『神成りクラブ』 第1話 #創作大賞2024 #漫画原作部門
初期案のページ(ネタバレ含みます)
<> →ナレーション
()→心の声
1話 本文
<この世には”三種の神宝”を手にした者は神に成る事ができるという伝説がある>
■西洋の豪邸の一室、夜
男(72)が箱を開き何かを手に取る。
すると男の手元や周辺が光り出す。
男「おお!やはり伝説は本当だったのか!これで俺は神になれるぞ!ぼっちで金しか持ってなかったけど神に成ったらなんでもで…」
突如体が光となり男は消え去る。
窓の外には猫の影が見える。
光の中には森羅万象が見え一瞬人の姿も見えるがやがて太陽系の模型のようなものが広がる空間に男は転送された。
■ 天体が広がる白い広大な空間
徐々に男の視界が開けてくるとそこには白い空間と模型のような天体が広がっている。
男「これが神の見る景色か。なんて素晴らしい…… まずは何をしようか…」
しばらく周りを見渡すが果てしない空間が広がっている。
男「なんでもできる感覚があるぞ。夢の中に入り込んだようだ。よし、とりあえずこの世で一番うまい飯を出せ!」
男が手を振りかざすと目の前に料理がたくさん浮かび上がる。
男「これはすごいな!どれも美味そうだ!」
手に持ったフォークとナイフで勢いよく輝くステーキやラーメンを食べる男。
しばらくして腹が膨れて仰向けに寝転がっている。
男「ふー!腹一杯だ!でも神はなんでもできるんだったよな」
と言いながら起き上がる。
男「もう一度、空腹になれ!あとついでに割れろ!」
でっぷり太っていた腹がへこみ腹筋が割れる。
男「便利だなー。もうダイエットいらないじゃん。
よーし、じゃあ次は美味しいデザートと宝の山を出せ!」
と再び手を振りかざすとデザートと金や宝石の山が大量に出現する。
男「おお!血糖値も気にせず食えるなんて最高だ!」
宝に囲まれガツガツとケーキやお菓子を手に取ってどんどん食べている。
男「そろそろ食べるのも飽きてきたな…」
寝転がり横を向くと地球が浮かんでいる。
男「とりあえず世界の様子でも見てみるか」
寝ながら手を動かして空中に浮かぶ地球を近づけていき拡大表示させる。すると地球の横にメッセージボックスのようなものを見つけ起き上がる。
男「なんだこれ、シールみたいなのがついてるぞ?」
メッセージボックスをタッチすると文字が展開されそこには「受験合格できますように」や「金持ちになれますように」のような願いがいっぱい届いている。
男「人間がやってる神頼みってやつか。すごい量だな。」
表示される色んな願いを見ている。
絵馬に「かんぢをかけろようになりたし」と子供の字で書かれている。
男「こいつは漢字の前にひらがな書けるようになろうな…」
メッセージをタップすると"成就"というスタンプが出る。
そして次の願いとその人物が表示される。
流れ星に向かって「あ!流れ星だ!えっと、おかねもち おかねもち おかにもち!よし!」と言ってる男を見つける。
男「最後、ちょっと噛んでんじゃねぇか。ドヤ顔してるけど言い間違えたからダメだな」
タップすると映像にバツ印がつき次の願いが出る。
男「まぁとりあえず神だし適当に叶えとくか」
いくつかメッセージをピックアップする。
男「受験合格のやつとかでいいか」
表示されたメッセージにスタンプのようなものが押される。
男「よーし、良い事した。
こいつの未来でも見てみるか。
神に感謝しろよな」
画面が切り替わるとそこには受験合格した後に落ちた奴を指差して笑っている学生の姿があった。
学生「お前落ちたんだって? ザマァ! 俺受かったけどね!頭の出来が違うから!」
それを軽蔑の目で見る男。
男「うわー、こいつ合格させたらダメなタイプじゃん。
こいつはやっぱ合格取消しにしておこう」
メッセージのスタンプが外れバツ印に変わる。
しばらくスワイプしながらスタンプを押す作業をしている男。
男「えーとこいつは丸、こいつも丸、こいつ口臭そうだからバツ、こいつはクモを助けたから丸…… ん~あとどんくらいあるんだ?
