忘れてはならない。正義のための戦いなんてない
「自然は弱肉強食だ」と嘯くバカヤローがいる。
飽食しても尚、食いたがる生物は人間以外いない。自分の欲のために同類を殺す生物は人間以外いない。
下のものに命令して同類を殺させる生物も人間しかいない。
「もっと!もっと!」と、欲を膨らませて餓鬼道に墜ちる生物は人間だけだ。...
もちろん、そんな餓鬼道に墜ちた輩が襲って来れば戦うしかない。しかしその戦いに勝ったとしても、深くPTSDは残る。
憎しまずに殺し合うことは不可能だ。憎しみは深く人の心を傷つける。洗っても落ちない汚れに手が染まる。望んでもいないのに。否応なく・・
そんなことに引きずり込まれて、うれしいか?
忘れてはならない。正義のための戦いなんてない。"正義"は何れの陣営にもある。その互いの正義をぶつけ合えば殲滅戦になるしかない。
僕らは100年以上昔に、30年戦争でそのことを悟ったはずだ。
ウエストフォリア条約を読みなさい。
戦争に「正義」を叫ぶ輩は、絶対に信用するな。自己犠牲を美化して滔々と話す輩が、自己犠牲側に回ることはない。
そんな奴らは、言葉巧みに、君へとんでもないモノを売りつけようとしているのだ。守らなければならないものが有っても。それでも。。正しい戦争なんてないんだ。手がもげ足がもげ、裂けた腹から内臓が飛び出せば・・人は泣き叫び、神を呪うのだ。
「人は弱い。その弱さを忘れないために。そして、道がいつの間にか曲がってしまっていることに気が付くために、神からの試練はある。もう一度、ヨブ記を読みなさい」サイゴンが落ちて五体満足で戻れた僕に・・打ちひしがれて這いつくばったままの僕に、シナゴーグで対峙したラビは、僕の目を見つめながらそう言った。
その言葉を聞いた時、僕は先生が言う意味が分からなかった。
今でもわからない。
ファウストに「お前は誰だ!」と聞かれたメフィストは言った。
「私は常に悪を欲し、善を為す力の一部だ。」
ゲーテは、人の本質を見抜いていたんだろうか。悪もまた、人が神に至る長い道に必須な、出会わなければならない試練なんだろうか?