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プロミッレ丘
ご近所さんにはいろいろな人がいてたのしい。
となりのミッケさんは私らより少し年下でとても愛想の良い、いわゆるしつけがちゃんとされたご家庭でそだったようなひとなつっこい感じだが、(と勝手に定義をつけているけども)、「話をすると」という条件がついている。普段はというと、目も合わさないし挨拶もしない。「近づいてこないでオーラ」バンバンでている。
奥さんもおなじ雰囲気なので、こっちも近づいたらご迷惑かなとおもい、これといった付き合いはない。ただときどき7歳くらいのむすこチャーリーくんが、旦那のルーディーを探しにくる。
ある日チャーリーくんが「今日はボクのバースデーパーティー。ルーディーも来て良いよ。」と言いに来た。
ありがとうと返事したはいいが、しばらく考えて「おやごさんにきいて、いいよっ言われたらもう一度誘いに来てね」という大人対応。
もちろん誘いにはこない。家でダメと言われたかな。
隣なので、うちのこどもとも仲良くできればいいな、なんて思っていたけど、これからもこの距離で続くんだろう。
もうちょっと仲良くできたらなと思う私たちにしてみれば、ちょっとざんねんなお隣さんだ。
お向かいに住んでいたグンさんは一人暮らしで、お花が好きで、80代後半になっても常にお庭は綺麗だった。雪かきもできる範囲でしていたし、わたしら近所のひとたちがなんとなくかわりばんこにお手伝いをしていた。2年前に亡くなってしまったのだけど、とてもやさしい方だった。
ときどき窓から姿をみると、こっそりタバコをすっていたのを見かけた時はなんだかかっこよかった。もうそれもみられないのはさみしい。
グンさんのとなりのマリアンさん(80代)も、グンさんと同様早く旦那さんを亡くし、1人息子のパールさんがいつも面倒を見ている。おしゃべりが好きで、家の前を犬のイメこと散歩に出かけた時に、マリアンさんが外でくつろいでいるもんなら、かならず「らうかー!お茶しにおいでー」。誘われるままにお茶をいただく。
このマリアンさんの家は夏にだけ過ごすサマーハウス。普段秋から春まではストックホルム市内の大豪邸に1人で住んでいる。
私の住んでいるエリアは全部で300世帯くらいあって、海が近いのでマリアンさんみたいにサマーハウスを所有していて、夏だけ住みにくる人が3分の2くらい。私たちやミッケさんやグンさんみたいに、年中住んでる組は3分の1となる。
プロミッレヒル(丘)と近所さんからあだ名をつけられた家族もこれまたご近所さんだ。
そのご家族は、昔からあまりこのあたりのご近所さんたちとの付き合いが少ないみたいだ。
入り口から急な坂を50メートルくらい上る丘の上にその家はある。
ここのおうちはとにかく不思議だ。私たちが越してきた20年ほど前は、ここの家から聞こえてくる大音量のミュージック、毎週末大盛り上がりのパーティーなのだ。年末年始にはどっかーんと花火が連発。(うちの犬イメこはこの花火でビビることは前回書いた)。
日本ではまず個人では買えないでっかい花火が、スウェーデンでは年末になると普通に売っている。
ちなみにスウェーデンは夏には花火をしない。なぜって?
白夜の国。だから夏に花火をやっても見えないのでたのしくない。逆に冬は暗いので、花火シーズンと言える。
ここ最近はストックホルムだけじゃなく、スウェーデン全体的に花火による事故とか音量とかが問題になってているので、市によっては禁止にされる規制も広がっている。
戻るが、そのご家族の一人が、あるとき4輪車を泥酔運転して、うちの前近くで柱にぶつかってヘリで病院に運ばれた。
私らが越してくるまえからもこのような泥酔行動があったらしく、それでプロミッレヒル(丘)に近づくなということになっていたらしい。
プロミッレとは、アルコール濃度のこと。
日本語ではパーミルというのかもしれない。
馬も毎日散歩しているこんな田舎道、飲酒運転者に轢かれて大事な命をおとしたくない。。。うん、近づかない方が身のためだとおもってしまう。
ここの奥さんと、犬の散歩中なんどか話したことがある。短髪と顔のピアスのかっこい同年代だ。こどもがうちの娘より一つ上。同じ低学年の小学校に通っていた。(スウェーデンでは大半で幼稚園から小学校3年生までの一貫教育になっている)。その子は学校では暴れん坊でいじめっ子で、いつも家族が呼び出しされていた。
アルコールのこともあって、近所ともそんなにお付き合いはできない方だったのかもしれないが、ここ数年の間に、
丘の上の家もキレイなお家に建て替え、花火も上がらなくなった。大音量パーティも無くなった。アルコールが原因の迷惑も無くなった。救急ヘリも来ない。旦那さんが変わっていたからかな。ともかく落ち着いた生活にかわったのか、そうだとしたら安心安泰。周り近所もほっと一息。
でも、ちょっと不思議なことがアルコールの歴史以外にある。
私たちが越してきた頃、犬が2匹いた。一年も経たないうちに一匹いなくなった。近所の人の話では、狂犬だったので処分したらしいと聞いた。もう1匹は何年も生き天寿を全うしたらしいが、それからも犬や猫や山羊など飼っては短期間でいなくなる。大型犬のグランダノアの2匹もそれぞれ2、3年くらいいて急に見なくなった。
数年前に白と黒の山羊が来た。ある時、白いのだけが急に姿を消し、黒いのだけがしばらくいたところで、また別の白いのがきた。今は両方いない。夏前まではメーって聞こえてたのに。。。
元々親しいわけではないので、あのわんこどうなったのとか、お仕事どんなことしてるのかなんて知らない。もしかしたら、保護犬を一時期家庭で預かっているのかもしれない。たくさん犬を飼っていたら、異常をもって生まれてくる犬もいるらしい。だからたまたまそういう犬に出会って、獣医さんと相談して。。。という決断だったのかもしれない。いい方向に考えようにもどうしてもブラックな考えが浮かんでしまう。
一度、殺処分した、という事実が頭から離れられない。
もしかしたら他の犬たちも、猫たちも、山羊たちも。。。妄想はとまらなくなる。
現実はまったく異なってるかもしれない。
ご近所といってもまったく赤の他人。
それでも同じエリアに住んでいるという事実だけで、どこか繋がっていると思うし、できることなら良い距離で繋がりたいとも思う。距離感を保つのは、日本人として日本で過ごしていた自分が培ったいいプラス部分であると今まで思ってきたけど、そうは言ってもなかなかむずかしい。
まさにこのむずかしさこそが「ご近所づきあい」ということなのだろうか。。。