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11/7公開 アニメ映画「羅小黒戦記」の良さを語る


こんにちは。アニメ好きのあなた、映画好きのあなたにとってもおすすめの作品を紹介させてください。

2020/11/7公開「羅小黒戦記

ロシャオヘイせんき、と読みます。

ロ・シャオヘイという名前の黒猫ちゃんが主人公のバトルアニメです。小さい黒と書いてシャオヘイ。

「鬼滅の刃」の上映前予告やTwitterの広告、あるいは結構有名な声優さんが参加されているのでニュースサイトなどでタイトルを見かけた方も多いと思います。

最近やけに推されてるけどこれは一体何…?そう思っているあなたの背中を押すために私はこの記事を書いています。説明するのでちょっと読んでいってください。


羅小黒戦記が日本にやってくるまで

タイトルからなんとなく察せられると思いますが羅小黒戦記は中国のアニメ映画です。

実は日本での初上映は昨年9月、池袋HUMAX1館のみ、9日間限定の上映から始まり、映画を観たお客さんの口コミによって全国のミニシアターへと上映が広まりました。


ミニシアターの映画をよく見る方は分かると思うんですが、あそこって大手シネコンでやるにはちょっと集客が厳しいかな…というコアなマニア向けの外国映画を原語音声のまま日本語字幕つけて上映することが多いんですね。最近だとインド映画なんかが有名だよね。

ハリウッドみたいな欧米圏の有名俳優が出てる作品だと集客が見込めるので最初から全国のシネコンで上映してもらえますけど、それ以外のちょっとマイナーな国の映画を見るのが好きな人はミニシアターに通いがちになります。

自分は趣味で中国語、広東語を勉強しているので、中国映画や香港映画を原語で聞くためにミニシアターに行く事が多いです。

羅小黒戦記もその様にして日本にやってきたアニメ映画の一つでした。

普通ならばそういう映画は私のような語学学習者・中国映画マニアあるいは在日本中国人などの限られたお客さんだけが見に来てひっそりと終わるものなんだけど、羅小黒戦記は違った。日本のお客さんにもウケたんです。

アニメ業界関係者の方を中心に「これはすごいぞ!」とTwitterで口コミが広まり、当初池袋1館だけの予定だった上映館があれよあれよと増えていきました。

ファンの要望に応えて日本で2館目の上映館となった京都出町座。ちなみにこの頃のtwitterは日本語ちょっと分かる現地制作スタッフさんが頑張ってやっていたらしく若干言葉が怪しい。現在は専門の広報チームに委託してるそうです


本国ではかなり人気の作品なのですが、日本展開を見据えて作ったものでは全くないため制作・配給会社もまさかの日本からの好反応にびっくり…満を持して日本語吹替版の制作が始まり、初めての日本公開から一年と少し過ぎた2020年11月7日、なんと全国の大手シネコンで大規模公開ということになりました。

それが今回紹介しているこの作品なんです。

私はただの一人のファンなんですが本当にびっくりしています。日本語吹替版だけでも嬉しいのにこんなすごい規模で全国上映していただけるとは…。

こういう言い方アレなんですけど、(なんだ、中国映画か。チャイナマネーだなw)という目で見られてしまうこともたまにあるんです。その誤解を解きたくて経緯を説明しました。

決して大人の欲望が絡んだゴリ押しとかではなく、本国も予想外の日本ヒットで日本のファンから要望が多かったためにわざわざ作っていただいたんです。

ここまででまあまあ見ごたえのある作品らしいということは伝わったかな。


アニメ「鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST」監督の入江泰浩氏が激推ししてアニメーター界隈に広めてくださったことが口コミ人気爆発のきっかけの一つ。入江監督ありがとう


羅小黒戦記の何がすごいのか

ざっくり経緯を説明したところで中身の推しポイント行きます。

ネタバレしない程度にストーリーを説明すると、主人公の猫又少年シャオヘイが人間の開発によって故郷の森を追われ、新しい家を探して冒険する物語…みたいな感じかな。お話はすごく分かりやすく、バトル物ではあるけどグロテスクな表現はないのでファミリー向けでも行けます。

ちなみに予習は一切要りません。一応原作はあるけど日本で見てる客の98%くらいは初見のはず。自分も前情報ゼロで行って無茶苦茶楽しめました。


①アクションがすごい

正直言葉で説明するより見てもらった方が早い。

元々日本での公開前から「アクションがすごいアニメだ」という評判は聞いていたのですが、キャラデザがちょっと芋っぽいというか…日本のバトル物ではあまり見ないナチュラルな絵柄なので(これでアクション??)と思ってたんです…。

でもアクションだった…。これに関しては満場一致でみんなすごいっていうと思います。

技術的なことを言うと、キャラが動いてるシーンでカメラも動くので背景がぐるぐる動くんですね。これ、ものすごーーーく作画の手間がかかってると思います。キャラと背景がどちらも動くので「速さ」が強調されて超人的なレベルのバトルになっている…早すぎて三回くらい見るまで何が何だか分からなかった。

一応公式さんでアクションシーン集の動画あげてくださってるので貼っておきますね。(でも自分としては部分切り抜きよりも話の流れの中で見てもらった方が盛り上がるので映画館で見ることをお勧めする)


②背景が美しい

これ、背景作画の一部なんですけど、描き込みすごくないですか?

