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元カノと5時間飛行機に乗った話



付き合ってた頃に俺の端末で航空券を予約する
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別れる
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俺は一人旅することを決意
元カノがどうするのかは知らない
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出発日3日前に連絡があり、元カノが行くことが判明
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ガチか
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前日にオンラインチェックインをする
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元カノに飛行機の予約番号を伝えて、あっちはあっちでチェックインしてもらう
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普通に席が隣になってしまう



このような流れで、この上なく感慨深い5時間のフライトが始まるわけであった。
そもそも最寄り駅が同じで、お互い始発に乗るほかなかったので、成田空港に向う電車の時点でばったりと出会ってしまう可能性はあったわけであるが、結局、機内で俺が座った後に彼女(She)が来る形で久しぶりの再会を果たした。

まずは相手がどう出るか。
これから始まる5時間の旅の行く末は、この始まり方に大きく左右されてくる。
ここで相手が気まずい感じにしていれば俺も気まずい感じを出し、楽しく話しかけてくれば楽しく応じればいいわけで、話し合いの先にどのような結果を目指すかなど俺の考えるべきことではなかった。もはや流れに身を任せることが俺のできる精一杯であり、別れたことで関係性とか相手にかける言葉とかを考えることの義務は晴れたのである。

第一声は「やっほー」と意外と明るいものであった。そこからはよく覚えていないが、まだ誰も発見していない数学の定理を証明してしまう程の勢いで脳細胞という脳細胞を震わせて、口先から出た言葉をすぐに反省し次の発言に活かすというPDCAサイクルが俺の脳内で物凄いスピードで起こっていたことは疑いようがない。実際に新たな定理を証明することは出来なかったが、それは現在に至るまでの数学者の発見がいかに偉大だったかを示している。

彼女が空いている座席を使って横たわり始め、俺の方に膝枕を求めてくるような仕草を見せた時は、俺の下腹部もいささかの起伏を示したが、もともと割合の少ない理性がまだ機能していたようで、俺はとっさに足を組むことで回避した。その間は小説を手に持っていた訳だが、5分ほどかけて一文も理解できず、もしくは理解してもそれをエッチな方向に捉えてしまい、自分が官能小説でも買ったのかと思い込み、なんだか大人になったなあと感心してしまう始末であった。

この出来事は5時間のうち最後のわずか1時間に過ぎず、そこに至るまでの時間は何をしていたのかと言うと、最初の1時間は今旅で何をするかを共有し、次の1時間はお互いの近況報告やその他雑談をし、残りの2時間はカジノでの実践を見据えてポーカーをひたすらに教え込んだ。

まず、ブタなんて名前の役はなく、少なくともハイカードと呼ぶこと、フルハウスは滅多に出ないこと、強制参加費があるからAAが来るまでフォールドを選択し続ける戦法が通じないこと、ハゲは大体強いことなどといった基本的なところを教えた。もっとも、俺はカジノに行ける年齢に達していないので、最後の情報に関しては世界のヨコサワの動画から学んだことである。もっと言えば、ヨコサワから学んだことである。

次に、オフラインのポーカーアプリを用いて、今まで教えたことを実践させた。アプリだからハゲかどうか分からないねなどと彼女は抜かすわけだが、オフラインでbotと戦っている時点で髪の概念は存在せず、たとえその概念が存在するとしてもbotはかなりの確率でハゲているだろうという意見を抑え、俺は2025年で一番上手くいった愛想笑いを披露してやった。

この5時間、俺の精神世界においては、実に人類の歴史と同等のレベルで様々なことが起こっていた訳だが、それとは対照に、外的世界に関しては大して何も起こっていなかった。

そういうわけで5時間が経過し、俺が先に座席から離れる形でお別れした。

こう書いてはいるが、終始肩の力が抜けることはなかった。復縁などは絶対に有り得ないが、ずっと妙な雰囲気が漂っていて変な感じであった。



帰りの飛行機編があることが確定したので、続きはそこで︎^_^

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