#18 街角の女性 清水基子さん (mocomode)
こんにちは!みかわやポッドキャストのリサコです!
今回は第3回目の、「街角の女性」のインタビュー。大学生である私が、キニナル女性にインタビューさせていただくコーナーです!
第3回目の街角の女性の収録にゲストとして出演していただいたのは、浜松市で、mocomode (モコモード)という洋裁店を営んでいる、清水基子さんです!
清水さんにインタビュー依頼させていただいた理由
洋裁経験が40年近くになるという清水さんは、現在浜松市内でオーダーメイドの洋裁店「mocomode」を運営されています。お洋服や布バッグなどを、一人一人の嗜好やライフスタイルに合わせて型紙から製作されています。月に一度、kagiyaビルの「New Shop」にて「オーダーメイドなんでも相談会」を開催し、「オーダーメイドで服を作る」という選択肢を、多くの人に提供されています。
そんな清水さんはかつて、みかわやの横に隣接している「モードその」という洋裁店で働かれていたのです!それをみかわやポッドキャスト店長の竹山さんから聞いた瞬間、驚いたのと同時に、「ぜひ清水さんに直接お話を聞きたい!」と思い、すぐにご連絡させていただき、本当にありがたいことに二つ返事でインタビューに応じていただいた次第でありました。
モードそのの建物は、2019年の夏頃から、男子大学生3人が暮らすシェアハウスに姿を変えました。私がみかわやに関わらせていただくようになった理由は、その大学生3人と元々仲が良く、頻繁にシェアハウスに遊びに行っていたことからでした。モードそのの建物と、みかわやの場所に通いながら、(この場所ってどんな場所だったんだろう?どれほどの人が行き来して、どんな雰囲気だったんだろう?)という問いがずっと私の中にありました。
そんな中で今回清水さんにインタビューに応じていただいて、当時の日々のリアルなエピソードや、今の清水さんの洋裁のスタイルとその原点について、お話をたっぷり聞かせていただきました!
(清水基子さん:清 リサコ:リ)
洋裁について
リ:清水さんは幼い頃から手芸が好きで、大学も被服科を専攻されていたんですよね。今もご職業として洋裁をされていますが、「洋裁」のどんなところに魅力を感じて今のお仕事を続けられているんですか?
清:昔からファッションが好きで、手先が器用だったということもあるんですけれど、何より、洋裁って毎日毎日が「プチ達成感」の積み重ねなんですよね。ものをつくる仕事の醍醐味なのかもしれないのですが、毎日自分が手を加えていくことによって、少しずつ完成形に近づいていって、それが目に見えてわかるのが、楽しいのだと思います。
リ:オーダーメイドでシャツ一枚をつくるには、だいたいどのくらいの期間がかかるのですか?
清:私はプロとしてはあまり仕事が早くないんです。モードそのの洋裁のスタイルがそうだったのですが、同じ型紙を使って量産するのではなく、一点一点、時間をかけて作るという形態だったので、既製品工場で縫製をしているようなプロの方に比べると私は仕事が遅いんです。フルオーダーの場合、採寸して型紙をとって、仮縫いをして本縫いに入る、という作業工程になるので何十時間もかかります。時間がかかる上に、効率も良くないですが、生地を見極めて縫い方を変えるなどして、お客さん一人一人に合わせて洋服を作るのが、私たちの仕事のスタイルです。
リ:清水さんがオーダーメイドで服を作り続けている理由と、一番大事にしていることは何ですか?
清:「沢山洋服を買うのだけれど、ほとんど着ずに、たんすの肥やしになってしまう」というお客様がよくいらっしゃるんです。そこで、「こういうものが欲しい」「この生地とサイズ感」が良い、といった要望をいただいて、お客様が「つくる」ところから参加できる服、という選択肢を増やすのが私の役目だと思っています。手間とコストをかけてでも、本当に気に入った服を数着持つことは、色んな面から考えてもメリットが沢山あるのではないかと思います。オーダーメイドで服をつくることは、SDGsの視点から見ても、見直されていくのかもしれないですね。
オーダーメイドをする上で一番大事にしていることは、何といっても洋服の「仕上がり」です。お客様の満足いく仕上がりを常に追求しています。より良い仕上がりにするために、仮縫いを何度もすることもあります。それくらい、一点一点のお洋服を慎重に作ることをいつも意識しています。お客様の中には、「オーダーメイドをしてみたけど、仕上がりがイマイチだった」という方が意外と多いんです。その問題は、「お客様と作り手のイメージの共有ができていない」ということにあると思うんですね。なので、お互いの持っているイメージの細かい部分を極限まですり合わせていくことが大事だと思っています。サイズ感などではなく、「テイスト感」のズレが生じてしまうと、お客様からしたら、オーダーした意味がなくなってしまうんですね。お客様の満足いく仕上がりを提供するために、やり直しは何度でもやる、くらいの気持ちでいます。その心構えは、モードそので学びました。
モードそのでの日々とかつてのみかわやについて
リ:モードそのはどんな洋裁店だったんですか?