一回全部の願いを表示してくれ!」
どんどん増えているメッセージが男の目の前に表示される。
地平線まで続く量を見て青ざめ、後ろに倒れ込む男。
男「あー!もう嫌だ!無理、なにこの生活!
なんか思ってた神と違うじゃん!
内職じゃん、これ!スキマ時間にやる系のやつじゃん!
てか、神になってまでなんで俺は働いてんだよ!」
はっと何かを思いついて起き上がる男。
男「これって、災害とか起こせるよな…
俺の手で人類を滅亡させることもできるのか…
例えば戦争とか起こしたりして…」
目の前に災害ボタンがいくつか出現。
そこには核戦争や疫病など書かれている。
押そうとするが踏みとどまる。
男「いやいや、別に見たくねぇわ。
とりあえずは平和にして…と」
まるでSNSのタイムラインを見ているかのように地球の出来事を眺める男。
男「うーん…
なんか、アリの行列を見てる気分だ…」
しばらく地球を眺めて時間が過ぎる。
男は貧乏ゆすりをしているが飽きて仰向けに寝る。
男「あれー!?
なんか面白くない!
神、面白くない!
誰も俺が神だって気づいてねーし!
もっとみんな崇めろよー!崇め奉りまくれよー!」
何かを思いついて起き上がる男。
男「そうだ。
神なんだからもう一回地球に降り立てるよね?
降りたてまつれるよね??」
目の前にディスプレイが現れキャラクター選択画面みたいなのが出る。
男「へー、動物に……宇宙人とかロボットにも転生できるのか……
まぁ、ここは無難に前世と同じ人間で…と。
神の力はキープしておこう。最強の人間になったら面白いしな。
見た目は普通な感じで寿命と生まれる場所…と。これでよし」
決定ボタンを押すと地球へ吸い込まれていく男。
再び森羅万象が通り過ぎ徐々に目の前が明るくなってくる。
■藍田病院、午前
視界が徐々に見えてくると天井が見える。
男は耳たぶが少し長い赤ちゃんの姿になって横たわっている。
赤ちゃん (そうか。地球に降り立つと言ってもまずは赤ちゃんからやり直すんだな。生後3日と言ったところか…)
母「先生、赤ちゃんが急に昭和スターのような険しい顔に…」
と母が上から覗き込む。
赤ちゃん(これが俺の母親か?
顔が険しかったか?とりあえず笑っとくか…)
赤ちゃん(ニッコリ)
母 (なんかこの子、急に哀愁が出てきたような…)
ニッコリしながら赤ちゃんはふと何かを思いつく。
赤ちゃん(そういえば、生まれた後に7歩歩いた人がいたよな。)
天地を指すブッダを思い出す赤ちゃん。
赤ちゃん(まぁ、人を驚かせたい気持ちはわかるが……よーし、ここは俺もやるか!)
赤ちゃんはベッドから飛び降り地面に着地。
母「あっ!?」
赤ちゃんはスッと立ち上がり歩き始める。
医者「あぁ!立ち上がってるだと!このガキ!」
看護師「先生!口が悪くなってます!」
驚く医者に対し右手で止まれのポーズ。
赤ちゃん(俺は7歩どころではないぞ… 見てろ…)
赤ちゃんは半裸状態でその場でリズムに乗って足踏み。
母・医者(ボ……ボックスステップ!!???)
周りの人間は呆気に取られてる。
赤ちゃん(へへー!驚いてるぜ!あ……この後なに言うか決めてなかった… えっと…)
× × ×
(回想)
天地を指差すブッダ。
ブッダ(天上天下唯我独尊…)
× × ×
赤ちゃん(これだ!)
