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猫田による猫田のための、寝ぐせ。

新しいヘアワックスを買ったとたん、
朝の髪に寝ぐせがついた。

「せっかくだからそれ使ってみなよ」
そう言わんばかりのふてぶてしさで、
私の髪の毛は鏡の中で、
そこそこの存在感を放っている。

天然パーマがちの私の場合、
それは寝ぐせなのか天パなのか、
正直判別のしようがない。

どっちにしても、だ。
もさもさのボハボハで、
どうしようもないことには変わりない。

美容院で読んだ雑誌に載っていた、
そのワックスの蓋を開けて、
苦味を含む柑橘の香りとともに、
髪の毛にほぐしこんだ。

最近は寝ぐせが付きにくくなった。
風呂上がりに髪を乾かす習慣がついたからか、
はたまたシャンプーを変えたからか。

しかしながら、
髪の毛が私の思い通りになるかというと、
まったくもってそういうわけにはいかない。
天然パーマと湿気と寝ぐせに、
もてあそばれる日々。

寝ぐせはピョンでなくボフッ。
跳ねるでなく厚みが増すもの。

特に後頭部が手に負えない。
私は時折後頭部に生じる、
髪の毛の盛り上がりのことをひそかに、
内心「犬耳」と呼んでいる。

いっそ猫耳でも生えたらいいのに。
そしたらどうしようもなくて、
開き直れるのになあ。
私には犬耳しかできない。

ひとの寝ぐせは特に不快でないのに、
自分の寝ぐせはどうしてこうも、
煩わしく思えてしまうのだろう。

ひとの寝ぐせに特に感情はない。

ああでも
可愛いげのある人の寝ぐせは、
ぼんやりとしてかわいらしいと思う。

ただしかわいげのある人に限る。
これは私の純然たる差別。

ではかわいげのあるなしとは、
いったいどこにあるのか。
ちょっと考える。

おそらく、
私に危害があるかどうか。
不快感を及ぼさないかどうか。

これはこれでまた差別で、
特に根拠もなんもない。

とにもかくにも、
私によるし、あなたによるってことだ。

もうどうしようもない。
なにも分からない。
ぼんやりとしている。
致し方なし。

私のすぐそばを歩くお兄さんの、
かわいげのある寝ぐせ頭を、
視界の端にぼんやりと、
とらえつつ諦めるが吉。

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