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社会人になって無くした“トキメキ”

私は高校最後の夏、早めに受験を終えて1人読書に没頭していた。

寝る時間も惜しいほどにページをめくり、授業中も休み時間もずっと本を開いていた。

あまりにも没頭していたので、友人の記憶にも残っているらしく、久しぶりに再会して思い出話をしているときに「最後のあたり本読んでるか寝てるかだったもんね」などと言われる。

それほどに私は本を読んでいた。
本当によく読んでいた。

ページをめくる手が止められず、次は何と書いてあるんだろう、この展開はどうなるのかと胸のトキメキが止まらなかった。

あんなにも読書に熱中したのは人生で初めてだった。

昔から本が好きで、よく学校の図書館に通っていた。女の子らしく魔女っ子者の小説や漫画の自伝、自閉症児の話…

中でも一番のお気に入りは赤毛のアンの漫画だった。繊細なタッチの絵とアンのチャーミングなキャラクターが私の想像力をもかきたててくれた。

自分も、ふわっとした袖のドレスに身を包み、自然あふれるその地で一緒におしゃべりをしてみたいと思った。

まさにトキメキだった。

でも社会人になるとともにそのトキメキは、どこへともなくいなくなってしまった。

日々職場と家の行き来で精一杯な私は興味をそそられる本に出会うべく書店へ出かけることも、手元にある本に手を伸ばしてページをめくることさえもできなかった。

社会人とはそんなものなのだろうか。

好きなものを好きなだけする時間を持とうとすることがこんなにも難しいものだとは思いもしなかった。

最近は少しずつ仕事に余裕もでてきたので、本屋に行って本のウィンドーショッピングができるようになった。

お気に入りの本を片手に自分の“トキメキ”の時間を持てるようになるには、あとどのくらいの月日がかかるのだろう…

それでも高校時代のような思いをもう一度経験してみたいと思ってやまない。

トキメキ回収は日々を彩る。

まず時間を作ろうとしなければ…

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