Dynabookはこうして作られた
至極の時、来たれり。
昼前の11時半にお店に入って、気が付くと3時を回っていました。浅草の気の置けないお店で、四半世紀ぶりに再会したこの方は、私がDynabookを設計していた時の意匠デザイナーさんです。
「そんな形状じゃ金型が作れない!」と当時は強烈にやり合った仲なので、互いに気心が知れています。長い間会わなかった時間が溶けた瞬間でした。
お互いに尖がった性格なので、互いの主張をぶつけ合う充実感溢れるバトルの時間を思い出します。
そこで生まれた製品は子供のようで、カタチに込められたひとつひとつの造詣には意味があることをこの方から学びました。
意匠デザインはレンダリングというスケッチ画から始まります。デザイナーはその絵を手を使って沢山描いて、頭の中にあるカタチを見えるようにしていきます。
そのレンダリングを基にして、最終的な寸法の入ったデザイン図が設計者に届きます。設計者の目には「こんなのできない」の塊です。そこからが出発点です。
最も重要なトップ面の、目の前を走るエッジ部分は、どういう面と面の構成で、どう「光らせるか」がデザイナーの腕の見せ所です。光らせれば光らせるほど、それは設計者にとっては修行の時間になります。
カタチを具現化して、製品に落とし込んでいくには、出来る出来ないの押し引きに、それがどうして必要なのかという「説明責任」が常に求められます。それが出来るのがデザイナーです。
デザイナーと製品開発者がタッグを組んで作ったDynabookですが、タイヘンだでしたが、充実して楽しかった日々を懐かしく思い出します。
デザインは感性であり感情なので、それをカタチでどう表現するか。この作り上げていく工程というのは、製品発売日が決まっている厳しい開発期限の中では常に綱渡りなのですが、その同じ時を過ごした者同士が四半世紀を経て、その製品を眺めながら振り返るとき、これぞまさに、「至極の時、来たれり」となります。
彼は64歳、私は60歳。こういう時が巡って来たことを嬉しく思います。皆さんの未来に同様の時が来ることでしょう。
「いま」を「過程」として懸命に楽しんで、その先の未来で「結果」を楽しむ。それもその時に仕事を共にした相手と一緒に。これ程の時のプレゼントはありません。
ではでは
三河屋幾朗@mikawaya1960
公共メンターhttps://menta.work/plan/954
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