IMAJIN 3話「魔女 VS 宇宙人」
◯善照寺の隣のボロボロの家・リビング・夜
ホットプレートの上に焼肉が並ぶ。
肉を囲む善照、ジョージ、レッド、ユータ。
ジョージ「いやぁ!お詫びに肉、全部買い取ってきちゃった! 結果オーライ!」
善照「おし!ガンガン肉食うべ!肉!」
ユータ「坊主が言うことかそれ…」
ジョージ「で、結局あの宇宙人の名前決まったの?」
家の外で宇宙人と並んで話しているシンと宇宙人を指差すジョージ。
レッド「あぁ、結局だな…」
× × ×
回想
◯朝笹城・夜
宇宙人「私に名前をつけてくれないか?」
シン「じゃあ、あんたの名前は… うーん…」
テロップ「10分後」
地面に色々と候補を書いているシン。
レッド「なぁ、早くして!宇宙人、松ぼっくり食べ始めてるし!」
宇宙人「これ美味いー」
シン「もう分かったよ!あんたはアンだ!」
レッド「おい、今少し適当な気がしたぞ」
宇宙人「私はアンか! いい名前だな」
レッド「いいのかよ」
笑顔になるアン。
× × ×
レッド「って具合でアンって名前になった」
善照「アンちゃんか… シンが名付け親なんだな 」
ユータ「とりあえず宇宙人に関してはわからないことだらけっす。
宇宙人と会話できるのはシンだけですし、二人とも俺たちと行動を共にするのが一番っすよ」
レッド「ああ、と言うことでお父さん。
シン君をウチで少し預からせてくれませんかね?」
善照「あぁ、僕は別にシンの父親でもなんでもないただの保護者だ。
シンが決めたならそれでもいいですよ」
レッド「あ… そうなの?ん?」
レッドはスマホの通知に気づく。
◯桜照寺・クレーター前
シンは松ぼっくりを食べているアンと会話している。
シン「…じゃぁ、アンは地球に来てから俺と話せるようになったってことか?」
アン「うん。
なんとなく人の話してる言葉を聞いてたら分かるようになった。
あと本を読んで知識もついたしね。」
シン「すごい学習能力だな… それに身体能力も…」
アン「しかし、この惑星はすごいね。
桃から子供が生まれるなんて私と似てるじゃないか」
シン「いや、それは桃太郎だけだ…」
アン「え!? シンは違うのか!?」
レッド「おーい!シン!」
レッド、ユータ、ジョージ、善照が玄関から出てくる。
レッド「お前ら、俺たちと一緒に来ないか?」
シン「一緒にって… あなたの会社に?」
レッド「まぁ、会社ってのは表の顔。
俺たちは石の力を探っている秘密組織だからな」
アン「おー!秘密の組織!かっこいい!」
レッド「そしてさっき、こんなメッセージが届いた」
レッドはスマホをシンの方へと見せる。
そこにはチャーミーバード社外取締役 御茶家美子の文字がある。
シン「お…御茶屋美子ってあの元アイドルの実業家のミーコですか!?」
レッド「ミーコは明日ヴァーミリオンと緊急でミーティングをしたいそうだ。
君はこれをどう考える?」
シン「えっと…」
シンは少し考える。
シン「ミーコがアイドルとして頭角を表したのは半年前でレッドさんが石の能力を手に入れたのと同じ時期。
そこから事業に関わってあっという間に数兆円規模の会社に成長したことを考えると明らかに石の力を持ってます。
そして明日緊急ということはすでに今日あった出来事を知っていてその情報をいち早く知りたい、もしくは潰したいと思ってる…とかですか?」
レッド「…そうだ」
レッドM「あ、そういうことだったのか。俺、思いつかなかった…」
ユータ「 だとしたら警戒しておいた方がいいっすね。
脅しなのか金の力なのか、なんらかの方法で俺たちから情報を手に入れるつもりでしょう」
ジョージ「でも逆にこっちも相手の情報を手に入れるチャンスじゃないすか? 相手の能力とか」
レッド「よし、今から本社へ向かう!
明日は何が起こるかわからんが望むところだ!
シンもついて来い」
シン「でも、俺は別に何もできないし…」
シンはジョージやユータを見た後に不安そうに善照の方をみる。
それを察して善照はにっこりと笑う。
善照「誰かに求められたんなら行ってくればいいよ。
それに、君は自分が思ってるよりすごい力を持ってると思うよ」
シン「すごい力…?」
アン「何? どこ行くの?
