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【お知らせ】『幻想と怪奇 ショートショート・カーニヴァル』に掲載

第一回『幻想と怪奇』ショートショート・コンテストに応募した、

「せせらぎの顔」

が優秀賞に入選し、同誌『ショートショート・カーニヴァル』に掲載されました。(2023年6月13日刊行)
書店などでお手に取っていただければ嬉しく思います。私の作品は一番最後に載っております。
これは同誌の別冊とのことで、錚々たる日本人作家の方々が寄稿されています。
私は文字通りの「末席」に名を連ねさせていただいて、あまり実感も湧かずフワフワした気持ちと、「大変なことになってしまった」という身の引き締まる思いとで、ぐるぐるしているところです。

コンテストの募集が告知されたのは、昨年12月初だったかと思います。
この『せせらぎの顔』はコンテスト用に新たに書いたものではなくて、それ以前に趣味的に書き散らしてあったものでした。
いつだったか、まわりの 創作仲間さんたちがホラー作品に取り組んでいた時があって、でも私はホラーが苦手なので(怖いから)、自分はホラー系の話は一生書かないだろうと思っていたので、皆さんが取り組まれているのをSNSを通してぼんやり眺めているだけでした。
とは言え、よく考えてみると、私が苦手なのはいわゆる人間が怖い系(生きてるのも死んでるのも)であって、人外のもののお話はゾワッとしつつも大好きです。妖怪だとかUMAだとか、遠野物語だとか、クトゥルー神話だとか……
そこで、ふと「もし私が読めるホラーっぽい話を自分で書くとしたら、どんなお話になるかしらん」と興味が湧き、趣味的につらつらと書いてみることにしました。それがこの「せせらぎの顔」です。
第一稿はすぐに書けたのですが、自分ではこれをホラーとは思えず、かと言ってどのジャンルかもわかんないし、書いたはいいけどどうしよっかなー、手直ししてnoteにでも載せればいっかなー、いつもの作品と違う雰囲気になったから創作仲間さんたちにウケたらいいなー、くらいの気持ちでいました。

そんな時、『幻想と怪奇』SSコンテストの告知が流れて来ました。
応募要項を見て、ふと手元にあるこの作品を思い出しました。
新たに書こうと思わなかったのは、このコンテストが第一回で、求められている作品がどういうものか、皆目見当がつかなかったからです。
とは言え、この「せせらぎの顔」がぴったりな作品とも思えませんでした。
「私の作品は幻想?怪奇?なのだろーか??地味な話だし……」と、応募を躊躇いました。
その時、背中を押してくれたのが応募要項に書かれていた、

「怪奇」「幻想」の意味は作者の解釈によります。

新紀元社 公式サイトより

という一文でした。
そうか、作者の解釈でいいのか。それなら、まぁ試しに出してみようかな、と思ったのでした。

しかし応募要項では「8000字以内」となっているところ、この時点では3000字ちょっとしかありませんでした。趣味で書いたから字数とか気にしてなかったし……
下限文字数は書かれていなかったので、応募できると言えばできるのですが、私は普段、応募作品は上限文字数の8割~9割は書くことにしています。大学受験の小論文対策で「最低8割は書かないと落とされるぞ」と繰り返し言われたのが、いまだに強迫観念のように染みついているからです。(何十年前のことだよ)
と言うより、むしろ私は文字数超過症なので、たいてい第一稿では上限文字数を超えます。そこから削る作業に時間を費やすのが常です。
ここが本当に辛い。作業自体も辛いですが「自分はこんなに無駄なことを書いていたのか」と思い知らされるのが、じわっとメンタルに来ます。
まぁそれはいいとして、とにかく今まで上限文字数を大幅に下回ったことがないので「増やさねば」と思ったのが、新鮮な体験でした。

正直なところ、削るのに比べたら増やすのはそんなに大変じゃなかろう、と思っていたのですが、ここで新たな発見です。
とりあえず完成している作品に書き加えるのは、至難の業……!!
ですね。学びました。
増やすのも、それはそれで難しい。
とは言え小心者なので、さすがに上限文字数の半分は超えなくちゃと勝手に考えて、必死に1000文字ほど書き足しました。
それでもまだ少ないように思い、もうひとつ別のエピソードを挟み込むことも考えたのですが、それはかなり無粋なことになりかねないぞと感じ、自制しました。
最終的には4400字くらいでしょうか、それで応募しました。年末でした。
「どんな作品が求められているかわからないし、まぁ二次選考まで通過したら上出来だな。今回の入選作を見て、次回どういうのを書くか考えよう」と思っていました。

なので、入選のご連絡をいただいた時は驚きました。
あらためて今、

「怪奇」「幻想」の意味は作者の解釈によります。

という一文の重さを、しみじみと噛み締めているところです。
この言葉がなかったら「私のは本格的な幻想でも怪奇でもないし」と思って、応募していなかったかもしれません。

それから、先に書いたように、
この話はもともと趣味で書いたので、とても気持ちよく書けたものでした。
私は筆が遅く、心身ともに脆弱なので(持病とかはないけど)、次々にバンバン書いていくということが、なかなかできないでいます。
だからよく「打席に立ってバットを振らなきゃ意味がない」みたいなことを耳にしますが、そもそもバッターボックスに立てる時点でそういう才能があるってことだよ、と言いたい。
私は滅多にバッターボックスまで辿り着けないので、珍しく立ったからには空振りじゃ帰れねーぞ!みたいな感じで生きています。
それでももちろん空振りすることもあるし。落ち込むよね。

そういった変なプレッシャーを自分で自分に課してしまっているのか何なのか、たいてい書くのは疲れます。むしろ書く前から疲れています。
それが今回の「せせらぎの顔」は純粋な趣味で書いたからなのか、楽しい気持ちのまま、終始すらすらと書けました。早く続きを書きたい!と思ったのなんて、久しぶりでした。
たぶん肩の力がほど良く抜けていたのでしょう。そのあたりも入選に繋がったのかもしれないなぁなんて、自分では思っています。

今後はこの、久しぶりに思い出した「早く続きを書きたい」という気持ちを軸にしつつ、「いま本当に書きたいものは何なんだい?」と自分に問い掛けながら、何作品か書いてみようかなと思っているところです。
本来は書くのが楽しかったから、流れ流れてここまで辿り着いたわけだし。
でもまぁ脆弱なので、バッターボックスに立つまでに体力が尽きないよう、ふ菓子でも食べながら進んでいくことにします。

最後に。
遠いあの夏、川釣りに連れて行ってくれた亡き父に感謝を。


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