イアン・ブレマー氏が2020年10大リスクを緊急改訂:日本への提言も
まずはこのビデオを、ご覧いただきたい。(7分50秒)
私はユーラシア・グループの国際政治学者イアン・ブレマー氏が毎年発表する「世界10大リスク」に注目している。既に2020年版は発表されているが、昨日のロイターのビデオでブレマー氏が緊急改訂を語った。下記にテキストに書き起こしたので参考にして頂きたい。
昨年発表された2020年10大リスクはPDFにまとまっている。
まずはそれを押さえておこう。
1.不正!誰が米国を統治するか
2.超大国、米中のテクノロジー分断
3.米中関係
4.頼りにならない多国籍企業
5.モディ政権が推し進めるインドの変貌
6.地政学的変動化にある欧州
7.気候変動、政治と経済の綱引き
8.シーア派の高揚
9.不満が渦巻く中南米
10.トルコ
これは従来の世界10大リスクだが、これを改訂したのだ。
ブレマー氏は何を語ったのか
以下にロイターとのインタビューをテキストに書き起こす。
今年の最大の変化は、中国の行方、グローバリズム、そして米中関係だ。気候変動対策にも変化が起きる。気候変動が注目の年となる「筈だった」。
「もはや、注目されないのだ」- Not at all!
新型ウイルス危機は、明らかに大きな変化をもたらしたのだ。
ーつまり今回の影響hあ911や金融危機より深刻だという事ですね?
もちろんだ、911や金融危機後、世界の秩序に変化はなかった。同盟も保たれた。今回は全く違う!世界秩序が変化するのだ。国際的政治や政策的対応が欠如しているのだ。これは、重要なポイントだ。
リーダーがいない「Gゼロ」時代に起きた初めての危機だ。
景気刺激策の規模を見てみると、米国だけでもGDPの7.5%が最低限必要だ。これは初期の3段階でだ。2008、2009年の金融危機では、米国はGDPの5%を景気対策に充てるだけで済んだ。
今回は、最低でも、世界のGDPの10%規模の景気刺激策が必要だ。私の生涯で前例がない大きさだ!
ー今回の改訂版で使われている「地政学的後退」という言葉だが、「地政学的後退」と「景気後退」の違いは何か?
「景気後退」とは、ほぼ7年周期でやってくるもので、程度の違いはあるが、好景気、不景気の周期だ。だから、定義もしやすいし、対策も打ちやすい。地政学にも周期があるが、その周期は経済学よりも長い。つまり世界秩序が、まとまったり、崩れたりする周期だ。
そしていま我々は、Gゼロの世界、「地政学的後退」の時期にある。旧来の世界秩序が、ほぐれている時期だ。
しかし、今はまだ、新しい世界秩序がまとまっていない。人々は、この状況に気付いていない。私は、これが専門だから以前から指摘しているが、危機に直面しなければ、国際機関や政治は機能していると思える。
しかし、危機を前にして、突如、政治が機能していないことに気付くのだ。
今回は、明らかに世界的な危機なのだ。世界的な大流行で感染者の数は世界中で爆発的に増えている。世界的な大流行には、世界的対策が必要なのは明らかだ。世界的な対策が打たれなければ、感染者は増えていく一方だ。
ーでは、今いかなる世界的対策が必要なのか?世界的に強調した対策が必要だというが、それは何か?
今回の危機は、深刻な世界的景気後退なのだ。世界恐慌かもしれないのだ。格差が拡大し、苦しみが増え、多くの死亡者が出る。良い事は何もない。
まとめ:
・今はまだ、新しい世界秩序がまとまっていない
・人々はこの状況に気付いていない
・危機を前にして政治が機能していない
・世界的対策が必要なのは明らかだが、明らかに世界的な危機なのだと
ブレマー氏が、答えよりも氏の期待することを話した
以上を踏まえてブレマー氏は「答えよりも私が期待することを話す」と。
より迅速に、効果的に、世界が協調して「経済活動を停止させる」ことだ。そうすることで医療体制を整えられる。
ー新型コロナウイルス危機の影響はいつまで続くのか?
最低でも数か月は続く。新たな感染者数が低下するまでは、経済活動の再開は考えられない。再開後も平常に戻るには時間が掛かる。
第2四半期(4-6月期)は全く酷い状況となる。今の四半期(1-3月期)は、25%から50%の収縮だ。前例のない事だ。第3四半期(7-9月期)も成長は見込めないと思う。まだ、だめだ。
第4四半期に、ようやく回復がみられることを期待している。夏までに、もし米国が、韓国やドイツの様に上手く対応できれば、6月には経済が再び勢いよく動き出すだろう。
ただ、商業の風景は全く変わる。
旅行業やレストラン業は、なお困窮しているだろう。その時にこそ、刺激策が必要となる。いま、必要なのは救済策だ。経済活動が停止している今、刺激策は時期尚早だ。
ー日本については、どう思うか?
