【①開発経緯】Blackmagic RAW は何が凄いのか?
この記事の要約
①歴史編、②技術編、③BMPCC4K長期レビュー編、3話構成
(テキストをクリックすると記事へジャンプ)Blackmagic Designはオーストラリア創業の安くて使えるビデオ機器メーカー
業務用編集ソフトDaVinci Resolve買収し一般ユーザー向けにも販売するも、一般ユーザーでも購入できるシネマカメラが無いので開発を始める。
初カメラのハードウェアは良かったが、RAWコーデックのCinemaDNGが一般ユーザーには使いづらく、次世代RAWコーデックの必要性を認識する。
CinemaDNGは連番画像ファイルなのでファイル数が多く、音声データは分離し、メタデータが保存されない。
圧縮RAWコーデックはRED DIGITAL社が特許を持っているので、そこを回避する必要がある。
Blackmagic RAWが開発され、一般ユーザーでも格段にRAWコーデックが使いやすくなり、現行同社製カメラに実装された。
Video Assist 12G HDRを使用すれば、対応していれば社外カメラでもBRAWが使用できる。
Blackmagic Design社とは
2001年にオーストラリア南東の港町のメルボルンにBlackmagic Design(ブラックマジックデザイン)が創業した。
Blackmagic Designの製品の特徴はプロ品質ビデオ機材が比較的安価なことだ。
フラッグシップのBlackmagic Design URSA Mini PRO 4.6K G2はNETFLIXの認定カメラにもなっているうえ、856,800円(2023/03/27現在)と数百万円が相場な大型シネマカメラの中では破格の安さだ。
da Vinci Systems社を買収
DaVinci Resolveは1982年から続く老舗カラーグレーディングシステムで、テレビやハリウッド映画の制作に使用された。
当時はフィルムの編集をする為に部屋1つまるごと使う大掛かりなシステムだった為、完全な企業向けだった。
2009年にBlackmagic Desigin社はda Vinci Systems社を買収し、DaVinci Resolveの開発を引き継ぐことになる。
DaVinci Resolveは無料版と約4万円のStudio版がリリースされ、個人でも使用することができるようになった。
非常に高品質なソフトだが、DaVinciの編集に耐えかねる記録メディアが当時はREDCODE RAWとARRI RAW、フィルムしか無かった。
またそれらは非常に高価だったため、大幅値下げと無償版の提供によって裾野が広がってもユーザーのメリットが小さかった。
DaVinci Resolveからカメラに要求することは
・ハイダイナミックレンジ
・高解像度
・深い色深度
・RAW
そこで、DaVinci Resolveでの編集に耐えゆるカメラが必要となり、Blackmagic Designはカメラの開発をスタートする。
オリジナルのBlackmagic Cinema Camera
2013/09/04 発売のBlackmagic Cinema Cameraに遡る。
諸元
・センサーはマイクロフォーサーズ(17.3 x 13 mm)に近い16.64 × 14.04 mm
・マウントはキャノンEF
・記録方式はCinemaDNG RAWとProRes4:2:2、DNxHD
・Thunderbolt3、SDI、2.5インチSSD直挿し
Blackmagic Design は誰もが使いやすい標準規格を採用することを重視しており、第1代目のオリジナルBlackmagic Cinema Camera にもその設計思想が伺える。
2.5インチSSD直挿しには筆者は驚かされた。
しかし、RAW収録のCinemaDNGに関しては後述するが誰もが使いやすいとは言えず、時間と手間がかけられる場合にのみ仕様され、4:2:2圧縮されたProRes やDNxHDが多様された。
これにより、Blackmagic Designは誰もが扱いやすいRAWフォーマットの必要性を認識する。
ポスプロに最適だったCinemaDNG
2009/09/10 AdobeはCinemaDNGのベータ版を公開した。
CinemaDNGはイメージセンサーから取得した電気信号をカメラ内で処理せずにそのままRAWデータとして記録する。
その為、圧縮による画質の劣化が起こらず、ポストプロダクションの自由度が増すメリットがある。
CinemaDNGの問題点
しかし、いくつか問題点があった。
・連番画像ファイルなのでファイル数が多く、音声データは分離し、メタデータが保存されない。
・カラーサイエンスが再生プレイヤー側(DaVinci Resolveなど)に依存する為、環境によって色味などの見た目が変化する。
・ディベイヤー処理(デモザイク処理)をソフトウェア側で行うため、PCスペックを要求するうえ、ハードウェアアクセラレーションなどの効率化がなされていない。
・手間と時間とPCスペックが必要なので、手軽さが無く使用者が限られる。
RED DIGITAL社が圧縮RAW技術の特許取得
ミラーレスやビデオカメラで撮影している際に、動画性能を謳っているのに何故かコーデックはH265 .mp4でしか撮影できず、外部レコーダーでしかRAW撮影できないことに疑問を持ったことは無いだろうか?その要因としては、シネマカメラで有名なRED DIGITAL社の特許問題にある。
詳細は引用元のブログが非常にわかりやすくまとめているので、ブログにジャンプして欲しい。
SLACK NOTE REDが映像業界の足を引っ張っているという話 〜圧縮RAW〜 2023/01/29
Blackmagic Desiginは次世代RAWコーデックを開発する上で、RED DIGITALの特許を回避する必要に迫られる。
同社はこの問題について、RED DIGITALを名指しすることを明らかに避けているので、本当の事情とは異なるかもしれない。
Blackmagic RAWリリース
2018/09/14に2年間の開発期間を経て満を持してBlackmagic RAW(BRAW)がリリースされた。
当時はURSA Mini Proのみ対応していたが、現在は現行の全てのBlackmagic Design製カメラに対応している。
筆者は2018/06にBlackmagic 4Kを大学生ながら無理して購入していたのだが、当時はCinemaDNGとProResの2つしかなく、CinemaDNGが想像以上に使いづらくて途方に暮れた経験がある。
その後のアップデートでBRAW対応になり、あまりの感激に大学に行く際にも携帯するようになった。
外部レコーダーで社外カメラもBRAW対応
外部レコーダーBlackmagic Video Assist 12G HDRを使用すれば、社外カメラでもBRAW収録が可能である。
注意して頂きたいところは、Blackmagic Video Assist 7” 3G、Blackmagic Video Assist 5” 3GはBRAW非対応である。
対応機種
Canon EOS C300 Mark II
FUJIFILM GFX100
FUJIFILM GFX100S
FUJIFILM XH2s
FUJIFILM X-H2
FUJIFILM X-T5
Leica SL2-S
Nikon Z 6
Nikon Z 7
Nikon Z 6II
Nikon Z 7II
Panasonic AU-EVA1
Panasonic LUMIX GH5S
Panasonic LUMIX BGH1
Panasonic LUMIX BS1H
Panasonic LUMIX S1
Panasonic LUMIX S1H
Panasonic LUMIX S5
SIGMA fp
SIGMA fp L
Z CAM E2
Z CAM E2-M4
Z CAM E2-F6
Z CAM E2-S6
次回、【②技術解説】Blackmagic RAW は何が凄いのか?