赤ちゃんはピタッと止まり天を指差す。
赤ちゃん「てんじょう……」
医者「…天井?」
上を見る医者。
看護師「天井?」
上を見る看護師。
赤ちゃん(まずい!第一声って思ったように出ない!あっち向いてホイで勝った人みたいになってる!恥ずかしい!)
それをみた母親が気絶する。
看護師「あ、お母さん!」
医者「今度はお前かババァ!」
看護師「先生!口が悪くなってます!」
慌ただしく医者は母に駆け寄り赤ちゃんは看護師に抱え上げられる。
不満げな表情の赤ちゃん。
赤ちゃん(こうして第一声をしくじった俺は一連の神業により神男(ゴッドマン)という神がかったキラキラネームになった。
■カピバラ幼稚園、広場
神男の後ろから子供が声をかける
子供「ゴッドマン君一緒に泥団子合戦しよー!」
神男「お、おう…」
■カピバラ幼稚園、教室
神男の描いた絵に気が付く幼稚園の先生。
先生「ゴッドマンくん!あなた”バニラ”を”ヴァニラ”って書けるなんて神童だわ!」
神男「ああ、絵本で……」
神男(普段からゴッドマンと呼ばれるのは恥ずかしいので、カミオと名乗ることにした)
■下上神小学校、教室、昼食
神男、こっそり給食のパンに手をかざす。
神男(神の力を使える俺は石をパンにしたり水をぶどう酒にするのも余裕。給食も簡単にカスタマイズできるのだ)
友達「先生!神男がきなこ持ってきてまーす!」
他の子供がパンを食べる中、神男だけきなこ揚げパンになってる。
先生「何? きなこだと? ……て、揚げパンになってるじゃないか!どうやって揚げたんだー!?」
ざわつく教室。
神男(神の力を使うと説明が面倒なのでバレないように使うことにした)
■下上神小学校、廊下の物陰
神男、鼻くそを手に取り蒸しパンに変える。
こっそりと蒸しパンを友達に渡す神男。
神男「ほら、これやるから黙ってろよ……」
友達「いつもすみませんねぇ…へへ…」
神男(見られたら口封じに食べ物を渡して買収。
石をパンにするよりマーラーカオの方が喜ばれる。)
食べる友達。
神男(今日は石がなかったから俺の鼻くそだが…まぁ気づかんだろ)
友達「お!少ししょっぱい気がするぞ!」
■下上神中学校、教室
皆が返却されたテストで騒ぐ中、100点の答案用紙の前で頬杖をつく神男。
神男(当然、神の力を使えばどんな学校にも合格できる。
だが、俺は普通の高校に通うことにした)
■下上神高校前
帰り道に下上神高校を見つめる神男。
神男「天眼通(未来視)!」
ぼんやりと楽しそうな雰囲気の教室の様子が見える。
神男(この高校は期待できそうだ。俺が青春を謳歌するために…)
■下上神高校、教室
終了のチャイムが鳴る。
神男(そしてこの高校に入ってもうすぐ1週間が経とうとしている。)
席で教科書をカバンに入れる神男に小柄で天パの猿田彦麿が近づいてくる。
猿田「うぇいす!神男っち!
