は撤退のかまえです。追撃しますか?
クラシーグ:いや、目的は達成した。追撃はしないで帰投するよ。
「……今は無理、か。宇宙に上がるのも。あいつらを落とすのも……」
ラウパナカ:「いつかは……きっとできます。いつかは」
GM/敵隊長騎:「作戦失敗よ。ただちに離脱。クァール03の損傷が大きい、このままでは危険だわ」
三上Ⅲ:「ああ……。だが、俺らには次がある」
GM/クァール03:「覚えておくよ……あのエンブレム」
クラシーグ:「はい。次は倒してみせます。あのファーグニル飛行隊を」
GM/管制官1:「第二段エンジン、燃焼終了。フェアリング切り離し。〈天翼1号〉、射出されました。軌道上を航行中」
GM/管制官2:「衛星からの信号を確認! 打上げ成功です! やったな、ラウパナカ隊!」
三上Ⅲ:「おめでとう! そちらの努力に最大限の賞賛を!」
GM:ということで、[エンゲージ]終了、作戦成功です。すばらしいですね。
ラウパナカ:「……こちらラウパナカ隊、敵機の撤退を確認。これより帰投します」
GM:君たちが大竜母の基地に戻ると、イダムが出迎えてくれる。
「よくやってくれた。君たちの働きは、戦史に残るだろう。見事な連携だった」
クラシーグ:「無理をさせたな。〈シーラク〉。次はあいつらに勝とう」
GM:さて実戦フェイズは終了、簡単にエンディングをやりましょう。なにかご希望の場面があれば、演出しますよ。
ラウパナカ:「本当に無理をさせちゃったね……ありがと、エル」
三上Ⅲ:「〈光芒〉……どうやら女神さんもお待ちのようだぞ。はは、生き残った甲斐があるな……そう……生き残ったな」
トラウマがばれたことを思いだして、後悔しつつ。
GM:夕陽をあびて、三騎の飛竜は、大竜母へと帰ってゆくのだった。
ラウパナカ:ふぅー。本当に落ちるかと思いました。
三上Ⅲ:ルドラ戦の絶望感ぱなかった。
クラシーグ:うむ。ヤバかったね。
GM:(笑)。
ラウパナカ:回避にほとんどリソースを振り向けてアレだもの。
クラシーグ:ですねえ。まさに壁となる敵と対峙だったので、物語的には実によかったよ。
三上Ⅲ:この恐怖感、凄いな。
GM:戦略的な観点から作戦を成功に導けたのは、PLのみなさん、おみごととしか言い様がないですねえ。
三上Ⅲ:ラウさんの判断の賜物だな。
ラウパナカ:いぇーい。
GM:お疲れ様でした! 今回もご参加ありがとうございました。
三上Ⅲ:流石、編隊長!
ラウパナカ:お疲れ様でしたー。
クラシーグ:うむ。隊長、良い判断だったね。お疲れ様ー。
ラウパナカ:でも私の[竜キズナ]で全部、回避させたわけじゃないですからね。皆さんが自力で回避してくれたから間に合ったのです。
GM:色々なリソースを、皆さんそれぞれ、適確に使っていたとおもいますよ。
三上Ⅲ:それにしても、俺はなぜか敵に狙われやすいな。
GM:ランダムですけどねえ。GMが判断して狙ってもいいんですが、実際の戦争でも、たまたま索敵機が見つけられなかったとかソナーの反射レイヤーが、とかで意外と適確な目標を選んでなかったりしますので。当分はランダムでロックオンかなと。
三上Ⅲ:出目ならちかたないね。今回、訓練フェイズを2週してなかったらやばかったな。
GM:三上Ⅲもかなり避けてましたしね。そしてレドームも活かしたラウパナカさん、暴走判定も演出としても良かったですね(笑)。最後にちょっとだけ、やりたい場面があるので、それで終わりとしますか。
一同:はーい。
GM:戦いからしばらくして、また同じように、士官食堂できみたちが食事をとっていると、ミルランツェが食器をもって、クラシーグの隣に座る。