日本には、信頼できる政府があり、国民は政府に耳を傾ける。政府がマスク着用と言えば、皆マスクを着ける。レストランに行くなと言えば、皆行かない。日本は法的手段を使わなくても、国民は助言に従う傾向がある。
明らかに、日本経済は第1四半期に、既に打撃を受けていた。経済の収縮は予想以上だった(増税によるもの:筆者記)。新型コロナウイルスの影響で更に悪化する。
日本は既にGDPの約7%の刺激策を打ち出してきている。更なる刺激策が続くかもしれない。ただ、日本の政治と経済は安定的で体制があるため、今回の危機でも、それは有利に働く。
ー分かりました、米国とは状況が異なるのですね。
今の状況下で、米国で11月に適切な大統領選挙は行えるのか?
議会の承認が必要だから、大統領選挙の延期は無いと思う。ただ、不正選挙になる可能性は高い。それこそが、1月に発表した世界10大リスクの第1位だ。このリスクはいま、更に高まった。なぜなら対抗馬はバイデン氏で、新型コロナ危機下の選挙だからだ。
ーいまが最も困難な時期だとは分かっているが、この危機から学べることは有るか?
人生で何が大切かを見直す時だ。外出制限で、自分自身や愛する人、家族との時間が増える。結局は、その人たちが一番大切なのだから。そのことに、もっと注目してもらいたい。
そして、犬だ、飼い犬は大切だ。犬を飼っていないなら、飼うべきだ。犬を飼うことには大賛成だ。(規則正しい生活を送れるから:筆者記)
まとめ:
・第2四半期はひどい状態、第3四半期も期待できない
・商業の風景は全く変わる
・日本にとって今回の危機は有利に働く
・人生で何が大切かを見直す時だ
・外出制限で自分や愛する人、家族との時間が増える
・結局は、その人たちが一番大切なのだから
いま、世界の分断、悲嘆のなかで起こっていること
悲嘆に暮れる世界にも一筋の光明が見い出せる。
例えばニューヨークの例。家族を、大切な人を、いまいちど絆を確認する絶好の機会。彼女は娘を連れて街に出て、家族の絆を撮って回っている
宇宙からもメッセージが届いている。自宅待機を乗り越えるコツを国際宇宙ステーションで204日過ごした宇宙飛行士が教えてくれている。
いま地球上で求められる「社会的距離」を保つのに役立つと話す。彼も「誰かとの繋がりを求めることも大切だ」と語り、家族や身近な人との絆を再確認しようと言っている。
待てよ、これって最近、日本が経験したことじゃないか、2011年の東日本大震災だ。
日本だから出来ること
ここからは私の所信を述べたい。
日本は世界的にも安定した政治と経済を有する希な存在だ。その日本にはしょっちゅう自然災害が起き、人々は其の度に試練にさらされる。
しかし、この試練が日本を強くしていることに、日本人自身は気付いているだろうか。日本の中に居ては当たり前すぎて気付かないが、外から俯瞰する日本は、清らかで、強く、しなやかだ。人々は誰言わずとも戒めを守り、暴動など決して起こさない。悲しむ人に寄り添い、力を貸す。それが日常の風景として存在するのが、日本という国だ。
そんな日本だからこそ、世界に規範を示すことが出来る。今回の新型コロナウイルス「罹災」でも、日本だけが死亡者数が少ない。それは何かを暗示しているような気がしてならない。
ブレマー氏も、「日本は法的手段を使わなくても、国民は助言に従う傾向がある」「日本の政治と経済は安定的で体制があるため、今回の危機でも、それは有利に働く」と語っている。
「COVID19 は ガイアの鉄槌か」を私は先日著したが、地球がガイアとしての、ひとつの生命体としての「意志」を持つとしたら、この未曽有の危機への対処のカギは日本に託されている、そう思うのです。
私たち日本人が危機に対して今迄、どのように考え、どのように行動してきたか、それは世界の規範となり得るし、それを世界が学ぶ絶好の機会と私は考える。
東日本大震災まで、私はボランティアなどするタイプではなかった。悲しみに暮れる人たちにを癒すには何をすればよいのか。福島に通ううちに、原発を巡る人間の愚かさを痛感した。震災で私の心が開かれたと言っていい。
この未曽有の危機に、世界が出来ることは沢山ある。私たち日本人が当たり前としていることを、世界に知らせていこう。
いま言えることは此処までだが、いずれ続編を書きたいと思う。皆さんのご意見を拝聴したい。
参考情報
参考1:感染症の歴史(Wikipediaより)
参考2:新型コロナ、「首都封鎖」で知っておくべき10のこと(日経ビジネス)抜粋:3月10日から全土を封鎖したイタリアは、当初商店の営業禁止については25日、外出禁止については4月3日までとしていた。だが商店の営業禁止期限は4月3日まで延長され、後に商店の営業も外出禁止も5月まで続けられる見通しとなった。英国は3月23日から3週間としていた封鎖を今後6カ月に渡り継続する可能性があると指摘。スペインやマレーシアも3月末までとしていた計画を4月半ばまで延長すると発表した。
参考3:コロナ後の世界に警告 「サピエンス全史」のハラリ氏
・新型コロナ危機後は違う世界になる
・「全体主義的監視」か「市民の権限強化か」
・「皮膚の上」から「皮下」に進む監視の衝撃
・プディング生産の緊急規制令
・せっけんで手を洗う
・市民が力を発揮できる道を目指すべき
・「国家主義的な孤立」か「グローバルな結束」か
・今の国際社会は集団まひ状態