今日はもう終わりだよ!乳搾り!」
神男の長い耳たぶを掴む猿田。
チョップをする神男。
猿田「うぎゃー!」
神男「サルピー、痛え!このノリ何回やるんだよ!」
神男(このち○毛ヘッドは猿田彦麿、あだ名はサルピー。
ムードメイカーだけど天然なところがある中3からの友達だ。すぐに人を好きになるけど恋愛下手)
頭を抑える猿田の横から背の高い犬井一が歩いてくる。
犬井「つーかカミオ、お前まだ部活決めてないんだろ?」
神男「ああ、決められなくてな。イヌワン今日は?」
神男(こいつは犬井一、犬に1だからイヌワン。真面目でクールだけど内なる情熱に燃える中3からの友達。家は貧乏だけどすごい努力家だ。)
犬井「今から野球。神男も部活決まったら教えろよ。じゃなす!」
教室を去っていくイヌワン。
神男「サルピーも今から部活?」
猿田「うぇいす!一回家帰ってから行く!じゃなす!」
神男「じゃなす!」
お互いに手を挙げて挨拶をすると教室を走り去っていくサルピー。
神男(俺たち3人の間では語尾に「す」をつけて挨拶するというのが流行っている。こういう仲間のノリは楽しいものだ)
満足げに教室を出る神男。
■下上神高校、校門前
校庭を通り過ぎる神男。
いろんな部活の掛け声が混ざり合って聞こえている。
神男(青春を謳歌するため部活を決めたいが、神の力がある俺はなんでも世界一になってしまうので悩んでいる)
■帰り道の街角
マーラーカオを食べながら歩いている神男。
神男(バイト生活っていうのもアリだな)
神男が歩いていると後ろからヒーローのお面を被った女がカンチョーしてくる。
悶絶して尻を抑えながら振り返る神男。
神男「な、なんだこいつ!ダセーTシャツ!」
お面女はアニメ柄Tシャツを着ている。
お面女「いや、そこ関係ないだろ!」
神男(あれ?こいつ、心が読めない…
普通なら心の声が聞こえるはずだが…
となると…)
神男「何も考えてないバカ?」
お面女「おい!口に出すな!僕も神だよ!」
お面を外すと白い髪をした神田神撫手(20)が笑っている。
神男「お前も神だと」
カナデ「君も前世であの宝を集めたんだろ?僕も同じさ!
他にも神がいるんじゃないかと思って探したら、鼻くそをマーラーカオにして食べてる君を見かけてね」
神男「おい、変なとこ見てんじゃねぇ…」
カナデ「デュフフ」
その笑い方に少し考える神男。
神男「お前、前世オタクの男だろ」
カナデ「え!なんで!心読めるのかよ!」
神男「いや、なんとなく。勘」
カナデ「あーそうだよ男だよ!どうせ生まれ変わるなら萌え美少女がいいだろ!」
体を触りながら喋るカナデ。
背後にオタクおじさんの姿がうっすらと見える。
神男(なんか気持ち悪いやつだな…)
神男「なんでまた人間になったんだ?」
カナデ「はぁ… お前なら理解できるだろ?
そりゃ最初の頃は楽しかったさ…」
遠くを見つめるカナデ。
カナデ「好きなもの食べたり、無機質だけど可愛い女を出したり、たまに地球に災害を起こしてみたけどそれにも飽きてくる。
やがて行動範囲は布団の周辺だけになり…
枕の横に鼻くそ置き場を作ったり、全裸でアニソン歌ったり、けつの匂いを嗅いでみたり、自分でも訳わからんことするだろ…」
遠くを歩く神男に気づくカナデ。
カナデ「って話聞いてねーな!」
追いかけ一緒に歩くカナデ。
カナデ「おい、待てよ!」
神男「お前のニートみたいな話なんて聞きたくねー」
カナデ「そして僕は気づいたんだ…」
神男「話を続けるな」
カナデ「神の力を持って人間になる方が面白いのではと。
だからこうして再び人間として生まれてるんだよね!」
神男「…それで今お前は何をやってるんだ。」
カナデ「ニートだな」
神男「ニートじゃねーか」
カナデ「まぁ、神成り同士で仲良くしようぜ!」
神男「カミナリ?」
カナデ「ああ、神に成った人間を僕は神成りと呼ぶ!
かっこいいだろ?」
神男「あ、そう」
カナデ「あ、僕は神田神撫手だ。
生まれた時に帝王切開した母親の傷を治したら神の名前がついてしまった!
あだ名はゴッドハンド!かっこいいだろ!」
手を広げて見せるカナデ。
神男「ふーん…」
カナデ「なんだよ、お前も名乗れよ!