GM/ミルランツェ:「あの……クラシーグさん、それからラウパナカ隊のみなさん。わたし、一緒に戦えて良かったです。あの時、三上さんたちが言っていたこと、少しわかった気がします」と、君たちにはにかみながら言うんだな。
輸送部隊の兵たちがミルランツェの周りにやってくる。
「ミルランツェ、午後からまた第二格納庫で整備訓練よ、よろしくね」
友達らしい兵たちがクラシーグたちをみて、「おっ、ラウパナカ隊と知り合いなのか、すごいな、ミル」とか、はやしたてている。
どうやら、部隊の人々にも、ミルランツェは認められたらしい。
ラウパナカ:「もう、あの子は大丈夫そうですね」
クラシーグ:「そうですね。打ち解けられたようで良かった」
三上Ⅲ:「ああ、良かった……。なあ、クラシーグ」
クラシーグ:「どうしました、三上さん?」
GM:ふむふむ。
三上Ⅲ:「過去に何かあったとしても……今を生きる姿が大事だよな。すまない、俺は過去のことをまだ話してなかったよな」
GM:お。
ラウパナカ:「もしかして、あのときの」
三上Ⅲ:「あの戦いの最中に聞いただろ……俺の叫びを。すまない」
クラシーグ:「……あ。」と、聞いた叫びを思いだす。
三上Ⅲ:「俺は昔、死にかけた時に、相棒を文字通り犠牲にしたんだ。許されないことだと思う。それを日々贖罪しているつもりだ。編隊を組んでいるのに……隠してすまない」
GM:なるほどここでそのトラウマを。いいタイミングかもしれませんね。
三上Ⅲ:「こんな時に言うべきじゃなかったかもしれないが……タイミングがつかめずにな……すまん」
ラウパナカ:「……。よく、話してくれたと、思います。」
クラシーグ:「……」
三上Ⅲ:「ラウパナカ隊長……」
ラウパナカ:「もちろん、大っぴらにはとてもできない内容ですけど。それでも私たちにだから、話してくれたんですよね」
クラシーグ:「過去に何があっても、今の三上さんに助けられていることに、変わりません」
三上Ⅲ:「あ、ああ……本当に……すま……。あ、ありがとう」泣いてます。
ラウパナカ:「……そこで見捨てるなんて私にはできませんよ。……ただ……」
クラシーグ:「話してくれて有難うございます」
ラウパナカ:「食事中に言うのは、どうなんですかね」(目逸らし)
GM:(笑)。
三上Ⅲ:「本当に……申し分けない」
クラシーグ:「まあまあ、そういうコトもありますよ」
GM:イダム百騎長が、通りかかって柱の陰から君たちをそっと見ている。
三上Ⅲ:イダムさーん?
GM/イダム:「……三上Ⅲも、羽根ナシだから最初はこの編成はどうかと思ったが……うまくやってくれているようだな……」と呟いて、司令室へと戻るのだった。
というところで、今回は終了としましょうか。
ラウパナカ:はーい。
三上Ⅲ:はーい。
クラシーグ:はーい、お疲れ様です。
GM:おつかれさまでした、ありがとうございました。なかなかの激戦でした。もう遅いので、成長処理はまた明日の夜にでもここでやってもいいですが……。今処理しますか?
三上Ⅲ:結果的に、各キャラをもの凄く掘り下げる回になりましたね。
GM:キャンペーンならではで、GMも楽しかったです。
ラウパナカ:いい第三話でした……。
GM:メイティに結果だけ書いてても、問題はないです。
クラシーグ:そですね、夜にでも顔出せましたら。まあ、方針としては体力伸ばしかな、うん。
GM:ではおちます~、おやすみなさい。
最強の敵部隊に遭遇したラウパナカ隊であったが、辛くも作戦目的は達成した。はたして偵察衛星の情報は、この大竜母の防衛に役立つのか。
そして、漂流の日々が、終わりを迎える時は来るのだろうか。
ユグドラシル戦役第3話「暴風、その名はルドラ」 終わり
第4話へ続く
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?