day21―Facebookはいかにして政治的価値判断を変えるか
長らく更新が途絶えていました。3日坊主になってしまったわけではなく、卒論が忙しくて本当に手が回りませんでした。これからはまた更新していくつもりですので、よろしくお願いいたします!今回の論文は新年にふさわしく新分野です!
Bond, R. M., Fariss, C. J., Jones, J. J., Kramer, A. D., Marlow, C., Settle, J. E., & Fowler, J. H. (2012). A 61-million-person experiment in social influence and political mobilization. Nature, 489(7415), 295.
Facebookを使った大規模実験。タイムラインで選挙に行くことを促すと、それにつられて行く人が一定数いる。
背景
宣伝が選挙に及ぼす影響は、社会学において長年検証されてきた。しかしSNSが選挙に及ぼす影響は、大規模に検証されてこなかった。
方法
2010年時点で18歳以上のアメリカ国籍を持つ6100万人!のFacebookアカウントを使用し、3つのグループでアメリカ議員選挙の投票状況を比較した。ソーシャルメッセージグループには、フィードに「今日は選挙日です」という案内を表示した。この案内には、「近くの投票所を探す」ボタンと「私は投票しました」ボタンがついていた。さらに、「私は投票しました」ボタンを既に押した友達一覧も表示された。情報メッセージグループには、ソーシャルメッセージグループと同じ内容を表示したが、既に押した友達一覧は表示されなかった。
結果
ソーシャルメッセージグループは、情報メッセージグループより2.08%、「私は投票しました」ボタンを押す割合が高かった(20.04%のユーザがクリック)。実際の投票状況とコントロールグループ結果も考慮すると、ソーシャルメッセージグループは0.39%、コントロールグループより投票率が高かった。
この結果から、Facebookが選挙全体に及ぼす影響を推測した。Facebookにおける友達を、メッセージのやりとりなどから親しい友達(7%)と、知人に分類(93%)。フィードに案内を載せることで、選挙における投票数を886,000票プラスすることができた。そのうち559,000票は、親しい友達からの影響と考えられた。すなわち、親しい友達の影響は知人の4倍に及ぶ。
考察
SNSは得票数を上げる。その影響は特に親しい友達から受けるが、そうでない友達の影響も無視できない。親しい友達からの影響については、Facebookのメッセージだけでなく直に会ったときの影響などもあるためSNSからの分析には限界がある。しかし今後はこのような大規模調査がより容易にできる時代がやってくるはずである!
所感
選挙行動だけでなく、様々な大規模SNS調査のモデルになるような実験だと感じた。実際、被引用数が1533(2019/01/14時点)というとんでもない論文である。
今回の実験は、SNSが選挙に及ぼす影響を調べた画期的論文といえる。特に親しい友達から影響を受けやすいというのは予想通りではあるが、そうでない、いわゆる知人からの影響も受けるというのは興味深い。この結果は、論文の公表から数年後の大統領選において、某国の介入で結果が変わってしまったのではないかという疑惑がなぜ起こるのかを説明していると思う。実際、この論文を見て納得してしまった。影響を受けるのが例え1%でも、トータルで見ると膨大な数に及ぶのだからSNSの影響力は油断ならない。
さらに、今回の実験はあくまで「今日は選挙日です」という当たり障りのない内容だが、これが特定の思想に偏っていたり、企業の広告だったりした場合はどうなるか。例え1%しか結果が変わらなくても、その影響は計り知れない。
最近データサイエンス分野に興味があり、定期的に今回のような論文を紹介していきたいと思います。
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