僕もお前の心は読めねーんだよ!」
神男「…俺は神保……カミオだ。
神の男と書いてカミオ」
カナデ「デュフ!
お前も神の名前がついてんのかよ!
生まれた時に僕みたいに何かやったのか?」
裸ダンスと上を見つめる医者のシーンが一瞬頭をよぎる。
神男「生まれて立ち上がったりとか…かな」
カナデ「へぇ… まぁ、赤ん坊が立ち上がるだけで神業だよな。
しかし神男って… ゴッドマンとかあだ名ついてたらダサいよな!
デュフ!デュフ!」
神男(それ本名だ。なんだろう、すごくムカつく)
神男は立ち止まりカナデを睨む。
神男「なぁ!お前は神の力で優越感に浸りたいんだろ?
だったら俺とつるまない方がいいじゃねぇか。
お互い関わらずに生きていこうぜ」
カナデ「これだから素人の神は困るぜ。」
神男「は?」
カナデ「先輩がいいことを教えてあげよう。
確かに神の力を使えばこの世の頂点に立てる。
好きなものになれるし好きなことができる。
だがな、誰も理解者ができずに結局お前、ニートになるぞ!」
神男「ならねぇよ」
孤独な権力者だった前世が少し頭をよぎる神男。
カナデ「なんだよー。
じゃあ、お前は何のために人間になったんだよ!」
神男「別に、俺もお前と同じで人間の方が面白いと思ったからな」
カナデ「でもよ、なんかやりたいこととかないのか?」
神男「今は青春を謳歌したいんだよ。
もういいだろ。
俺には俺の人生があるんだからお互いに邪魔しないようにいこうぜ。
じゃあな!」
全力で走り去る神男。
カナデ「あ、おい!カミオ! 」
カナデが追いかけるが角を曲がるとすでに神男はいない。
■家の前の道
家のドアを開けて振り返る神男。
神男(カナデか… お互い心も読めないしもう会う事はないだろうな…)
家へ入る神男。
■下上神(カカミカミ)高校
<次の日>
教室の前に立つ先生とカナデ。
先生「…と言うことで今日から転校してきた神田神撫手さんだ。
みんなよろしくやってくれ」
教室一同(うわー。可愛い!
なんか神々しいってかんじ?)
神男(なんであいつが…)
顔を押さえている神男の前の席のサルピーが振り返る。
サルピー「なぁ、カミオっちー!めっちゃ可愛いよなー!」
カミオ「あ?お前、猫田さんいるだろ?」
サルピー「なっす!ばか!どうしてそれを!いや、違くて!」
遠くに座る猫田萌恵をチラリと見ながら顔を赤らめ焦るサルピー。
カナデ「あー、神男く〜ん!」
神男に向かって叫ぶカナデの声でクラスが静まり返る。
神男(クソ、俺の名前を呼ぶな)
男子数名が神男の周りに集まる。
男子達「神男、お前知り合いかよ!
どんな関係だよー!」
カナデ「私たちの関係は秘密だよ〜」
男子達は敵意を出す。
男子達「何! カミオー!貴様このやろー!抜け駆けか!
彼女作らない同盟はどうしたー!」
神男「なんだその同盟!あいつは…最近知り合っただけだ!
お前も余計なこと言うなよ!」
少し不機嫌になる猫田萌恵とその周りでヒソヒソ話す女子。
先生「神田さんはこの町に来るのは初めてで、神保が知り合いっていうから隣の席を空けておいたぞ」
神男「余計なことを…」
俯く神男の隣に座るカナデと恨めしい目で見る他の男子達。
カナデ「よろー!」
神男「お前、後で話があるからな!」
■下上神高校、校舎裏、午後
神男とカナデは校舎裏で立ち話をしている。
不機嫌な神男と対照に楽しそうなカナデ。
神男「なんで俺の高校がわかったんだよ。
それにお前年齢的にアウトだろ!」
カナデ「いろんな人間の頭の中のぞいて特定した!神の力で年齢詐称も入学も余裕だぜ!」
神男「ぐっ…… 俺の高校生活に関わってくるなよな!」
カナデ「関わるね!
