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太融寺の落語会。

大阪の梅田近くに『太融寺町』という街があって
太融寺というお寺があるから太融寺町なのですが
その昔、太融寺の落語会に何度か行ったことがあります。

桂枝雀さんがご存命の頃、枝雀さんの落語が面白くて好きで
独演会にも行っていました。
そんなこんなで落語を聴くことが楽しくなって
雑誌ぴあで『太融寺の落語会』を見つけたのだと思います。
若手の噺家さんの落語会なので料金がものすごく安くて
気安く見に行けたのです。

入り口の受付で
500円か1000円かはっきり覚えてませんが、とにかく安い料金を支払うと
ビニール袋を渡されます。
履いてきた履き物を入れるためのビニール袋です。
靴を脱いで袋に入れ階段を上がって2階の座敷に入ると
開けられた襖の脇に座布団が重ねて置いてあって
それを個々に取って好きなところにテキトーに座ります。
そして、座敷奥に高座が設えてあって
前方の襖を開けて噺家さんが入ってくるという感じでした。


太融寺落語会2回目ぐらいでしょうか。
入り口でお金を払っていたら
奥からやってきた男の人が
「いらっしゃい」
と私に声をかけて襖を開けて控室らしい部屋へ入っていきました。
その「いらっしゃい」と言った人は
桂雀々さんでした。

雀々さんはとにかくまくらから可笑しくて
たしか、沖縄かどこかでダイビングをした時の話(だったと思う)を
おもしろおかしく話されて
私はおなかをよじって涙を流して大笑いしました。

先日の訃報を聞いて
あの500円だか1000円だかのやたら安い料金と
入り口で受け取るビニール袋と
畳の間に積み上げられた座布団と
「いらっしゃい」
と声をかけてくれた雀々さんのことが思い出されました。