Day33ー脳が同期すれば動作も同期する
今回は認知神経科学的研究を。
https://doi.org/10.1093/scan/nsw172
軽頭蓋交流電気刺激(tACS)という手法を用い、2者の脳活動が同期するように特定の周波数帯を刺激として与えると運動が同期する、という実験。
背景
脳に直接電極をぶっ刺すのではなく、電気刺激を外から与える手法は非侵襲的脳刺激法(non-invasive brain stimulation: NIBS)と呼ばれる。かつては経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation: TMS)が主流であったが、近年は今回紹介するtACSや経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation: tDCS)が主流である。tDCSとtACSの違いとして、tACSは与える周波数を任意に変えられることがある。例えるならtDCSは発勁で、tACSはショックウェーブである(わかりにくい…)。一方tDCSにもメリットはあり、構造が単純な分場所を使えることが利点である。
実験
30組のペアを対象に実験を行った。ペアとなる2人は直接の接触はなく、別室に案内される。tACSによってC3領域(運動野のある頭頂付近)に電流刺激が与えられた。刺激は2Hz(タスクと同じ)、10Hz(α波)、20Hz(β波)の3種類であった。参加者は1秒に2回のペースで指をタップする課題を行った。電気刺激が与えられるタイミングは指のタップに同期している場合(in-phase)と、位相がちょうど反対の場合(anti-phase)の2種類であった。
まずは電気刺激とタップの同期について調べた。
結果、20Hz刺激の場合のみ、in-phaseとanti-phaseの同期において有意に差があった。
続いて2者のタップの同期について調べた。
結果、こちらも20Hz刺激の場合のみ、タップするタイミングには有意に同期性が向上していた。
この結果から、20Hzの刺激を運動野に与えることで活動が同期しやすくなる。
所感
脳活動から行動の同期を見るというのは面白い。今回は単純な課題だが、より複雑な環境で実施した論文も見てみたい。
tACSというメソッドについて詳しく知らなかったが、EEG並みに応用範囲が広いと感じた。