ちょっとフィクション/観測者の苦悩。

何も生み出さない自分に嫌気がさして、
徒然なるままにノートパソコンに向かひて、
文字を打ち込んでみているものの、
特に何も生まれそうもない。

ただそれしか打ち込まれていないメモ帳が、
画面にはずっと表示されっぱなしになっている。
いや表示すらされていない。
スリープモードに移行して数時間が経った。

パソコンの持ち主もといメモの著者はというと、
ベッドに倒れこんでスマートフォンを見つめている。
大方ゲームの実況動画でも見ているのだろう。
特徴のある笑い声が聞こえてきたのがその証拠だ。

最近はこうやってベッドに寝転がるか、
ご飯を食べるかトイレに行くか、
たまにコンビニに行くかぐらいの動きしか
見られなくなってしまった。

ただでさえ六畳一間のアパートだというのに、
家主がこれでは退屈でしょうがない。

やつはいわゆる休職中ということらしい。
二か月ほど前に診断書を持ち帰ってきて以来、
曜日にかかわらずこの部屋に居続けている。
おそらくそういうことなのだろう。

しかし、それにしても、だ。
コンビニの袋が山積みになっている。
カップ麺の容器が雑多に並んでいる。
スープの油やお菓子のかけらが飛び散っている。

家主はろくに活動しないうえに、
部屋の中はゴミで埋め尽くされているときた。
まったく、見るに堪えない。
私はこう見えてもきれい好きなのだ。
見える姿などないに等しいが。

だからこそ、今朝方珍しくカーテンを開けて、
パソコンに向かった時には期待したというのに。
一度期待させられた分、現状への落胆も大きいものだ。

だが、まあ、ちょうど潮時だろう。
いい加減、何も変わらない光景を見続けるのにも
飽き飽きしていたところだ。

今回の家主は今時珍しく、
日々希望に満ちた目をしていた。
なかなか新鮮なものを観られると思っていたんだが……。
結局今までと大して変わらなかったか。
残念だ。

……

さあ、
このゴミが全部片付いてから、
次の家主に期待するとしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?