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day24―なぜ私たちはSNSの画像にフィルターをかけるのか

今回は趣味の内容。

Bakhshi, S., Shamma, D. A., Kennedy, L., & Gilbert, E. (2015, April). Why We Filter Our Photos and How It Impacts Engagement. In ICWSM (pp. 12-21).

一言で言えば、画像にフィルターをかけることは本当に「インスタ映え」なのか調べた論文。

背景

SNSの普及により、多くの人が画像をシェアするようになった。投稿の際、画像にフィルターをかけることは一般的になっている。露出(明るさ)を変えたり、ちょっとビンテージ風にしたり、白黒にしたり。人々はなぜフィルターをかけたがるのか。そしてフィルターをかけることは、「いいね」の獲得につながるのか。調べることにする。

実験1

まず、インタビュー調査によって投稿者がなぜフィルターをかけるか明らかにした。
結果、2つのパターンが見えた。シリアスフォトグラファーと、カジュアルフォトグラファーである。
シリアスフォトグラファーはあくまでちょっとだけ編集し、画像を「修正」する目的でフィルターを使う。
一方のカジュアルフォトグラファーは、よりオリジナリティが増し、シェアが増えるようにフィルターを使う。
どちらにせよ、より写真を美しくし、vintageな印象を与え、オブジェクトを強調し、色を調整し、より楽しく(more fun)、ユニークにするため、フィルターを加える。

実験2

次に、Flickerにあがった760万枚の画像から傾向を分析。
フィルターをかけることで、21%ビューを増やすことができ、コメントをもらえる確率を45%増やすことができる。
さらにフィルターは、より温かみのある色味で、より高いコントラストであるほどビューとコメントを稼ぐことができる。
これは直感的にわかることだが、そもそもフォロワーが多いとコメントはたくさんもらえる。興味深いことに、より長く投稿している人ほどコメントをもらいにくい。

所感

この知見、そのままインスタグラム投稿に活かせそう。
少し評論的な意見を言うと、Instagramなどは「いいね」を稼ぐことこそが正義であり、その意味でシリアスに美的感覚を追い求めるというスタンスそのものが古くなりつつある。すなわち「いいね」されるものこそが美しく、素晴らしいという感覚に変わりつつある気がする。これは「インスタ映え」という言葉が現れたことではっきりしている。特にInstagramなどが若い世代をターゲットにしていることを考えると、その感覚は若い世代に対して新しい価値観、さらには文化を形成する土台になるのではないか。
この調査の限界として、これはアメリカでの話である。日本では文化背景が異なる部分も多いため、また違った結果になると考えられる。特に美的感覚については大いに異なるため、効果的なフィルタリングの手法が違う気がする。それを調べた研究も既にありそう。
少し趣旨は異なるが、女子大生のインスタ使用法については以下の記事が大変わかりやすかった。


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