私も行きたい!」
シンはアンのワクワクしている表情を見て何かを考える。
シン「… 分かった。俺たちも行く!」
ジョージ「おう! 来い来い! 」
ユータ「ていうか、もしかして移動って…」
レッド「ユータくん!お願いします!」
ユータ「怪我人に力を使わせんでくださいよ…」
ジョージ「俺はヘリで移動するからいいわ」
ワイワイする彼らを見て少しずつ笑顔を取り戻すシン。
○大都会に立つ巨大ビル・チャーミーバード社の最上階・夜
書類を素早く見ている御茶屋美子(21)。
正面の扉からノック音がした後に真壁が入ってくる。
真壁「ヴァーミリオンとのミーティングは明日の朝10時と連絡があったよ」
ミーコ「そう、連絡ありがとう。
ちょうど今、彼らの身辺調査に関する資料を見てたとこ」
真壁「何か発見はあった?」
ミーコ「そうね… 今日目撃情報があった4人…
金城選手は戦闘向きだろうし、赤井さんは金で金儲けしてるけどその金はどこから採掘してるのか不明。
わからないのはこの新沼ユータと高校生の黒川シンくん、そして謎の女。」
真壁「では彼らも今まで通りに?」
ミーコ「ええ、もちろん。明日、彼らの会社ごと私のものにするね」
○ホテルヴァーミリオンの最上階スイートルーム・朝
高級ベッドで眼を覚ますシン。
シン「んん… あれ?どこだっけ?」
シンは辺りを見回した後に何かを思い出す。
シン「そっか、昨日はあの後…」
× × ×
回想
○大都会・ホテルヴァーミリオン・スイートルーム
レッド「ようこそ!我がホテルへ!」
シンとアン「おー!」
レッドはアンとシンに鍵を渡す。
レッド「とりあえず今日はここまで移動するのに疲れただろう」
シンは畳でビビりながら移動したことを思い出し嫌な顔をしていた。
レッド「スイートルームを準備したから好きに使ってくれ。
ゆっくり休んで明日朝には出発するぞ!
じゃあなー」
レッドはそのまま別の部屋へ入っていく。
シン「え! ちょっと!」
× × ×
○同・シンの部屋
シンは起き上がって服を着替えている。
シン「そうだ… これから御茶屋美子と…」
シンは部屋を出て隣の部屋へと向かう。
○同・アンの部屋の前
シン「アンは…というか宇宙人は寝るのか?」
シンは隣の部屋の扉が少し開いている事に気づき中をのぞく。
シン「お… おい、何だこれは…」
○同・アンの部屋の中
部屋の中は壊れたベッドの上で眠るアン、紐がつけられ喧嘩するトンビとカラス、引っこ抜かれた松の木、風呂場から流れる水は割れた窓から外に流れ出ていた。
シン「おい、アン! なんなんだこれは!」
寝ていたアンは目を擦りながら起き上がった。
アン「お… シンか… どうしたの?」
シン「いや、どうしたはこっちのセリフだ…
一体この部屋はどうなってるんだ?」
アン「え? 部屋ー?」
アンは部屋の中を見回す。
アン「うーん、これはねー」
アンは上を向きながら思い出す。
アン「この白いふかふかしたやつでジャンプしてたらふかふかしなくなって…」
壊れたベッドを指差すアン。
アン「外に出かけたら松ぼっくりの木があったから持ってきて…」
松の木を指差すアン。
アン「ついでに近くに鳥が寝てたから捕まえて…」
バタバタ騒ぐトンビとカラスを指差すアン。
アン「あとこれ、蹴飛ばしたら水がいっぱい出てきた」
水が止まらない大破した蛇口を指差すアン。
シン「これ、レッドさん見たら怒るだろ…」
レッド「俺がなんだって?」
レッドがシンの後ろから近づいてきて部屋に気づく。
レッド「んなっ… なんじゃこれ…」
シン「レッドさん!?
あの、すみません!
俺が寝ている間に…」
レッド「い… いや、いいんだ…
これは直すようにスタッフに言っておくから…
それより朝飯食ったら準備してすぐ出発だ…
いや、ほんと、いいんだ…」
レッドはフラフラとどこかへ去っていく。
○黒塗りのベンツの中
ミーコを乗せたベンツは道路を駆け抜けていく。
ミーコ「だからドタキャンしたのはごめんって言ってるでしょ!
許してくれるのが器の大きい男ってもんじゃないの?」
重盛十蔵(58)は電話越しでミーコに話す。
重盛「もちろん許すけどさー。
おじさんも頑張って情報持ってきたんだよ?
ミーコちゃん喜ぶと思うんだけどなぁ」
ミーコ「はいはい、またその件は話すから、じゃーね」
重盛「ちょっとミー…」
電話を一方的に切るミーコ。
ミーコ「…ったく、重盛のオヤジ、私と話したくて電話かけてるわ!
社長秘書のくせに我が強すぎでしょ!」
運転する真壁に対して話しかけるミーコ。
真壁「私からも言っておきます。
…そろそろ着きますよ」
日本庭園のある豪華な屋敷の前にベンツが止まる。
ちょうど車の前方でレッド、シン、アン、ジョージ、ユータがスーツ姿で歩いてくるが、ミーコに気づき立ち止まる。
レッド「お、あれが御茶屋美子か」
ベンツからミーコが降りレッドたちに気がつく。
シン「ほ… 本物だ…」
ミーコ「あら、早かったんですね。
あ!金城選手だ!好きなんです!握手してください!」
可愛らしく手を出してくるミーコ。
ジョージ「え? 俺!? 嬉しいな!」
照れながら手を差し出すジョージ。
ミーコの不敵な笑みに気づいたシン。
シン「ジョージさん!待って!」
ジョージ「え?」
ミーコはジョージの手を握る。
ミーコ「ふふふ、まずは一人ね…」