清:モードそのは運営形態が大きな洋裁店でした。男性社長と、デザインを担当する先生がいて、お客様のフィッティングや補正、最終確認をしていました。縫子さんは多い時は何十人もいました。「仮縫いさん」と呼ばれる人が、しつけ糸で仮の仕立てを行い、最後に本縫いをする「本縫いさん」がいるのですが、一番忙しかった時は、あちこちの家庭の本縫いさんに、仕事を配りに行き、できた洋服を回収する役割の人もいたほどでした。布の裁断だけをする裁断士もいました。本当に多くの人が関わっていて、運営の規模が大きかったんです。モードそのが一番繁盛していたときは、昭和50年代~平成の初め頃だったのですが、私が働き始めたのは、お店が一番忙しかった時期から少し右肩下がりになった頃でした。それでも縫子さんは何人もいましたね。
モードそのの一階は応接室になっていて、奥にはキッチンがあり、細い階段を上って、二階の右手にある一部屋は社長の事務所でした。もう片方の部屋には大きな裁ち台があり、そこに向かい合わせに職人さんが何人か並んでいました。窓際にはアイロン台があり、通りを見ながらアイロンがけをしたのをよく覚えています。社長の部屋には畳が敷いてあって、テレビがあったので、お昼の時間になると、みんな仕事の手を休めて、15分間の連続テレビ小説を見ながらご飯を食べていました。お昼休みの時間も決まっていなかったですし、時間がもったいないということもあって、15分間でお昼ご飯を食べて、また仕事に戻っていましたね。
職人さんの中には、毎日モードそのに来て仕事をした人もいたけれど、私は社長や先生に確認をとりたい時だけ行っていました。一人で進めて洋服が完成したとしても、「この部分がだめだ」と言われたら、全部糸を解いてやり直しになりました。特に、シャツの襟や、スーツやコートの袖やはとてもデリケートで、難しい部分でもあるんですね。どんなベテランさんでも、「やり直し」と言われたら、また一からのやり直しでした。一度、ものすごく繊細な「シルクデシン」という素材で襟を着けた際、「このお客様はその衿付けでは満足しない」という指摘を受け、糸をものすごく慎重に解いてやり直したことがあるのですが、それ以来、衿付けを自分の判断し本縫いに入ることは絶対にしませんでした。
働いている人同士や社長との距離が近く、職場の雰囲気も和気あいあいとしていましたが、洋服をつくることに関しては「一切の妥協を許さない」のが、モードそののスタイルでした。社長、先生、職人さん、みんながお手本でした。今の私の全部が、ここで学んだことといってもいいくらい、本当にお世話になりました。
リ:みかわやはどんな雰囲気だったんですか?
清:正直、私がモードそので働いていた頃はお客さんはそんなにはいらしてなかったんです。みかわやにいたおばあちゃんが、当時でも90歳くらいと言っていた覚えがあるので、考えてみるとそのお年でお店を運営していること自体が本当に凄いことですよね。私もたまにティッシュペーパーなどの日用品を買いに来たことがあったのですが、店内には、売り物なのかどうかも分からないものが、沢山ありました。おそらく、みかわやさんが繁盛していた頃は、私がモードそのに来るよりもずっと前で、まだ世の中にコンビニエンスストアというものがない時代だったのだと思います。そういう時代に、かつてのみかわやさんのような「なんでも屋さん」は、すごく便利だったのではないでしょうか。
おばあちゃんの息子さんは、学校の先生を退職なさった方で、どちらかというと、フレンドリーというよりも寡黙な方でした。モードそのの職人さんからは、「みかわやのおじさんは、英語がペラペラで、すごくインテリな方なのよ!」と聞いていました。ものすごい読書家だったらしく、いかにもロシア文学を読み込んでいそうな雰囲気があったように思います。
みかわやの前の通りを、おばあちゃんの乗る車いすを押して、お散歩されている姿を見ては、「親孝行な息子さんだね」と、モードそのの職人さんたちと話していました。
インタビューを終えて
清水さんの、オーダーメイドで服を作ることに対する情熱や、仕上がりを絶対に妥協しない姿勢に、とても感動しました。その原点にはモードそのがあり、そこで過ごした日々や経験の全てが、今の清水さんの洋裁のスタイルに繋がっていると聞いて、「本当に良いもの」は時代が変わっても受け継がれる、タイムレスなものなのだなと改めて実感しました。今はほとんど面影すらめったに感じることができないですが、かつての浜松の街中には、オーダーメイド店が沢山あって、多くの女性や男性が素敵な布地で作られた、各々のお気に入りのデザインの仕立ての良いお洋服を身に纏っていたと思うと、なんだかその時代がうらやましいな、なんて思います。当時のみかわやについてのエピソードも聞くことができて、これからこの場所で過ごす時間に、厚みが増すように感じます。
清水さん、インタビューを受けてくださって、本当にありがとうございました!!!
【お知らせ】
・mocomode HPリンク
・mocomode 「オーダーメイドなんでも相談会」
月一回 Kagiyaビル 1F New Shopにて開催
【4月】2021年4月25日(日) 13:00〜17:00 予約不要
【5月】2021年3月23日(日) 13:00〜17:00 予約不要
詳細はウェブサイトから。
・mocomode インスタグラムアカウント
https://instagram.com/sewing_mocomode?igshid=1rl9cbql4fxlr
写真:鈴木陽一郎
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