中国の絵師さんによくあるんだけど光と影の表現が無茶苦茶綺麗。背景美術のレベルがものすごく高いです。

実は映画の前半部分は会話が殆どなく映像と音楽で魅せるような作りになっているんですが、全く飽きないどころかのめり込んでしまう…森、海、空など自然の風景がほんとうに美しく描かれています。NHK BSの予算掛かってる旅番組をアニメにしたみたいなんですよ(個人的見解)

背景が綺麗なのはアニメ映画なら普通じゃんって思われそうだし実際それはそうなんだけど、やっぱり中国の制作ということで絵柄が中国っぽくて、それが我々日本人には新鮮で面白いんですよね。描かれてる風景も中国の農村や雄大な自然など普段あまり見ない題材なのでエキゾチックで素敵。

ちなみに美術監督は大学卒業したばかりの新人さんらしくて(え…画力、やば…)ってなった。


ネット時代を象徴する生い立ち

この作品、本国で人気と書きましたが、実は原作が個人製作WEBアニメなんです。

元々監督のMTJJ氏が一人で描いて動画サイトに投稿していたシリーズが話題になり、次第に仲間が増えてアニメスタジオとして本格的な映画作りをすることになったという、まさにネット時代を象徴するような生い立ちなんです。

大手企業発だから~個人発だから~ということで作品への評価が変わるわけじゃないんですけど、やっぱりそういう背景を知るとオタク心がくすぐられちゃうよね…たった一人で始めた自主制作アニメが映画になってたくさんのプロが参加する大プロジェクトになって…うーんロマン。

美術監督が若い人というのもこれが理由で、ネット上の動画投稿サイトから始まったプロジェクトなのでチームも美大出たばっかりみたいな若い世代のクリエイターさんが大多数なのだそうです。


④中国アニメの新時代

最後にちょっと個人的な思いを語ります。

わたしはゆるい中国オタクとして中国のオタクコンテンツをゆるく眺めてきた人間なんですけど、正直に言ってしまうと今までの中国産コンテンツってそこまで他人に勧めたいものはあんまりなかったんですね。

やっぱり技術的にも日本アニメには及ばないし、あまり言いたくないけど一昔前は中国と言えばパクリだとかそういうのあったじゃないですか。

今までの中国のアニメ美術って、欧州の影響を受けたようなカートゥン調のものか、或いは日本の影響を受けた萌え系かどちらかでした。

(日本では忘れられがちだけど中国は中央アジア、中東を経て欧州と繋がっているので、文化的な繋がりが特に美術方面に顕著な気がします。中国の絵師さんは油絵のように光の表現を面で取り入れるのが得意。反対に日本は線で描くことが得意)

新しいアニメを見ていても、(すごく失礼な言い方なんだけど)「これだったら同じの日本で作った方が綺麗にできるな」って思ってしまう、オリジナリティがない状態であるように私には見えていました。

それが、羅小黒戦記を見て初めて「中国らしさ」の獲得に至ったと確信しました。

キャラの絵柄があんまりシュッとしてないみたいな話をしましたけど、それでいいんです。日本のような美麗作画にしたら日本の二番煎じにしかならない。かといって欧米圏のようなデフォルメが効きすぎたカートゥンでもない。

背景にしても、ディズニーやジブリの影響が強く感じられます、でも、日本アニメでも欧米アニメでもない。どちらの影響も確かに残しつつ、中国のクリエイターにしかできない表現に挑戦していると思います。

模倣から抜け出してオリジナルを生む段階になった。そこに感動しました。

日本のクリエイターがこれをコピーしようとしても難しいと思う。それがオリジナリティ。日本風でも欧米風でもなく、「中国風のアニメ」なんですよね。

若いクリエイターさんが多く参加されていると書きましたが、中国の若い人、日本のオタクコンテンツめちゃめちゃ好きです。ものすごくリスペクトしてくれてるしよく勉強されてます。

羅小黒戦記も、原作WEBアニメ時代から日本アニメへのオマージュやリスペクトがふんだんにちりばめられていました。

特にこの数年、日本アニメにどっぶり浸かって育った世代が制作の中心メンバーに入ってくる時代になっています。アニメだけでなくソシャゲや二次創作の世界でも最近中国クリエイターを目にする機会が増えてると思いますが、決してお金のためだけではなく、物心ついたころから日本の作品に触れて現役世代として育ってきたからなんです。

国境なんて関係なく日本のアニメを愛し、憧れ、背中を追いかけて自分なりの新しい創作を生み出してくださってるんですよね。

わたしはそれをフラットに評価したい。

ちらちらと書いたんですが、残念ながら中国のクリエイターへの偏見って未だに非常に強くて、今回の映画でも「パクリなんじゃないのか?」みたいな心無いコメントを目にすることがありました。

わたしは幸いにも自分が日本人に生まれたことで他者から嫌な思いをさせられた経験がありません。でも、もし運命が少し違えば違う国で生まれていたかもしれないし、そこで国籍を理由に自分が真剣に作った作品に目を通してもらえないことがあったらめちゃめちゃ悔しい。生まれる国は選べませんから。

見たうえでつまらないとか大したことなかったとか言われてしまうのは仕方ないけど、見てもらうところにすら行けない環境は作りたくない。

そういう思いもあって、然るべき努力をして然るべきクオリティのものを出してきた人たちが正当に評価され、こうして大きな発表の場を得られたことがとても嬉しいし、今から目にする方々にも公平な目で評価してもらいたいと思っています。


若いクリエイターたちが真剣に作ったこの映画、とてもおススメです。機会があったら是非見てみてください。よろしくお願いします。





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