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猫田による猫田のための、冷たい水。
冬。
水が冷たい。
朝、
どうにかこうにか布団から起き上がって、
トイレをでたら顔を洗いに行く。
水道の栓をあげる。
蛇口からお湯になる前の水が落ちてくる。
手から体温が奪われて、
布団の温もりを奪われていた私は、
さらに凍えてしまう。
冷たい水は硬い。
手の神経系が冷たいのを、
痛いのと勘違いしてさらに、
硬いから痛いのだと理由をつけるんだろう。
手を洗うのはまだいいとしても、
顔を洗うなんて無理です。無理なんです。
うがいだけは済ませながら、
洗面台から湯気が立つのをぼんやり待つのだ。
夏は水がぬるくって、
冬は水が冷たい。
それを強く意識しだしたのは、
京都に来たからだ。
地元では、
蛇口から地下水が出てくる。
地下の底はある程度温度を保っていて、
夏は涼しさを感じるくらいには冷たいし、
冬は手よりも水の方が温かかった。
それが今ではどうだろう。
夏の水道水はうんざりするほどにぬるい。
冬はガス給湯器に頼らないわけにいかない。
「水道水が美味しい」以外に
地下水の恩恵があるなんて、
考えてもみなかった。
しかし今ここにないものを、
どうこう言っても仕方がないので。
今日も今日とて、
給湯器に拝まんとする気持ちで、
手をすり合わせて、
手を洗おう。