やっと見つけた仲間やし!」
神男「何が目的だニート」
カナデ「ニートじゃねぇ!女子高生だバカ!」
神男「とにかく要件をさっさと言え」
カナデ「そんなの友達になるために決まってんじゃん!君の気持ちが理解できるのは僕だけなんだぜ?」
神男「あのな、この際に言っておくがお前と話してたら俺たちの神の力とかバレるかもしれねーだろ」
カナデ「別にいいだろ~。所詮、人間にバレたところで僕たち最強じゃん」
神男「あのな、だからお前はニートなんだよ。」
カナデ「は? ニート関係ねーだろ!」
神男「俺はな、普通に出会った人たちと普通に仲良くやっていきたいんだよ」
カナデ「普通ってなんだよ?」
神男「前の人生では俺の金目当ての人間ばかり寄ってきた。
それに今では人間の汚い心も見えるようになったしな。
だからせめて学生の間は純粋な気持ちの奴らに囲まれて青春していきたいだけだ」
カナデ「ふーん。
じゃあ僕もその青春に入れろよ」
神男「お前のどこが純粋だ?
心濁ってるだろ!濁りニート!」
カナデ「誰が濁りニートじゃ!僕は胸を張れるオフィシャルニートだ!」
神男「ニートにオフィシャルとかねぇよ!」
自信満々なカナデと怪訝な顔の神男。
神男はその場から歩き出す。
神男「…ったく、じゃあな!
分かったらあんま学校で話しかけてくるなよー」
去っていく神男。
カナデ「あーあ、神男ちゃんはしょうがないなぁ」
カナデは神男の後ろ姿を見ている。
■神男の家の前
不機嫌そうに自分の家に早足で向かう神男。
神男(あいつのせいで部活どころじゃないぞ… 今後の対応を考えねば…)
神男が玄関のドアを開けて中に入ろうとすると後ろからカナデの大きな声が。
カナデ「お邪魔しまーす!」
びっくりして神男が振り返るとカナデがいる。
神男「お前、なんでここにいるんだ!どっかいけ!」
神男は急いで家に入ってドアを閉めようとするがカナデがドアが閉まらないように足で押さえる。
カナデ「僕の話も聞いてくれよ!」
神男「うるさい!ストーカーめ!ゴッドチョップ!ゴッドチョップ!」
カナデの頭にチョップを喰らわす神男。
カナデ「あた!あた!何すんだコラ!ゴッドハンド!ゴッドハンド!」
神男の顔面に掌底を喰らわすカナデ。
玄関先でゴッドチョップとゴッドハンドの攻防を続ける2人の前に神男の母、神保凛子(42)が家の奥から登場する。
母「あら、お友達…
え!もしかして彼女?キスしてるの?」
神男「アホか!違うわ!質問おかしいだろ!勝手についてきたバカな転校生だ!」
カナデ「デュヒャヒャヒャ!」
神男の母に指を差して笑い出すカナデ。
神男「ごめん母さん、こいつちょっと頭おかしいんだ。
今から追い払う」
神男は外に出てカナデに近づき話す。
神男「(小声で)おい、お前なんで笑ってんだよ!
初対面に対して失礼だろ!」
カナデ「いや、だってお前…
何かわかるかなと思って母親の心の中を読んだらさ
…お前、本名ゴッドマンって言うの!
デュヒャヒャ!ウケる!
あだ名じゃなくて…本名ゴッドマン!」
照れて徐々に顔が赤くなる神男。
神男「くっ…おまっ…」
カナデ「え?なに?家族からなんて呼ばれてるの、ゴッドマン?
それともゴッちゃんとか?ご飯食べるよー、ごっちゃん?
食べる前なのにごっちゃんですっていうの?
