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そのままの京都日記(01.08)
京都で仕事をしていると、六本木という街は本当にあるのだっけと、ふと思うほど、すべてが遠く感じる瞬間がある。それは逆も然りなのだけれど。
朝は食べず、昼はひとりだったので簡単に。キャベツと玉ねぎのお味噌汁、それから目玉焼きを焼いて、醤油をたらりとかけて、ご飯の上にのせた。
夜に楽しみな予定があったので、日中の仕事が捗った。定時で仕事を切り上げ、今日はじめての外へ。昨日よりさらに冷え込んだ空気。
京都に来るようになって、「底冷え」がどんなものかを実感した。気づいたらじっくり、芯から冷やされているのだ。東京の冬はもっと忙しない。地下鉄の強風で髪がボサボサになったあと、地上のビル風に首をすくめる。
バスに揺られ、待ち合わせの場所へ。バスの中で、これから会うみどりさんが書いてくださった『すくいあげる日』の感想をうっかり読んでしまって、視界が潤む。わたしが沖に流したボトルは、やさしいひとの場所に辿りついたみたい。
草間柚佳『すくいあげる日』読了。日記のような、はたまた詩のような。ぽつりぽつりと置かれた言葉が、連なって、重なって、溶け合う。読み終えたときの、心地良い安心感と不思議な清涼感。丁寧な暮らし、という言葉が浮かぶ。ネットミーム的なそれではなくて、もっと本質的なもの。彼女は、日々を丁寧に眼差しながら生きている。心の機微をすくいあげて、そっと抱きしめる。そうして生まれた言葉。一冊の本を読んだ、というよりも、言葉を受け取った、という感覚。出会えて良かった。
念願のタルジスさんで、みどりさんと美味しいものを食べて、沢山お喋りをした。盛りだくさんの前菜、熱々の春巻き、百合根の入ったグラタン。すべてが美味しくて、やさしい味。うれしい、たのしい、おいしい、を何回言っただろう。
日記の中にいるみどりさんだけを知っていたから、まるで文通相手にはじめて会えた気分で、本当に嬉しかった。
日記を書く理由、それぞれの生活のこと、京都のお店のこと、色々な話をした。時間はあっという間に過ぎて、夜はお開きに。
しあわせな余韻と、みどりさんの短歌と日記のZINE「たよりない傷」を膝にのせながら、またバスに揺られる帰り道。
家に着くと、コートも脱がないまま作業をしていた彼の向かいに座り、本当にたのしい夜だったこと、みどりさんがとてもキュートな方だったこと、タルジスさんのご飯が美味しかったことを、話す。よかったねえ、と彼も嬉しそうだった。
やさしくて、きらきらした夜。