見出し画像

猫田による猫田のための、注射。

久しぶりに、
具体的には数年ぶりに、
インフルエンザの予防接種をした。

注射は昔から苦手ではない。
昔といってもまあ物心ついてからくらいのことだ。
めっちゃ嫌とかはない。

だけど針を刺される時には、
刺さるところを見ないようにしている。
なんてことはない。
まあ一応。念のためだ。

予防接種こそ久しぶりだけれど、
それよりも頻繁に針を刺されることはある。
それも自主的に針を刺されに行っている。

まあつまり献血のことだけれど。

献血では1日に2度は針を刺されることになる。
輸血用の血を取るときと、
検査用に採血するとき。

血を抜かれる量は明らかに、
前者の方が多いに決まっているのだけど、
「うわあ血い出てるわあ…」ってなるのは後者。

シャー芯のケースくらいの容器が数秒で満たされて、
そのまま検査用の容器に移される。
自分の身体から出てきたらしい、
赤黒い液体。血液。

何気ない日常生活のなかで、
あの量の血が流れ出たとしたら、
私は顔面蒼白になってると思うの。
たぶんだけれど。

だけどその赤黒い液体を、
まじまじと見つめていられるのは、
「これが日常茶飯事ですよぉ?」みたいな、
看護師さんの空気感のおかげ。

昔は成分献血っていって、
一旦採った血から一成分だけ取り出して、
残りは体に返すっていう、
回復の早い献血をしていたのだけど、

自分のものだった血液が自分の体に戻らなくなって、
成分献血ができなくなってしまった。

なんなのだろう。
自分の体だったものが少し管を通り抜けただけで、
自分のものでなくなったのだろうか。

だとしたら判定が早すぎんか?
もうちょっと待っててくれても良かったんちゃうか?

そんなわけでこれから私の血液は、
一度取り出したら私のものではなくなる運命なのだ。

注射器の中のものは私の中に入った。
けれどそれは私の体のものでなく、
あくまで部外者で敵襲でしかない。

左腕は自分の体でないみたいに、
重たくて怠くなった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?