それともマンの方?マンて呼ばれてるの? 」
恥ずかしがって下を向く神男を下からニヤニヤして見上げるカナデ。
すると母が出てくる。
母「大丈夫ー?ゴッド!」
カナデ「デュヒャー!
ゴッドなんだ!オーマイゴッドマザー!
あー!笑い死ぬ!やめて!もうやめて!」
笑い転げるカナデのほっぺを鷲掴みする神男。
神男「いいから上がれコラ!ここじゃ近所に見られる!」
カナデ「は…はひっ…」
■神保家、神男の部屋
シンプルなベッドと机だけの神男の部屋にカナデは正座している。
座っているカナデの頭を軽くチョップする神男。
神男「このこと他で言ったらテメーのニート生活もバラすからな!
わかったかコラ!バカナデ!」
カナデ「わ… わかってるって、僕も急にすまんと思ってるよー!」
手を放す神男。
神男「わかったら帰って、今後クラスでも俺に話しかけるな」
カナデ「えー!なんだよー!神男は僕のこと気にならないのかよー!」
神男「本当の目的はなんだ!俺は普通の高校生として生活したいんだよ」
カナデ「じゃあ一つ話を聞いてくれたら帰るよ」
神男「なんだよ?」
カナデ「君はこの世界に神成りは僕と君だけだと思う?」
神男「……まだいるのか?」
カナデ「うん、実は多分もう一人の神成りを見つけたんだ」
神男「それってどんな…」
カナデ「やっぱり神男も気になってるんじゃないかー!」
神男「そりゃ気になるだろ。いいから早く教えろよ」
カナデの正面に座る神男。
カナデ「急に態度変えるんだからー!
とりあえずじゃあ僕の話を簡単に説明する…」
(回想)
× × ×
■カナデの部屋
大量のゲームや漫画が置いてある豪華な部屋で15歳ごろのカナデは大型テレビである女性の映像を流している。
カナデ「学校にも行かず孤独にゲーム世界で戦っていた僕はある海外の女性アーティストに励まされてたんだ…」
カナデはSNSで女性の投稿を見る。
カナデ「心が読めちゃうから本当はダメだけど、1回だけ彼女がいるところについ行ってみた」
カナデは部屋から突如消える。
■とある国の中華系料理店の前
料理店の前には高級車が止まっており多くのスーツを着た人が立っている。
そこには数十人のファンが彼女を一目見ようと騒いでいる。
そのかげにカナデが出現する。
カナデ「本当は一目見たら帰ろうと思ってたけど、彼女がどんなことを考えてるかつい知りたくなってね…」
店から豪華なドレスを着て登場する美女、龍神美(シェンメイ) が屈強なボディガードに先導され車へと向かう。
騒ぐファンを避けながら群衆の最前列に出るカナデ。
じっと神美を見つめるカナデだが驚きの表情を浮かべる。
カナデ「だけど彼女を見て驚いたよ。
彼女の心が全く読めないんだ。
そんなことは今まで初めてだったから本当にすごく驚いた。
だけど驚いたのは僕だけじゃなかったようだ」
神美は皆に笑顔を向けていたが、カナデを見た瞬間に驚きの表情を浮かべる。
急いで車に乗り込む神美だが焦って一度車の上で頭をぶつける。
頭を抑えながら車に入る神美。
頭をぶつけたことで騒いでいる群衆。
その間に逃げるカナデ。
× × ×
■神男の部屋
カナデ「そこで僕は自分以外に同じ力を持ってる人がいるんじゃないかと思ってニートをしながら他の神成りを探してたってわけ!」
神男「なるほど… 神成り同士だと心が読めないってのは当たってるかもしれないな…」
カナデ「それでようやく君を見つけたのさ!」
すっと立ち上がって神男の方にグッと顔を近づけるカナデ。
カナデ「で、ここからが本題ね!神男くん。」
神男「なんだよ…」
カナデ「僕と一緒に宗教をつくらないか?」
神男「……は?」
笑みを浮かべるカナデ。
2話へ続く。