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day22 ―脳波を利用して効率的な暗記を

今回は認知心理学、認知科学分野です。

Fukuda, K., & Woodman, G. F. (2015). Predicting and Improving Recognition Memory Using Multiple Electrophysiological Signals in Real Time. Psychological Science, 26(7), 1026–1037. https://doi.org/10.1177/0956797615578122

脳波計を利用し、より効率的に暗記できた際のシグナルを同定。さらにそのシグナルをもとに暗記項目を分類し、覚えてなさそうな単語だけを復習すると学習効率が向上する!

ざっくり背景

英単語など、暗記は勉強をする中で避けて通れません。しかし、例えば100個暗記するときに、全部復習するのは非効率です。そんなとき、覚えてなさそうな単語だけをあらかじめピックアップできたらきっと効率が上がるに違いありません。
実はこのような技術は、既に存在します。本論文では脳波を用い、刺激を分類、再暗記することで効率が上がることを示しています。

実験1

2つの実験を実施。最初の実験ではまず、500個の写真を刺激として提示、記憶してもらいます。次にテストを実施し、提示された画像を覚えているかどうか確認してもらいます。このとき、イエスで100%自信がある、80%自信がある、60%自信がある、ノーで100%、80%、60%という6段階で評価してもらいます。結果、高い自信度で正解した刺激はFz (前頭)amplitudeが刺激提示200ms-1250msにかけて高く、O2(後頭)alpha powerが刺激提示400ms-で低くなりました。

実験2

実験1を基に、次は800個の写真を刺激として実験。実験1と同じように記憶してもらった後、その単語をFz amplitude、O2 alpha powerの値によって分類します。そして今回はテストの前に復習フェーズを設け、この分類によって選ばれた、あまり覚えていないと考えられる単語、覚えていると考えられる単語をもう一度学習します。そしてテストでは、①復習したあまり覚えていないと考えられる単語、②復習した覚えていると考えられる単語、③復習していないあまり覚えていないと考えられる単語、④復習していない覚えていると考えられる単語という4つでパフォーマンスを比較検討します。結果、①と③の向上率よりも、②と④の向上率のほうが高くなりました。

考察

脳波によって刺激を分類することで、より効率的な学習がサポートできる。今回はFz amplitude、O2 alpha powerを参考にしたが、他にも指標となる場所があると思われる。Fz amplitudeは海馬でのエンコーディングプロセス、O2 alpha powerの低下は長期記憶へのアクセスが成功したことを反映しているはず。

所感

今回の実験では、パフォーマンスの算出にROCのAUCという難しい指標を使っているので詳しい言及はしませんでした。重要なのは、脳波によって単語を分類することで暗記(専門用語を使えばエンコーディング)が効率的になることです。ただ数値を詳しく見ると、実は①と②ではそんなに変わらない結果となっていました。ですので一概に刺激を分類すれば良いというわけではなく、復習するという行為そのものが極めて重要という事実を反映しているとも考えられます。より精度を上げるための実験が目下世界中で行われていることと思われますので、今後の研究に期待したいところです。

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